45.ドラゴン③
フーヤは走る。
「えっ、えっ!?」
先程の少年がそんな声を上げつつも、ドラゴンを見ながら少しずつ距離を取る。
フーヤはドラゴンの背に回り込むと、立ち止まる。
深呼吸をし、瞬間的に魔力を高めると地面に注ぎ込む。
地面から蔦が飛び出す。
そして、ドラゴンの足に、巨体に、尻尾に絡みついていく。
ドラゴンは暴れ、引き千切ろうとするが、絡みつく蔦の方が多い。
見た目の細さに反してかなり丈夫な蔦は、ドラゴンの動きを封じていく。
引き千切られた蔦も瞬く間に何事もなかったかのように修復され、ドラゴンに再び絡みついていこうとする。
「レクスル!」
「嗚呼!」
フーヤの声に返事しつつも、レクスルは走り出す。
狙うは首。
ドラゴンはその巨体故に、致命傷を負っていても暫く暴れ回る。
その被害は地形が変わってしまうほど。
それを止めるためには完全に息の根を止めるしかない。
レクスルが地面を蹴る。
「来い!クラレント!」
レクスルの手に現れた聖剣は炎をまとい、ドラゴンの首めがけて振り下ろされる。
断末魔の叫びが轟く。
ドシンッと勢いよくドラゴンが崩れるように倒れる。
レクスルがゆっくりとフーヤを見る。
「レクスル、終わったな」
「嗚呼、フーヤが居てくれて助かった」
レクスルが尻餅をつくように座り込む。
神経を相当張り詰めていたようで、疲労を滲ませた表情でフーヤを見つめる。
「僕が居なくてもレクスルだけでもどうにかなったんじゃないか?」
「そんなことは無い。それより、フーヤ──」
「結局、全然活躍出来なかったんだけど!!!せっかく、転生特典でチート貰ったのに!!!」
フーヤの後ろから大声が響き、フーヤは思わず耳を塞ぐ。
「最初に一撃与えただけじゃん!チート持ってても活躍出来てないなら意味ないじゃん!それに襲われている女の子とかも居ないし!」
頭をかかえ、天に向かって叫ぶ少年。
「フーヤ、今転生と聞こえた気がしたが」
レクスルのつぶやかれた言葉にフーヤは額に手を当てる。
「・・・聞き間違いであって欲しかった。とりあえず、次会ったらヲタ女神を一発殴る」
フーヤは腹立たしげに地面を蹴ると、少年の方へスタスタと歩み寄る。
「フーヤ、流石にそれはどうかと思うぞ」
レクスルの言葉が聞こえているのかいないのか、フーヤは少年の前で立ち止まると息をゆっくり吐き出す。
「そこの馬鹿そうな転生者。話がある」
「馬鹿そうとは何だ!馬鹿そうとは!」
少年はそう言いながらフーヤを睨む。
「そもそも!何で初対面の人間に馬鹿にされなくちゃ・・・あれっ、今、転生者って言ったか?」
少年はこれまで言い募っていた勢いが嘘のように止まる。
「そうだ。僕の名前はフーヤ=ロイボード前世は頚骸風也という名前の日本人だった」
フーヤはそう告げると少年の顔を伺う。
少年は驚きのあまりぽかんと口を開けていたが、次第に事態が飲み込めてきたらしくうなずく。
「けいがいって、名字かなり変だな」
「・・・そういうそっちは?」
フーヤが苛立っていることを隠さず睨みつける。
「カザヤ。前世は立原風也って名前の日本人だ。よろしくな」
「・・・別に、よろしくする気はないけど」
フーヤはよろしくとばかりに差し出されたカザヤの手を握ることなく、身体の方向をくるりと変え、レクスルの方へ歩き出す。
「なんだとっ!?」
「フーヤ、流石にどうかと思うぞ」
澄ました顔のフーヤと怒りのあまり地団駄踏んでいるカザヤを見比べながらレクスルはつぶやく。
フーヤはレクスルの手を掴んでレクスルを立ち上がらせる。
その時。
ぐう、という音が鳴る。
「・・・腹、減ったな」
レクスルが、苦笑いしながらつぶやく。
「ご飯、食べようか。カザヤ、君も一緒に」
「はあっ!?よろしくする気は無かったんじゃないのかよ?」
フーヤの言葉に眉をひそめるカザヤ。
レクスルも顔をこわばらせる。
「仲良くする気はない。だけど、情報交換は必要だと思った」
「それは確かにそうかもしれないけど、なんか納得出来ない」
カザヤの言葉にレクスルはうなずく。
「フーヤ、いくらなんでも言っていいことと駄目なことはある。俺だから、フーヤはこうだから仕方ないとなるが、初対面の相手にその態度はよくない」
フーヤは二人からの視線に耐えられなくなったのか、顔を背ける。
「すまない。フーヤが失礼な態度をとったな。俺はレクスル。勇者だ」
レクスルはカザヤの方へ笑顔を向ける。
「勇者?ちょっと待て、ここ、勇者とか魔王とか居る感じの世界なのか?」
「・・・情報交換は必要そうだな。ご飯はご馳走するから一緒に食べるか」




