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転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
34/92

33.買い出し③


「今のは悲鳴・・・こっちか?」


 レクスルが神経を研ぎ澄ませ、声のした方向へ向かおうとする。

 一方でフーヤはあくびをすると、レクスルに言う。


「先に帰ってていい?本読みたい」


「・・・・・・フーヤはそういう奴だよな。助けようと思ったりとかは」


「しない」


 即答するフーヤを見るとレクスルはつぶやくように言う。


「心変わりしたりとかは」


「しない、けど・・・・・・何か手伝って欲しいならそれに見合う価値を示してくれ」


「これからのための練習ということで、手伝ってはくれないか?」


 その言葉にフーヤは先を促すように手で合図する。


「俺は勇者として名を挙げてある程度の信用を積み上げなければならない。だが、ひとりで出来ることなどたかが知れている。そこで、フーヤに手伝って欲しい」


「つまり、全ての手柄をレクスルに押し付けるということか?」


「そうだ」


 レクスルは曇り無き目でフーヤを見つめる。

 フーヤは少し考え込んだ後、息を吐き出した。


「少しだけ手伝うから、後はレクスルがやってくれ『解放』」


 フーヤは『万能感知』の力を解放し、地図を展開する。


「さっきの悲鳴の原因は・・・・・・」


 フーヤは手早く情報を拾い出すと、レクスルの方に視線を向ける。


「人攫いだ。人身売買目的の」


「そうか、助け出さないとならないな。規模はどのくらいだ?」


「人攫いの人数は15人。拠点らしき場所に13人。残りの二人は街中を歩いている。二人で連れたっているから次の標的を狙い定めているのかもしれない。捕まっている被害者は10人。全員年端もいかない女の子」


 どうやら、先程の悲鳴の主は既に拠点で囚われているようだ。

 ここから拠点がかなり近い位置にあるため、誘拐するのも簡単だろう。

 レクスルはその情報を聞いて米神に手を当てると息を吐き出す。


「・・・なるほど、最近この手の輩が増えてるんだよな」


「どういう意味だ?」


「最近、国家経営が上手くいっていて景気がいいだろ?そうなると、自ずと貧困層にも余裕が出てくる。これで困るのが売春宿とかだな。貧困で身体を売る女性が少なくなるから」


 この手の時事的な情報はフーヤよりレクスルの方が詳しい。

 王城に出入りすることはほぼ無いにしても、王族の一員というだけで様々な情報が手に入れるつもりが無くとも結果的に知ることが出来てしまうらしい。

 フーヤの情報源は本とルーン=ルナティックであるため情報にかなり偏りがある。


「要するに、それで困った屑共の犯行か」


「嗚呼、フーヤ。犯人の拠点と何か犯人の目印になるような物はあるか?」


 フーヤは暫く地図を眺めるとレクスルに告げた。


「拠点はちょうどこの道を奥に行くと行き止まりにある廃屋。扉が板で塞がれているから分かりやすいと思うよ。奴らは外された窓から出入りしてるらしい。犯人たちは特殊な刻印のある鞭を持っているらしい」


「使い道が容易に想像出来てしまって、少し複雑な気分にさせられるな・・・・・・」


 レクスルはそう言いつつも、目を閉じる。


「なるほど、確かにフーヤの言う通りだな」


「何をしたんだ?」


 フーヤが尋ねると、待ってましたと言わんばかりの満面の笑みを見せる。


「ルーン=ルナティック様に魔法で周囲を探る方法を教えて貰ったから試してみた。実践的に使うのは初めてだし、何かしらの目印がなければ探すことが出来ないから制約は多いが充分実用的だな」


 レクスルは満足そうにうなずいた。

 フーヤはルーン=ルナティックの名前に嫌そうに顔を歪めつつもつぶやく。


「なるほど、なら手助けはこの程度にして帰ってもいいか?」


「嗚呼、俺一人ではどうにもならなくなったら連絡する。通話の風魔法なら俺も使えるようになったからな」


 通話の風魔法はそれなりに修練を積んだ者でないと使えないものである。

 フーヤとしては、目立ちたくないので表立っては使わないが便利なので隠れて使う分にはこれまでも何度も使っている。

 基本的に連絡を伝えたい側が魔法を使うことで互いの意思疎通が出来るようになる仕様である。

 そのため、これまではフーヤ起点でしか使えなかったのだが、レクスルがユウレイルとの特訓の間に使えるようになったのでレクスルからでも問題なく使える。


「じゃあ、帰る」


 フーヤは手をひらひら振りつつ歩き出す。


「気をつけて帰れよ」


 レクスルはフーヤを見送ると息を吐き出す。

 そして、走り出した。

 目的はまず拠点から離れている二人。

 ルーン=ルナティックから教えて貰った探知の魔法でそれらしき二人の位置を捕捉する。


「見つけた」


 走る先に二人の男。

 街中に居るごく普通の人間を装ってはいるが、隠しきれない緊張感を出している。

 レクスルは懐から小袋を取り出す。


「さて、師匠から教わったことの実践といくか」


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