11.襲撃②
明日は忙しくなりそうなので、今投稿させて頂きます。
フーヤは感覚を研ぎ澄ませる。
これから使おうとしているのは、詠唱が存在しない魔法。
頭の中のイメージを魔法として具現化する。
当然、その魔法が使われた前例などないし、イメージを固める支えとなる詠唱もない。
つまり、新しい魔法という訳でもある。
ぶっちゃけると、イメージ自体は前世の日本で育ったことにより簡単に出来る。
そして、魔力云々に関しては『魔力無限』と『魔力制御補助』により何の問題もない。
イメージするのは、体内を流れる血液。
その血液が凍りつく様子を想像する。
血液の氷の結晶として固まり、身体を貫く様子を思い浮かべる。
「フーヤ、大丈夫なのか?」
レクスルがフーヤの魔力の流れを見てつぶやく。
魔力の流れなんてものを見る事が出来る人間というのはそうそう居ない。
フーヤすら他の人の魔力の流れなんて、なんとなく感じとれる時もあるかなくらいである。
普通は感じとるなんて芸当出来はしない。
もしかしたら、そういったな特殊な素質なども勇者には必要なのかもしれない。
そんなレクスルが見ている魔力の流れはこれまでに見たことがないものだった。
制御されている魔力の量が尋常ではないのもあるが、うねるような魔力の渦とも言えるそれは不思議な心地がしてくる。
フーヤは目を閉じると、魔法を発動した。
ザシュ!
奇妙な音をたてながら、仮面の者たちは紅き結晶に貫かれて絶命する。
全員が死に絶えてしまい、結果として人質は助かった。
人質に危害が加わらないように配慮はしたが、多少血液は飛び散ってしまったのでトラウマになっているかもしれない。
実際、声も出ないようでへたりと座りこんでいる。
そして、突然の事に驚いているのは他の人も同様らしく人質をとっていた犯人が居なくなったのに物音一つしない。
まあ、この反応も当たり前だろう。
ここに居る者はほとんどが貴族身分である。
恐らく動物の屍体すらまともに見たことがある者は少ないだろうし、見たことがある者であったとしても人の屍体は流石に見たことないであろう。
それに、フーヤ自身は然程気にしていないが、血の結晶に貫かれて絶命した様子はなかなかに残酷である。
「死んだ、のか?」
誰かがそうつぶやいたのを皮切りに、教室はざわめきに包まれる。
今更ながらに悲鳴を上げて喚く女子たちが煩わしい。
すっかり腰の引けている者が幾人も見られる。
「レクスル、行くぞ」
フーヤ、レクスルの袖を引っ張る。
目立たぬように魔法で気配を薄めつつ、廊下に出ると扉を閉める。
そして、扉の隙間に沿うように魔法で水を流すとそれを凍らせる。
簡易的ではあるが、扉を開かないようにしたのだ。
「フーヤ、本当に他の方法は無かったんだな?」
「人質が死んでもいいなら生け捕りも出来たけど」
悪人どもの命と罪を犯していない女子生徒の命。
所謂トロッコ問題だが、この場合悪人を選ぶのは少数派だろう。
本音を言うのであれば、あの女子は確か陰でレクスルの悪口を言っていた記憶があるので助けなくても構わないかなとも一瞬思ったが、本の魅力には抗えなかった。
「それで、わざわざ教室の外に出て何をする気だ?」
レクスルの探るような視線を受けつつも、フーヤは普段は使わない『万能感知』の機能を呼び覚ますための言葉を紡ぐ。
「・・・『解放』」
フーヤはこの学校の地図を表示すると『破壊の翼』の構成員を赤点、生徒を青点、教師を黄点で表示するように設定をいじる。
ちなみに、設定をいじらなければ人は黒点で表される。
設定し終わった地図を見て、フーヤは顔をしかめる。
人数が多すぎる。
「これ、何をどう表示しているんだ?」
フーヤの能力として、一度見たことあるレクスルは地図を覗き込むと首を傾げる。
「レクスル、『破壊の翼』という組織を知ってるか?」
「・・・確か、魔王崇拝組織とかいう胡散臭い連中の事か?たまに拠点にしてるらしいバイスレコード公国で爆破事件起こしてる奴ら」
フーヤも知らない情報を出しつつ、レクスルは地図を凝視する。
「よく知ってるな」
「これでも一応王族だからな。普通の貴族だとあまり知らないような内容も知らされる」
「それで、その『破壊の翼』とやらが今回の襲撃の犯人。ちなみに、赤い点が表してる」
「いや多いな。というか、本当に『破壊の翼』なのか?魔王とか御伽噺の中の存在を信仰してるような奴らだぞ?まあ、たまに起こす爆破事件で時折死者が出るから厄介だが、ここまで大きな事件を起こした事は無かったはずだ」
レクスルも魔王とかの存在は信じていないらしく、疑惑の視線を向けてくる。
フーヤはこの頭の回転力が勉強に生きればななどど考えつつも、レクスルを見る。
「・・・魔王も勇者も御伽噺ではなく、実際に存在するみたい。魔王が降臨する前に勇者を殺してしまうのが目的らしい」
「・・・そうなのか?初めて聞いたが」
「ルーン=ルナティックから聞いた」
「なら、本当だな」
一瞬にして疑惑の視線が霧散するレクスル。
いくらなんでも盲目過ぎるのではとフーヤは思うが、都合がいいので特に何も言わなかった。
「それで、フーヤ。どうするつもりだ?」
何も言わずとも協力するつもりらしいレクスルは、鋭い目付きでフーヤに問いかける。
「目的としては、生徒の安全確保と守護結界を守る事」
それと、レクスルを守る事。
心の中でフーヤがそうつぶやいているとは露知らず、レクスルは真面目な表情で話を続ける。
「守護結界?」
「壊されると不味いという事しか知らされてない」
「場所は?」
「生徒立ち入り禁止の搭にあるらしい。具体的な場所は教えてもらっていない」
「それで?何か作戦でもあるのか?」
「順に潰す」
「フーヤ、それは作戦とは呼ばない」
「でも、付き合ってくれるんだよね?」
フーヤの言葉にうなずくレクスル。
「なら、話は早い」
フーヤは『封印』とつぶやいて地図を消すと、剣を『異空間収納』から取り出してレクスルに渡す。
剣が扱えるのであれば、詠唱しないと発動出来ない魔法よりもこういった場面では役に立つ。
「フーヤ、これ何処から出した!?」
「話は後。行くよ」
フーヤは『異空間収納』から灰色のローブを取り出してはおり、レクスルにも同じ物を差し出す。
「まずは、生徒を人質にとっている奴らを一掃しないと」




