43.ドラゴン①
投稿することを完全に忘れていました。なので、今投稿させていただきます。
「王都を出たはいいが、国境まで距離があるな」
レクスルが歩きながらぼやく。
「まあ、一番広いからね。管理行き届いていないところもあるけど」
フーヤが『万能感知』を『解放』して見れるようにした地図を見ながら言う。
「まあ、いくら領主が居るとは言っても領地が広いと全てを把握してる訳ではないからな。それに、領主の管理地から外れてしまっている土地もあるからな」
「確か、原住民が居るような場所もあったはず。実質的にその部分はヴェルトヒェン王国ではないようなもの」
「書類形式上はヴェルトヒェン王国なんだけどな」
そんな話をしつつも、フーヤとレクスルは歩き続ける。
右を見ても草原、左を見ても草原、前を見ても草原、後ろを見ても草原。
時折、木が生えているものの、だだっ広い草原であることには変わりない。
一応、草の生えていない馬車が通る道があるのでそこをただひたすらに西に向かって歩き続けている。
今のところ他の人には、街を出て直ぐに何人もの人が乗っている乗り合い馬車に追い抜かされた程度で全く出会わない。
乗り合い馬車は街と街をつなぐもので、比較的安全かつ安価に移動が可能なものであり、フーヤの前世で言うところのバスのようなものである。
二人が乗り合い馬車に乗らなかった理由は、フーヤが嫌がったからである。
今のように、転生時に貰った能力を使うことは馬車の中では基本的に出来ない。
それに、旅をするにはかなり軽装であるため、そのことに目をつけた者に変に絡まれる可能性がある。
考え過ぎと言ってしまえばそれまでだが、フーヤとしては避けたい内容である。
レクスルもフーヤに反対する理由は何も無かったので、歩きで進んでいるのである。
「しかし、歩き続けるだけっていうのは存外暇なんだな」
レクスルがつぶやく。
「レクスル、よく暇つぶしとか言って剣技の練習とかしてたけど、歩くのも身体動かすのと同じだし一緒じゃない?」
「いや、全然違うからな」
フーヤはピタリと立ち止まる。
「レクスル、暇な時間終わりかもしれない」
「どうした?」
レクスルもフーヤにつられて止まる。
「魔物、前方から三、右手から三、左から三、弱点は首」
「フーヤ、大体の生き物は首を切られたら死ぬと思うぞ」
そう言いつつも、レクスルは聖剣を顕現させて構える。
「稀に首切っても死なない奴が居るんだよ。とりあえず正面を頼んだ」
「了解」
レクスルが答えた瞬間、目の前に鹿のような魔物が三頭現れる。
なお、横からもそれぞれ三頭ずつ現れたが、それはフーヤが風の障壁を生み出したお陰で進めなくなった。
レクスルがすかさず、正面の三頭の首を切る。
続いてレクスルが右を向くのを見て、フーヤは右の障壁を解除する。
解除のタイミングに合わせてレクスルが剣を振るう。
首を切ったのを確認すると、レクスルは左を向き、フーヤは左の障壁も解除する。
そして、レクスルは全ての魔物の首を切った。
この間、三十秒足らずである。
連携が上手くいったということもあるが、何よりレクスルの剣筋に迷いがなく、的確に首を切っていたことも大きい。
それに、ほぼ同時に三頭の首を切るという芸当は普通は出来るものではない。
完全に、修行の成果である。
「ところで、レクスル。わざわざ聖剣を使う必要があったのか?」
「いや、人前では使えないことも多いだろうからな。こういう時に使って馴染ませた方がいい」
「・・・勇者として認識された方が都合がいい時は思う存分使った方がいいと思うが、勇者と思われたら面倒な時は使えないか」
フーヤは納得したように頷く。
レクスルは聖剣をしまう。
最も、見ただけでは空中に消えたようにしか見えない。
しかし、存在はしてるし、呼びかければ例え何処に居たとしても現れる。
中々に理解し難い現象だが、フーヤの『異空間収納』のようなものだと思えばある程度は納得出来る。
最も、厳密には全く違うらしい。
「それにしても、この辺りは魔物が少ないんじゃなかったか?」
「少ないとは言っても居ることには居るし、たぶん馬車に乗ってなかったから狙われただけだと思う」
魔物は人を襲う。
だが、大人数で居たり、馬車に乗って居たりすると襲われる確率は下がる。
何故なのかについてはよく分かっていないが、恐らく本能的に弱い者を狙うということだろうと言われている。
「なるほどな。フーヤ、この倒した魔物はどうする?今解体するか?」
フーヤは何気なく、展開したままであった地図を見る。
そして、ピタリと固まったかと思うと異空間収納に先程倒した魔物の死骸を放り込む。
中で他の物と混ざるようなことは無いのでそのような荒技も許される訳だがそれは兎も角。
「レクスル、緊急事態だ。とりあえず、聖剣を使ってもいい。出し惜しみをするな。僕も目立たないように全力を尽くす」
「急にどうした?」
レクスルはフーヤの尋常ではない慌てように聖剣を構えつつも、尋ねる。
「ドラゴンが来る」




