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転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
39/92

38.研修③


「レクスル、恐らくだがこれから面倒なことになる。僕は目立たないようにするから、レクスルは盛大にやれ。遠慮するな目立ちまくれ」


 フーヤがルーン=ルナティックに促された出口に向かってレクスルを押しつつ言う。


「ちょっと待て、どういうことだ?」


 レクスルはフーヤを見ようとするが、背中をフーヤに押されているため顔を見ることが出来ない。

 ギルドマスターはその様子を表情を動かすことなく見つめているだけであるし、ルーン=ルナティックはニマリとした笑みを浮かべたまま成り行きを見守っているという一種の混沌とした空間が出来上がっていた。

 しかし、レクスルは困惑の渦中でもフーヤの必死さだけは感じとったため、フーヤの望み通り先頭に立って扉を開ける。

 扉を開けた先で待ち構えていたのはいかつい顔をした男たち。

 人数は数えきれない程おり、建物のほとんどが占領されているばかりか外にまではみ出ていた。


「お前ら!調子乗り過ぎなんだよ!」


「何で奥の部屋通されてるんだよ!あそこは特別な人間専用だろ!?」


「ルーン=ルナティック様に案内されるだと!?一体何をすればそんな状況に?」


「魔法学校のボンボンが調子乗ってるんじゃねえよ」


「表出ろや!」


「ルーン=ルナティック様!握手して下さい!」


 一部に変な者が混じってはいるが、多くの者は不満を抱いている様子である。

 口々にそれぞれの主張を喚き散らす様子は些か滑稽である。

 なお、フーヤとレクスルは魔法学校の制服姿のままであったため魔法学校の生徒であることは筒抜けである。

 とはいえ、それだけで人を判断しようとするとは程度が低いことは間違いない。

 レクスルはフーヤの必死な様子にも合点がいった様子で少しばかり冷ややかに様子を眺めていた。


「騒がしいな」


 レクスルとフーヤの後ろからギルドマスターが顔を出す。


「そのように騒ぎ立てるのであれば、実際に実力を確かめるが良かろう。裏の闘技場を使うが良い」


 その言葉に怒号のような声をあげる人々。

 興奮してはいるものの、その割には大人しくぞろぞろと連れ立って闘技場へ向かって歩いていく。


「・・・なるほど、盛大にやれっていうのはこういうことか」


 レクスルがそうつぶやく横でフーヤは暫く考える様子を見せた後言葉をこぼす。


「このままレクスルに任せて帰るというのは──」


「いや、流石に駄目だからね。フーヤくん。レクスルくんが可哀想だよ、それは」


 人がはけた隙に出てきたルーン=ルナティックがそう言いながら二人の肩に手を乗せる。


「まあ、通過儀礼のようなものだから。頑張ってきて」


「はい!」


 ルーン=ルナティックに元気に返事するレクスルを眺めつつ、フーヤは肩に置かれた手を払い落とした。


 ◇ ◇ ◇


 闘技場とギルドマスターが言っていた場所はただの広い草原であった。

 狩猟ギルドの建物側に観客席と雑な字で書かれた看板がある柵が立っており、どうやら柵を越えた先に居る人への攻撃は容認されていないということらしい。

 既に観客席側に幾人もの人が集い、始まるのを今か今かと待ち焦がれていた。

 ちなみに観客席となっているものの、椅子などが用意されている様子はない。


「お、逃げ出さなかったんだな」


 レクスルとフーヤが姿を現すと何処からともなくそう声が飛んでくる。


「自分より弱い者たちから逃げ出す必要などないだろ」


 そう言ったのはレクスル。

 レクスルにしては珍しい発言であると言えるが、この場に来るまでの僅かな間にフーヤがそうしろと指示したからである。

 なお、その様子をルーン=ルナティックとギルドマスターの二人が呆れた目で見ていたことは忘れてはならない。


「決まりはいつもの通り、殺害は厳禁!それだけだ」


 一応この場で審判という立場になるギルドマスターがそう告げると雄叫びが轟く。


「決まり緩い・・・・・・」


「まあ、怪我は回復させればいいからね。それに、決まり破ったら職を永遠に失うはめになるから。ギルド同士の提携があるから、狩猟ギルド以外にも登録出来なくなるし、仕事もさせてもらえなくなる。人生失うはめになることをする頭の悪い奴は流石に居ないよ。だから、これで充分」


 ルーン=ルナティックはそう答えると前に進み出る。


「怪我した人は私が治癒します。なので思う存分やって下さいね!」


 先程の雄叫びより一層大きくなった声が空気を震わす。


「レクスル、まさかと思うが治療されたいからと怪我するなよ」


「・・・・・・師匠の顔を立てるためにも、大怪我をするわけにはいかないからな」


「かすり傷ならいいとか言い出さないよな」


「え、駄目か?この人数だし、つけられてもおかしくはないだろ」


 フーヤは米神を押さえるとつぶやくように言った。


「無傷の方が喜ばれると思うし、動機が不純過ぎる。もしも、怪我したら僕が治すから」


「分かったよ。怪我するなってことだな」


 レクスルとフーヤの二人は前を向く。


「さて、暴れますか」


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