幕間∶もうひとつの旅立ち
短編を4本ほど順に投稿していく予定です。
今回のが1本目になります。
短編を投稿し終わったら、二章に入る予定です。
「じいちゃん、俺、やっぱり旅に出るよ。決めたんだ」
木の扉を壊れそうなくらいに勢いよく開け放つ一人の少年。
黒髪に灰色の瞳、使い古された短剣を腰に下げ、白の麻袋のような印象を受ける服に膝や肘、腰回りに皮の防具をつけている。
「そうか・・・」
外から家の中に入ってきた少年を見て、ほうと息を吐きながら、白髭を蓄えた、腰のまがった老人が椅子から立ち上がる。
老人は木の杖をつきながら歩きつつ、顔のしわをなぞり、白い眉に触れる。
そして、少年の前まで来ると息を吐き出しながらつぶやく。
「薄々こんな日が来るとは思っていたが、本当に行くのか?」
「嗚呼、行く宛もなく居た俺の面倒を見てくれて、一人でも生きていけるように知識と技術を身に着けさせてくれたことは本当に感謝してるんだ。だけど、俺は広い世界を、色々な場所を見てみたい」
「・・・・・・そうか、一応ワシが教えられることは全て教えたが、何かあったら」
「大丈夫だって、じいちゃん。何があっても何とかしてみせるから」
「しかし・・・」
「じいちゃん、俺は本気だからな。今回ばかりは曲げられない」
その力強い瞳に老人はほうと息を吐くと、戸棚から袋を持ってくる。
「・・・僅かだが、路銀と数日分の食料を持っていっておくれ」
「いいの!?じいちゃんありがとう!」
少年は満面の笑みを浮かべる。
老人は奥から、皮の丈夫な袋を取り出してきて、路銀の入った小さな袋とパンや干し肉といった日持ちするものや少しの果物などを手際よくつめていく。
「くれぐれも気をつけてな、カザヤ」
袋を少年──カザヤに渡しながら老人はつぶやく。
「これまで、ありがとうじいちゃん。行ってくる」
カザヤはそう告げると広い世界に向かって駆け出す。
柔らかい風がそよぎ、その出立を歓迎しているようであった。




