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転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
29/92

28.卒業認定③


「終わった・・・」


 机に突っ伏すレクスル。

 フーヤはその光景に既視感を覚えつつも、レクスルに近づく。

 月日は流れ──とはいっても二週間だが──二人は卒業認定試験を受けていた。

 一回だけでボロボロになるようなルーン=ルナティックとの特訓をレクスルはやり切り、この日に臨んでいた。

 フーヤはユウレイルに渡された問題を解き、どうしても分からないところだけをユウレイルに聞いて対策しただけだが、案外あっさりと解けてしまったという印象である。

 それに、今回は手加減する必要も無かったため、むしろその分の気苦労が無かったので楽だった部分もあるかもしれない。

 目立つ目立たないに関しては、そもそもクラスではあまり目立って無かったというかほぼ空気のように扱われていた二人であるし、最近は主にルーン=ルナティックとユウレイルの二人に連れ出されるせいで授業にもほぼ出ていなかった。

 その上、卒業認定試験は内密に行われるようにルーン=ルナティックが取り計らってくれていたため、フーヤの目立たないという要望は大体叶っている。

 むしろ、フーヤは意図的に影を薄くしていたし、レクスルもあまり気にされてなかったので居なくなった事に気づかれていないかもしれない。


「それで、レクスル。実技の方がまだ残ってるけど」


「実技は自信あるからいい。それに、今回はルーン=ルナティック様が教えてくれたおかげで筆記試験も問題ない」


「・・・本当にどんな特訓をしてたんだ」


 フーヤとしては、毎度レクスルがボロボロになっている理由を知りたい気もしたがレクスルは頑として話そうとしない。

 ルーン=ルナティックが絡むとレクスルは途端に頑なになる。


「よし、フーヤ。行こう」


 ◇ ◇ ◇


「ということで、試験の監督官を務めるルーン=ルナティックです!よろしく!」


「・・・」


「よろしくお願いします!」


 無言のフーヤと元気良く返事をするレクスル。


「フーヤくん、返事は?」


「何故?」


 フーヤは不満だと言いたげに睨み付ける。


「フーヤくん、目立ちたくないって言ってたし、最低限の人数を集めた結果だよ。噂好きな教師陣なんて集めたら後が怖いから。その点、ぼっちの学校長なら安心」


「誰がぼっちじゃ」


 小さく不満を述べる、語尾がじゃとかいう狙っているとしか思えない人物こそ、この学校の学校長だ。

 見た目も白くたくましい髭を持っており、黒のローブと淀んだ色の革靴といかにも典型的な魔法使いといった容貌である。

 頭は少々どころか完全に寂しい状態で、ピカピカに光っているが、それを除けばフーヤの前世の某魔法学校校長のようだ。


「実際、この学校に気軽に話せる人なんて居ないよね?というか、私以外の知り合いも片手で数えるくらいでしょ?」


「失礼じゃな!六人じゃから、片手では数えられないのじゃよ?」


 なんとも悲しくなる反論を聞きつつ、フーヤはこの場に居るもう一人の人物に目を向ける。


「それで、この方は?」


「嗚呼、狩猟ギルドのギルドマスターだよ。一応、勇者パーティーとして冒険する以上、狩猟ギルドの登録はしておいた方がいいしね。掛け合ってこの試験を登録時の代替試験にしてもらった」


 狩猟ギルド。

 要するに、魔物を狩ることを生業とする者が集うギルドである。

 この世界において魔物というのは、魔素を溜め込み過ぎたことが原因で動物が凶暴になったもののことだ。

 その仕組みなら、人間もなるのではないかという考えもあるが、魔素を貯めると同時に魔力にして使っていることがほとんどなので人間から魔物になった例は今のところないようだ。

 ちなみに、ギルド自体は同じ職種の寄り合いといった感じなので商人ギルドや工業ギルドなどもある。

 そして、ルーン=ルナティックの指し示した人物は血のような赤を纏いし、老婆だった。

 節立った杖をつき、眼光は鋭く、顔のしわだけ経験を積んだといった風である。


「全くこの娘は、老人をこき使いおって・・・」


 そう告げる狩猟ギルドのギルドマスターは笑顔だったので、言葉とは裏腹にそこまで迷惑というわけでもないのかもしれない。


「まあ、口の堅い連中だし、安心していいよ」


「・・・ここ一応学校内だし、あんまり安心出来ない」


「人が来ないように魔法で惑わせてるから。心配しなくて大丈夫」


 フーヤの言葉にそう答えるとルーン=ルナティックは笑顔で目の前の巨大な皿の中を指し示す。

 二つ用意してあるので、言うまでもなくフーヤにひとつ、レクスルにひとつだろう。


「とりあえず、威力及び持続時間を知りたいから。この中に魔法よろしく」


「フーヤ、先にいいぞ」


「・・・なら」


 フーヤは皿の中にピッタリ収まる大きさの竜巻を皿の中に生み出す。


「なに、無詠唱じゃと!?」


 そういえば無詠唱は高等技術だったな、などとフーヤは思い出してみたものの、まあ、いっかと思考放棄しておく。

 この場所で少々やり過ぎたとして、困ることはあまりない。

 精々、二人の老人が驚くだけだ。


「時間かかりそうだし、レクスルくんもこっちの皿にお願いしてもいい?」


 ルーン=ルナティックが実に軽い調子でレクスルに頼むとレクスルは笑顔で頷き、燃え盛る炎を皿の中に生み出す。


「さて、どちらが先に消えるのか!中々に読めない勝負だね」


 満面の笑みを浮かべるルーン=ルナティックを見て、フーヤはぽつりとつぶやいた。


「・・・そういう趣旨?」


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