19.特訓③
「それで、これは一体全体どういう状況?」
ルーン=ルナティックは瓶に入った水を飲むユウレイルと地面に倒れるように伏しているフーヤとレクスルを見て首をかしげつつもユウレイルに尋ねる。
「特訓?」
「何故疑問形?」
「正確には二人の今の実力を見ておこうかなと」
「私が目を離した数刻の間に?」
ルーン=ルナティックは数刻程前、ちょうど今後の事について話し合おうというまさにその時に連絡があり席を外したのである。
確かにルーン=ルナティックが居なくなれば、何もない平野にフーヤ、レクスル、ユウレイルの三人が残される事となる。
だがしかし、その間に特訓と称した闘いが巻き起こるなど、誰が想像するだろうか。
「ちなみに、実力の方は?」
「まずまずといったところかな。前よりもスムーズに連携が出来てる。これまでは、フーヤがレクスルの足りないところを補っていたけど、それをする必要が無くなった分攻撃や誘導に意識を回せる。それに、レクスルが詠唱無しで魔法を使えるようになったのも大きい。まだ、最低限の防御と剣に魔法を纏う程度だけどかなり強くなってるよ」
「べた褒めしてる割にはボロボロになってるけど・・・」
ようやく体力が回復したのか、レクスルが起き上がる。
「流石ですね・・・師匠」
「こうしてまた、ユウレイルの狂信者は増えるのであった」
「何故そうなる」
ルーン=ルナティックのナレーションのような言葉にすかさず突っ込みを入れるユウレイル。
「・・・師匠と呼びたくなる気持ちも分からないわけではないかな」
地面に倒れたまま仰向けになってフーヤはつぶやく。
「新たな狂信者に・・・」
「ならないから」
「いや、ならないんかい」
残念と言いたげにため息をつくルーン=ルナティック。
「それで、ルーン。何の用事だったんだ?」
「フーヤくんとレクスルくんの繰り上げ卒業認定について」
「ちょっと待って、聞いてない」
フーヤはむくりと起き上がる。
「フーヤもか?俺も初めて聞いた」
顔を見合わせる二人にルーン=ルナティックは笑顔で答える。
「魔王復活までは四年の猶予がある。でも、魔王が現れてからじゃ遅いから各地を回って経験を積んで挑むべきだと思うので、早めに旅に出る方がいいと思って」
「せめて、相談とか相談とか相談とかあっても良かったよね?当事者、何も知らないのおかしいと思う」
冷たい声で詰問するフーヤ。
「確かに、それに僕も初めて聞いたのだけど。ルーン」
ユウレイルもそう言うとルーン=ルナティックはバツが悪そうに口ごもる。
一抹の静寂の後、ユウレイルがため息をつく。
「それで?ルーンが考える予定について教えてよ。当事者に今の今まで説明が無かったのは問題だけど、弁明なら聞くよ?」
「・・・単純に伝え忘れただけです。申し訳ありませんでした」
頭を下げるルーン=ルナティック。
「今後についてですが、今まで通り特訓を受けてもらってそろそろいいかなという段階で卒業認定試験を受けてもらってその後に正式に旅立ってもらおうかと。魔王復活するまでの間は各地を巡ってもらって経験と実績を積み重ねていってもらえればといった感じです、はい」
早口でつらつらとルーン=ルナティックが説明するのを聞き、フーヤは口を開く。
「これからはきちんと伝えて」
「はい、すみません」
頭を下げたままのルーン=ルナティックにレクスルが近づく。
「分かりました、頭を上げて下さい。色々手をつくしてくれていたんですね。ありがとうございます」
「レクスル」
「いいだろ、フーヤ。俺たちのために全力を尽くしてくれていたんだから」
咎めるような声色だったフーヤもレクスルの穏やかな笑みを見てため息をつく。
「・・・たぶん俺たちのためって訳でも無いと思うけど。レクスルがそう言うなら許す」
「まあ、レクスルとフーヤがそれでいいなら僕もこれ以上言うことはないけど、次からはそういった事がないようにしろよ。ルーン」
「分かった。最善を尽くします」
ユウレイルの言葉に胸に手を当てつつもルーン=ルナティックはきりりとした顔で答える。
「いや、それは出来ない時もある時が・・・まあ、何を言っても無駄か。神様なんていう存在には」
「ちょっと待ってください・・・神様とは?」
レクスルのその反応を見てニヤリと笑うとユウレイルは口を開く。
「嗚呼、言ってなかったか。ルーンはこれでも八百万居る神の一柱だぞ?」
「え」
固まるレクスルを見て、フーヤも口を開く。
「レクスルも知ってると思ってた」
「フーヤも知ってたのか?」
「逆に女神で無いなら知り合わなかったと思う」
「それって、一体・・・」
「あれ?聞いてないんだ。フーヤくんは転生者だよ。伝説の」
レクスルが情報量の多さにしばらく動きが止まったのは言うまでもない。




