4.試験④
「以上で試験の説明を終わります。では、順番に試験を開始して下さい」
試験の監督官からの説明が終わる。
この後は、割り振られたグループで順番に的目掛けて魔法を放っていくだけである。
「燃え上がる火よ!敵を焼き尽くせ!ファイアボール!」
「清き水よ!敵を貫け!ウォーターアロー!」
「硬き岩よ!敵を打ち砕く礫となれ!ロックシャワー!」
「空を駆けし雷よ!敵を討て!サンダーボール!」
生徒が次々に魔法を放つ。
フーヤからしてみれば、完全に厨二病大会である。
しかも、効果が絶妙にショボい。
仰々しい詠唱の割には発動する魔法は威力が低めである。
試験では初級魔法しか使ってはならないという規定がある以上、そこは仕方ないかもしれない。
それに、初級魔法であってもそれなりに鍛練を積んだ者であればかなりの威力が出せるのだ。
これまでの成果を見るための試験という性質上、初級魔法だけとするのは極めて合理的である。
ただ、初級魔法には決まった詠唱があり、フーヤとしては、そこが悩みの種である。
つまり、詠唱をするのが恥ずかしいのだ。
一応、無詠唱というものがこの世界に存在しないわけではないし、フーヤも無詠唱の魔法行使は可能である。
だが、無詠唱自体かなり高等な技術であり、出来るだけで天才と持て囃される。
目立たないを目標として掲げているフーヤにとっては、そうなる事は避けたい。
結果として、恥ずかしいと思いつつも詠唱する羽目に陥っている。
「燃え盛る火よ!敵を打ち焼け!ファイアアロー!」
フーヤは隣のグループに割り振られたレクスルが魔法で的を攻撃するのを見つつも、詠唱が恥ずかしいなんて概念がない人々は楽だななどと考えてみる。
そのレクスルは、的を壊して試験を監督していた教師から渋い顔をされていた。
的も壊されると経費が嵩むと聞いたので、そのせいだろう。
的は自己修復魔法が付与されていて、特別クラスの生徒でもない限り壊れることはないそうだ。
それを壊してしまったのだから、その反応は仕方ないのかもしれない。
レクスルが教師に申し訳なさそうに謝っているのを横目で見つつ、フーヤは自分の前の的を見る。
思考に耽っている間にフーヤの番になっていた。
深呼吸をすると、フーヤは口を開く。
「大いなる風よ、敵を切り裂け、ウィンドカッター!」
早口かつ小声で詠唱を済ますと、フーヤの魔法は的に深い傷をつける。
自己修復魔法で修復される程度の傷なので問題はない。
目立つこともなかったし、恥ずかしい詠唱もなんとかなった。
試験を監督していた教師からも、問題ないから教室に戻っていてと告げられる。
フーヤは笑みを浮かべつつも、教師から解放されたレクスルの元へ向かった。
◇ ◇ ◇
「また的を壊して怒られたんだが、もう少し頑丈な的にしてもいいんじゃないか?」
「レクスル、力加減すれば?」
簡単に壊れる的が悪いと言いたげなレクスルと試験が終わって内心喜んでいるフーヤは教室に居た。
「いや、試験で全力出さないでどうするんだよ。そもそも、魔法を加減して放つとかその方がよっぽど難しいからな」
「そうか?」
ピンときてないらしいフーヤの様子を見て、レクスルは過去に目撃したフーヤの魔法を思い出す。
「・・・そういえば、フーヤはいつも威力抑えて魔法使ってるのか」
「そうなるね」
「・・・・・・どうやってやってるんだ?」
「それは───」
『生徒の呼び出しです。フーヤ=ロイホードさん。フーヤ=ロイホードさん。至急、校長室までお越し下さい』
連絡伝達の魔道具が大音量で要件を流す。
所謂、校内放送というやつである。
「フーヤ、何したんだ?校長室に呼ばれるなんて相当の事だと思うんだが」
レクスルがきょとんとした顔でつぶやく。
「・・・困った。心当たりが一切ない」
「確かにフーヤが何かしらの問題を起こしてるところなんて想像出来ないが、現に呼ばれてる訳だし行ってこい」
「・・・嫌なんだけど。それ以前に、全生徒に伝わってるのが目立ちまくってて嫌」
教室の生徒からの視線が集まるのを感じ、フーヤは顔をしかめる。
「そうは言っても、行かないと駄目だろ、フーヤ」
「あー分かった行ってくる」
◇ ◇ ◇
コンコンコン────
静かな廊下に重厚な樫の木の扉をノックする音が響く。
呼び出される理由をぐるぐると頭の中で考えてみたが何一つとして心当たりがなく、フーヤは腹をくくって校長室に来るしかなかった。
「フーヤ=ロイホードです。入ります」
フーヤが校長室の中に入ると同時に固まる。
「待っていたよ。フーヤ=ロイホードくん」
そこに満面の笑みで佇んで居たのは彼の英雄、ルーン=ルナティックだった。




