表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
17/92

16.勇者③


「自由?」


 レクスルが訝しげな様子を見せる中、フーヤはルーン=ルナティックを睨みつける。


「フーヤくん、君はこの魔法学校を卒業する日に失踪する予定なんだよね?」


「え?」


 驚きの声を上げるレクスルを横目にフーヤは紅茶を一口飲む。


「何故、知ってるのさ?誰にも言った事無いのに」


 レクスルがフーヤがそうするつもりであった事を聞き、息をのむ。


「私は何でも知ってるからね。ついでに、何故失踪しようなんて考えに至ったかも言おうか。所謂、貴族としての義務を果たしたくないというか、田舎辺りのんびりと隠居生活をしたいから」


 貴族としての義務というのは、所謂フーヤの前世で言うところのノブレス・オブリージュのような考え方でこの国で行われている慣習の事である。

 平民よりも恵まれた環境で上質な教育を受ける代わりに国の役に立つというのが求められているのだ。

 具体的には長男や長女は家を継ぎ国から賜った領地経営を行い、それ以外の子は軍に入るか役職を賜るかの二択を迫られる。

 そして、死ぬ前まで国に仕え続ける事を強いられるのだ。

 一応、分家として嫁を貰い受けるといった道もあるが家を継ぐ長男と同じように領地経営をする事となるため国に仕えるのと大差ない。

 しかも、分家を作るのであれば後継ぎ問題も出てきたりするのでフーヤとしては完全に問題外であるし、それらのような慣習など徹底的に無視したいところである。

 第一、フーヤからしてみれば恵まれた環境も上質な教育も受ける事を望んでないのに与えられ、その見返りを求めるなど受け入れ難い。

 そして、フーヤ自身としても何処か辺鄙な土地で細々とのんびり暮らしていたいという望みがあるため、一生国に仕えるなど断固拒否したいのだ。

 故に考えついたのが、行方をくらますという方法であった。

 正直、引け目も感じてはいるがフーヤとしてはこの方法しかないと思っていた。

 だが、この方法は邪魔されるのを防ぐためにも誰にも知られてはいけないものである。

 しかし、ルーン=ルナティックのせいで実にあっさりとばらされてしまった事にフーヤは顔をしかめる。


「・・・それで、さっき自由って言ったよね?具体的にどういう事?」


「ひとつだけ、貴族の義務を免除というか隠居しても誰にも文句を言わせない方法がある。それは、多大なる功績をあげる事」


「つまり、魔王を亡ぼすという功績さえ得られれば堂々隠居しても何の問題もないと」


 ルーン=ルナティックは紅茶を飲み、おかわりを注ぎながら告げる。


「そういう事。実際に、私の英雄パーティーにも居たからね。のんびりと人避けの呪いかけてある森で隠居生活送ってる奴」


「・・・・・・羨ましいな、それ」


 レクスルはフーヤの顔をまじまじと見つめる。


「フーヤ、本当にいいのか?勇者パーティーに参加するのはとても目立つ事だと思うのだが」


「・・・確かに、危うく騙されるところだった」


「いや、騙そうとしてないから!じゃあ、聞くけども私の英雄パーティーに参加していた人物の名前全員言える?」


 慌てたようにそう聞いてくるルーン=ルナティックを見て、フーヤとレクスルは顔を見合わせる。


「・・・知らない」


「俺は名前は知らないが通り名なら知っている奴も居る。それでも、全員ではないが」


「何人居るの?」


 首をかしげるフーヤ。


「七人だよ。まあ、通り名自体有るけれど実質無いような奴も混じってるから知らないのも仕方ないと思う」


 ルーン=ルナティックは苦笑交じりに言う。

 確かに、何故かルーン=ルナティック以外の名前はあまり世間に浸透している様子がない。


「まあ、私が目立ちまくる事で他に目がいかないようにコントロールしてたからね。まあ、一部の目立ちたがりは通り名が有名になってるけど、そのお陰でますます目立ちたくないと思ってる人が目だたなくなってるし」


「つまり、レクスルが目立ちまくれば僕は目立たなくなると」


「そうなるね」


「ちょっと待て、俺が目立つのは決定事項なのか?」


 思いの外大きな声をあげたレクスルに少し驚きつつも、手を合わせて拝むような姿勢を取るフーヤ。


「まあ、そこは僕を助けると思って。それに、勇者が目立たないなんてあり得ないと思うよ?」


「ふむ、という事はフーヤくんはレクスルくんに同行する事を了承してくれると」


「・・・・・・レクスルを一人で行かせるわけにはいかないから」


「・・・フーヤくんって、前から思ってたけどツン──」


 風を纏った短剣が飛び、ルーン=ルナティックの横を髪の毛一本程の距離をかすり、壁に突き刺さる。


「次は当てる」


「一寸、フーヤ。流石にこれは良くないぞ。謝れ」


 胸ぐらこそ掴んだりしていないものの、そのくらいの気迫でフーヤに迫るレクスル。


「いやー、怖い、怖い・・・というか、『次は当てる』って人生で死ぬまでに言ってみたい台詞に入る奴じゃん!私もまだ使った事ないのに!ずるい!」


「え、そこ?」


 短剣を投げた本人が拍子抜けするくらいルーン=ルナティックは飄々と笑顔を絶やさない。


「とりあえずこの話は校長にも通しておくから、それと特訓も」


「「特訓?」」


 フーヤとレクスルの声が重なった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ