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転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
31/92

30.卒業認定⑤


「・・・人ごとだと思って」


 フーヤはそうつぶやきつつも杖を頭を下げて避ける。

 魔法を使えないというのは痛手ではあるが、全く体術に心得がないというわけでもない。

 ただ、身体を動かすのはあまり好きではないだけで。


「レクスル!」


 その呼びかけだけで大体察したらしくレクスルが動きを変える。

 ただ紙一重を避けるだけだったのが、避けるのと同時に一気に距離をとる。

 その隙にフーヤがレクスルとギルドマスターの間に入ると手持ちの短剣で杖を受け止める。


「別に、武器を使うなとは言いませんでしたよね?」


「ほう、先程までの疲れた動きは演技か」


 フーヤはその問いに答えず、短剣に力を籠める。

 体力がないというのは少し前までは本当であった。

 しかし、古竜の加護である『体力増強』のおかげで体力はついている。

 更に言えば、体力がない要因はこちらの世界では前世のように体を使う必要に駆られなかったからである。

 前世はむしろ運動神経抜群といっていいくらいであった。

 要するに体を動かす感覚さえ取り戻せればいいのである。


「来い、クラレント!」


 レクスルが呼びかけると、その手に聖剣が現れる。

 フーヤもその理屈はさっぱり分からないが、レクスルが手に入れた聖剣は『常に何処にでもあり、何処にもない』という性質を持つらしい。

 遍在という神が持つ性質と同じらしいが、そう言われてもフーヤもレクスルもいまいち想像出来なかった。

 だが、分からないなりに使いこなせてはいるらしく現に聖剣を自由自在に顕現させたり消失させたりしている。

 なお、ルーン=ルナティックはレクスルが勘でつけたクラレントという名前を聞いて呪われた魔剣などとつぶやいていたが、聖剣の名前として特に問題はなかったらしくそのままになっている。

 レクスルは聖剣を構えるとギルドマスターに斬り込む。

 ギルドマスターはそれをかわしたが、フーヤとレクスルの二人に二方向から攻撃を仕掛けられ、飛び上がって大幅に距離をとる。

 そして、そのまま手を上げる。


「降参ということでいいわ。力量も測れたし、狩猟ギルドへの所属を認める」


「おめでとう!狩猟ギルドって、中々に審査厳しくて本登録出来るのって一握りだから本登録が出来るかハラハラしたよ」


 ギルドマスターの言葉を聞いて笑顔を振りまきつつ、ルーン=ルナティックが近づいてくる。


「ありがとうございます。ルーン=ルナティック様」


 レクスルが嬉しそうに笑顔で告げる。


「ちょっと待て、そんなに狭き門なのか?」


「フーヤ、知らなかったのか?有名なことだけど」


 レクスルが驚きを隠さずにフーヤに言うと、フーヤは顔を背ける。


「・・・知らない、興味なかったから」


「フーヤらしいな、そういうとこ」


「まあ、一応研修だけは受けてもらう。今の話を聞いて不安でもあるからな」


 ギルドマスターはそう言うとルーン=ルナティックを見る。


「用は済んだからな。帰るぞ」


「うん、また研修とかの日取りは改めて連絡でいい?」


 ルーン=ルナティックの問いに頷くと、ギルドマスターはもう用はないとばかりに足早に立ち去った。


「せっかちじゃの。もう少し居ればよいのじゃが」


 学校長はそう言いつつもお茶を飲む手をとめない。


「まあ、性格は中々変わらないものだからね。それで、フーヤくんとレクスルくん」


「とりあえず、旅の準備を整えておいて。それで、研修の日取りが決まり次第それに伴って出立の日も決めるから」


「見送りは無しでいいのじゃ?」


 学校長の言葉に深くうなずくフーヤ。


「まあ、盛大に見送りされたところで困るだろうからな。フーヤも俺もこの学校に知り合いが多い訳でもないし」


 レクスルもフーヤに同意する。


「君たちがどんな学校生活を送っていたのか不安になるんだけど」


「同類だろ」


 ルーン=ルナティックの言葉にフーヤはそう返すと、ルーン=ルナティックは引き攣った笑みでフーヤを見る。


「そうですよ、同類ですよ、腫れ物扱いですよ、これで満足か?そもそも、腐女子ヲタクには同類の仲間が出来ればいい方だしね」


「ルーン=ルナティック様とフーヤが何の話をしているか分かりませんが、ルーン=ルナティック様には師匠のような恋人がいますよね?」


 レクスルの言葉にフーヤは少し不機嫌そうにルーン=ルナティックを睨む。


「なんで、恋人居るの?」


「こっちが聞きたいくらいだよ。明らかに恋人にするのに向いてないのに・・・・・・」


「ルーン=ルナティック様は魅力的なので師匠がお付き合いしたい気持ちも分かります」


「・・・これの何処に魅力が?」


「フーヤくん、流石にそれは傷つくぞ。というか、レクスルくんのせっかくの言葉を台無しにして・・・」


「フーヤ、偶にルーン=ルナティック様への当たりが強い気がするが、何故だ?」


「知らない」


 言い争いのようなじゃれ合いのような終わりの見えないやり取りを眺めつつ、学校長はお茶をすすりながらぼやいた。


「若者は元気じゃの・・・」


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