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転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
43/92

42.出立②


「フーヤ、つれないこと言わないでおくれよ。ただでさえ、私はフーヤが旅に出ることに納得してないというのに・・・」


 ゾーンはフーヤを抱きしめる力を強めて言う。


「兄さん、苦しい」


 フーヤは虚ろな目をしつつもそうつぶやく。


「嗚呼、すまない」


 ゾーンはフーヤを抱きしめる手を名残惜しそうに離すと、そこで初めて他の人に気付いた様子を見せる。


「これはこれは、英雄ルーン=ルナティック様。此の度は、ご丁寧な挨拶と共に出立の日をお知らせ下さりありがとうございます」


「感謝されるようなことじゃないよ。本物のブラコンが見たかっただけだし」


「良く分かりませんが、お役に立てたのであれば何より」


 フーヤはその言葉を聞いて射殺さんばかりにルーン=ルナティックを睨みつけたが、意味の分からないレクスルは首をかしげるだけであったし、ゾーンは笑顔のまま佇んでいるだけである。

 なお、意味を理解しているらしいユウレイルは気の毒そうな目でフーヤを見ていた。


「・・・『古竜の友』と名高いユウレイル様もお会いできて光栄です」


 フーヤ辺りから漏れ出る微妙な空気を感じとったのか、話題を逸らすようにゾーンが話しかける。


「・・・そういえば、そんな二つ名あったな。古竜を神聖視する奴ら多過ぎる・・・」


 独り言なのか、返事なのか分からない調子でユウレイルが答える。

 顔をしかめているので、あまりその呼び方を快く思っていないのだろう。


「・・・兄さん、心配してくれてありがとう。行ってくる」


 フーヤは反射的に伸びてきたゾーンの手を逃れ、レクスルの背中に張り付くようにして立つ。

 ゾーンはそんなフーヤの様子を見て、諦めがついたようで優しい顔でつぶやく。


「行っておいで、全て無事に終わったら帰っておいで。家族全員で待ってるから」


 ゾーンはそう言うと、馬車に乗り込む。


「フーヤ、公務の途中に寄ったからこれ以上話すことが出来ないのが残念だが、気をつけておくれよ」


「兄さん、せめて終わらせてから来て」


「そうだな、次から気をつけるよ」


 ゾーンはフーヤの頭を軽く撫でると、馬車の戸を閉める。

 そして、馬車は着た時とそう変わらない速度で走り去っていった。


「嵐みたいに去っていったな・・・・・・」


 レクスルがそうつぶやくと、フーヤは盛大に息を吐く。


「こういう嫌な予感だけは当たる・・・・・・」


「嗚呼、早く行こうと急かしていたのはそのせいか。まあ、見送りに来てくれるだけ良かったんじゃないか?」


「見送り来なくていいって伝えておいたのに・・・」


 フーヤは不満を隠そうともせずに言う。

 だが、レクスルの何処か寂しそうな様子を見て、口をつぐんだ。

 ルーン=ルナティックはその様子を眺めつつ、わざとらしく咳払いをする。


「そういえば、これを預かっているんだった。レクスルくん、どうぞ」


 ルーン=ルナティックは手紙をレクスルに渡す。

 レクスルは手紙の封筒に書かれた筆跡を見て、目を見張る。

 レクスルはゆっくりと、封を開けて中の紙を取り出す。

 レクスルは、手紙の内容に目を通すと大事そうに懐に手紙をしまう。


「何て書いてあったんだ?」


 フーヤが首をかしげつつ聞くと、レクスルは僅かに笑いつつ言う。


「気をつけてって言葉と手紙の送り先」


「父親からか?」


「父親って、呼んでいいのだろうか」


「別にいいだろ。直接存在を否定されたり、暴力を振るわれたりとかでもしたのか?」


 特に口調が変わった訳でも声の大きさが変わった訳でもないのに、その言葉には芯のようなものが感じられた。


「・・・してない」


「なら、呼んでいいだろ。むしろ、レクスルの話をこれまで聞いてきた感じだと、後継者争いとかの面倒事に巻き込まないためにわざと素っ気無くしている節があると思う」


「そうか」


 レクスルは、フーヤに手を差し伸べる。


「改めて、よろしく頼む」


「・・・あまり、面倒事に巻き込まないようにしてくれると助かる」


 フーヤは手を握るとすぐ振り払うように離す。


「善処する。それではルーン=ルナティック様、師匠、行って参ります」


「いってらっしゃい」


「気をつけろよ」


 レクスルの言葉にルーン=ルナティックとユウレイルはそれぞれ言葉を返す。

 フーヤとレクスルは魔法学校の前から歩き出す。


「とりあえず、この国から離れないとな。フーヤ、何処に行く?」


「西がいい」


「例の『破壊の翼』が居るバイスレコード公国とは反対方向だが、何故だ?」


「どうせ各国を巡るわけだから、わざわざ最初から敵の本拠地に突っ込むような真似をしなくてもいいだろ」


「・・・本音は?」


「隠居した後に住む場所の下見がしたい。いくつか目星をつけてある場所がある」


「ぶれないな、まあフーヤらしいか」


 レクスルは笑顔でつぶやく。

 柔らかい風がそよぎ、二人の出立を祝福しているようであった。


これで第一章が終わりです。

今後の更新予定として、来週に人物紹介まとめの投稿をして、翌週以降に3話又は4話ほど幕間となる短編投稿をした後で第二章に入るといった形になります。

第二章の準備のためということで、御了承下さい。

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