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転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
18/92

17.特訓①

忙しくて投稿遅れました、すみません。


「ここで待てって放置されたけど」


 フーヤはきょろきょろと周りを見渡す。

 本来は授業がある時間だが、ルーン=ルナティックが問答無用とばかりに連れ出したのである。

 場所は学校の近くにあるだだっ広く、草の他には何もない平野。

 フーヤもレクスルもこの場所にこのような場所がある事は知らなかったが、一応学校の土地であるそうだ。

 そして、呼び出した本人は待てと言い残してどっかに行ったのである。


「しかし、ヲタ女神の恋人とか災難の予感しかしないな」


 特訓の師匠となる人物について、ルーン=ルナティックは自分の恋人という情報だけ残しているのだ。


「ところで、フーヤ。前から気になっていたんだがヲタ女神ってどういう意味だ?女神のように美しいという事なら同意するが」


「・・・気にしなくていいよ。貶してるだけだし」


「ふむ、聞き捨てならないな。ルーンの恋人としては」


「「うわっ!?」」


 急に聞こえた声に驚くフーヤとレクスル。

 いつの間にか二人の後ろには一人の少年が立っていた。

 青みがかった黒髪に、ルーン=ルナティックと同じ白いローブ。

 下に黒い服を着ており、ペンダントには青い石。

 灰色の瞳には、どこか無機質さを感じる。


「僕の名はユウレイル。よろしく、僕の恋人に告白したレクスルと僕の恋人に変なあだ名つけて呼んでいるフーヤ」


 あ、これは怒っているなとフーヤは思う。

 笑顔を見せているが、目が完全に据わっている。

 手を差し伸べているが、握ったら何をされるか分からない独特の雰囲気がある。


「よろしくお願いします」


 度胸があるのか単に気付いていないのか、レクスルが笑顔で握手に応じる。


「さて、個人的に物申したい事は多くあるが、それを持ち込むのは僕やり方じゃないからそれは安心してくれ」


 少しも安心出来ない絶対零度の目で二人の事を見ながら、ユウレイルは木製の短剣を構える。


「まずは、二人の実力を見たい。魔法も剣技も使うのは自由だ」


「あの、俺の剣は真剣なのですが」


 レクスルは自身の私物である剣を今日は携えている。

 飾りなどは特になく、これといって特徴のない剣に見える。

 だが、これは有名な職人の手によって作られたものであり、その筋に詳しい者が見ればその切れ味と丁寧な仕事振りに感嘆するような代物である。


「構わないよ。寧ろ、殺す気で来てくれないと困る」


 ユウレイルはくるりと木製の短剣を回すと、トンッと軽く地面を蹴る。

 狙いはフーヤ。

 フーヤは咄嗟に風の障壁で動きを鈍らせる。


「甘い」


 ユウレイルは減速こそしたものの、止まることはなく、突っ込んでくる。


「っ!?」


 フーヤは懐から抜いた短剣でユウレイルの攻撃を受ける。

 それと同時にレクスルが横凪ぎにユウレイルに向けて剣を振るがあっさり避けられて距離をとられる。

 レクスルが追いかけ、剣で突こうとするがしゃがんでかわし、そのまま懐に飛び込もうとするユウレイル。

 フーヤは風で弾くようにして無理矢理レクスルとユウレイルの距離を開くが、ユウレイルは狙いをフーヤに切り替えたようで木製の短剣を数本投擲してくる。

 フーヤは避けれる分は避け、避けれない分は短剣で弾きつつ呻くようにつぶやく。


「・・・複数持ってるのか」


「別に個数制限無いからな」


 丁寧にフーヤの言葉に答えつつも、ユウレイルは接近してきていたレクスルの剣を避ける。

 そして、避けた上で今度は木製の短剣を投擲する。

 レクスルも予想はしていたのか剣の面で弾き飛ばすが僅かにかすり、顔をしかめる。

 フーヤは飛んでくる木製の短剣を風魔法で勢いを相殺して落とす。


「レクスル!」


 飛んでくる木製の短剣にフーヤが気をとられている隙にユウレイルはレクスルの懐にもぐりこみ、投げ飛ばす。

 少々変則的な背負い投げにより、地面に叩きつけられたレクスルに馬乗りになると、ユウレイルは喉元に木製の短剣を突きつける。


「はーい、そこまで!」


 呑気なようにも聞こえるそのような言葉と共にパンパンと手を叩く音。

 そちらを見るとルーン=ルナティックが立っていた。

 ユウレイルがレクスルから退くと、レクスルは痛みに顔を歪めつつも起き上がる。

 フーヤはレクスルに近づくと軽く治癒魔法を使う。

 ちなみに、治癒魔法はこの世界では適性が無いと使えないらしく使い手は貴重である。


「あれ?痛みが・・・」


 訝しげなレクスルを見て、そういえば治癒魔法の事は告げてなかったなと思いつつもフーヤはルーン=ルナティックとその隣に立つユウレイルを見る。

 いつの間にかユウレイルの纏う雰囲気が会った時よりも柔らかくなっている。


「それで、ユウレイル。どう思う?」


「・・・レクスルを徹底的に特訓すれば死地に送りこんでも生きて帰ってこれるはず」


「・・・レクスルだけ?」


 フーヤの言葉に頷きながらユウレイルは紙を取り出し何かを書きつける。


「レクスルの特訓中は図書館にあるこの本を読んでおいて」


「魔物図鑑?」


「名前、生息地、攻撃方法、特性、弱点、討伐部位を重点的に覚えろ。案外、覚えたと思っても頭から抜けてる事多いから念入りに」


 魔物図鑑自体は家にあったので、フーヤは既に読んだ事がある。

 しかし、内容を全て覚えているかというと微妙としか言い様がない。


「何故?」


 その短いフーヤの質問にユウレイルは笑顔で答える。


「戦況を冷静に観察しながら指示を出す司令塔になるのが一番合っているようだからな。こういった知識を知らないと話にならない」


「ユウレイル、ちなみにフーヤくんの実力についてはどう思ってるの?」


 ルーン=ルナティックはどこからか取り出した砂糖菓子をつまみながら聞く。


「とりあえず今は訓練しなくても問題ない。実戦は足りないだろうが、そこは後で補う。それよりも、レクスルを念入りに鍛える」


 その言葉にレクスルの身体がぴくりと揺れる。


「その心は?」


「自分の彼女に告白した相手だし、多少厳しくしても問題ないから」


「そう言ってくれて嬉しいことには嬉しいけど、手加減しなよ?」


 のほほんとした会話をしてるのを聞きつつ、レクスルがボソリとつぶやいた。


「俺、逆鱗に触れたのかも」


「レクスル、頑張れ」


 フーヤはレクスルの肩にぽんと手を置いた。


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