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転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
14/92

13.襲撃④

明日は忙しくなりそうなので、今投稿させて頂きます。


 フーヤは塔の近くまでくると、茂みに身を隠す。

 レクスルもフーヤに引っ張られて隣に屈み込む。

 二人の目の前には、六人居る黒ローブの奴らに一人の紫の眼鏡に服は茶色いものだけを身に纏った人物。


「あれって、ミインズ先生だよな」


 レクスルが小声でつぶやく。

 ミインズ先生はこの魔法学校の教師の一人で、主に基礎教養として歴史を担当している。

 ただ、評判はなかなかに悪い。

 女子、それも一部のお気に入りのみに高評価を与える事で有名で、なんなら同じ教師の立場に居る者たちですら邪険に扱われていたりするらしい。


「此処か?」


「嗚呼、守護結界はこの中だ」


 ミインズ先生はあっさりと『破壊の翼』の構成員に情報を告げる。

 特に拘束されている様子も武器等で脅されている様子も無く、自主的に協力しているように見える。

 だが、断定は出来ない。

 もしも内通者では無いとしたら、手にかける事は出来ない。

 報酬の本への道のりが途絶える。

 となれば、フーヤが取るべき道はひとつ。

 ガサリと大袈裟なほどの音を立てて姿を現す。


「見られましたか、消しましょう。迂闊でしたね」


 一瞬にして状況を把握したらしいミインズ先生はそう指示を出す。

 黒ローブの奴らが一斉に此方に短剣を構えて近づいてくる。


「・・・内通者か」


 ぼそりとつぶやきつつも、身構える。

 指示を出している所から推測出来るようにそこそこ上の立場に居る者だろう。


「名前は生憎覚えていませんが、まあ構わないでしょう。生徒の一人や二人居なくなったところでどうとでもなります」


 その言葉と同時に襲いかかられる。

 が、あっけなく奴らはフーヤの放った風魔法の刃に頭を刈り取られて絶命した。

 そして、フーヤが魔法を放ったのとほぼ同時にレクスルはミインズ先生の背後をとり、手刀を首筋に叩きこんでいた。

 油断しまくっていたのもあるが、魔法しか能の無いミインズ先生にはそれで充分だったようであっけなく気絶している。


「気絶させるだけか?」


 フーヤは特に何かレクスルに指示をしていたという訳ではなく、単にフーヤの狙いが分かったレクスルが動きを合わせてきただけである。

 つまり、気絶させるだけで殺しはしないと判断したのはレクスルという事になる。


「指示役みたいだったからな。色々聞き出す人員も残しておいた方がいいんじゃないか?それ以前に、仮にも教師だからな。内通者ではなく、巻き込まれて死んだだけと思われるのも何となく嫌だ」


「確かに」


 そうなってしまったら釈然としない事は確かである。


「それにしても、今更ではあるけど。何ともないんだな」


「何が?」


 首を傾げるフーヤに言いにくそうにレクスルは小声で言う。


「人を殺しても、いつもと様子変わらないみたいだからな。これまで、騎士団の奴らが初めて人を殺した時に吐く奴とか怯える奴とか青ざめて食欲失くす奴とか散々見てきたものだから」


「・・・・・・そう言うレクスルは?」


 そっぽ向くフーヤにこれ以上は踏み込めないと感じ取ったのか、レクスルは苦笑いしつつも質問に答える。


「まあ、これまで暗殺者とか送り込まれてきたことあるし、色々とな」


「そっか・・・『解放』」


 フーヤは地図を表示する。

『破壊の翼』の構成員の数はだいぶ減っていた。

 試しに既に動けなくなっている者を色の濃淡を薄くする事で分けてみると、動ける者は殆ど居ない。

 そして、動ける者の残りは皆一様にこの場所に──塔に向かって来る。


「・・・つまり、敵はこちらに向かっているって事か?」


 地図をのぞきつつ、レクスルはそうつぶやく。

 フーヤはレクスルに表示について詳しく教えた事はないはずだが、だいたいのところは理解出来たようである。


「要するに、向かって来る全員を倒せばいい」


「・・・フーヤって、前々から時々思ってたけど案外脳筋だよな」


「有効な手の内で簡単な方を選んでいるだけ」


 端から見ると呑気な様にしか見えない会話をしている内に、二人は囲まれていた。

 数は三十人前後といったところで、短剣を構える者や魔法の詠唱を始める者、弓矢をつがえる者などが居た。

 人数差は圧倒的である。

 しかし、先制攻撃としてフーヤが無詠唱で炎を遠くに居る者たちの所へ叩きつけた事により敵側に混乱が生じていた。

 会話をしつつも、近づいて来ている事を把握していたための行動である。


「・・・えげつないな」


 顔が炎で焼かれた男を切り伏せながらつぶやくレクスル。

 火傷がかなり痛々しく、仮面も完全に地面に落ちてしまっている。


「変に手加減する必要はないと思う」


「それもそうなんだが・・・・・・とりあえず、次使う時は場所を考えてくれ。木が結構燃えてしまってるから」


「・・・善処する」


 フーヤは魔法で炎が広がってしまっている一帯に雨を降らせる。

 消火させるために降らせてはいるが唯の雨などでなく、人間に当たると塩酸でもかけられたかのように皮膚が爛れる効果がある。

 さらに、何もせずに放置しておくと範囲が広がりながら徐々に腐り落ちるので、魔法で何かしらの措置をとるか範囲が広がる前に切り落としておく必要がある。

 一応、安全のために一分経てばただの水になるようにしてあるし、風魔法でフーヤとレクスルにはかからないようにしてある。


「フーヤの善処するは考慮してくれない時・・・というか、このやり取り物凄く最近やった気が」


 普通に会話している中でもフーヤとレクスルは攻撃の手を緩める事はなかった。

 レクスルに切り捨てられた者は血を流して地面に転がり、フーヤに魔法で攻撃を加えられた者は火傷を負ったり皮膚が爛れたりといった無惨な姿で地に伏していた。

 フーヤは普段は手を抜いているだけであり、レクスルは筆記が壊滅的なだけであるため二人の実力は本物である。

 手加減をしなければ、数十人程度は相手をする事が出来る。

 最も相手が強者であれば話は別であるが、存外『破壊の翼』の構成員の実力は低かった。


「・・・終わったか?」


「終わった」


 フーヤは『万能感知』で敵を全て倒した事を確認すると一息つく。

 レクスルも額の汗を拭いつつ、血で汚れた剣を布で拭いた後で鞘に収める。


「久しぶりに剣を使ったが、勘が鈍ってなくて助かった」


「レクスルは───」


「やあ、もう終わった感じなのかな?」


 その時、空から声が降ってきた。


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