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転生者は能力を隠したままで隠居生活を目指したい!  作者: 虹夢 なうみ
魔法学校編
11/92

10.襲撃①

明日は忙しくなる予定なので今投稿させて頂きます。


「それで、フーヤ。また、本手に入れてきたのか?」


 レクスルが教室の席について一心不乱に本を読んでいるフーヤに話しかける。


「そうだね」


 フーヤは答えつつも、視線は本の文字を追いかけ続ける。


「暇なんだが、あと出来るならルーン=ルナティック様に会わせて欲しい」


 レクスルにはルーン=ルナティックは偶々昔知り合った仲であり、読みたかった本を融通してもらっていると説明してある。

 つまり、フーヤが約束を取り付ければレクスルは憧れのルーン=ルナティックに会えるということになる。


「駄目」


 最も、フーヤが説明しているルーン=ルナティックと仲良くなった経緯はでたらめである上にフーヤにはレクスルを会わせる気など毛頭なかった。

 理由としてはうっすらと嫌な予感がするのとぽろりとヲタ女神とレクスルの前で呼んでしまうのは嫌だなと思ったからであり、たいした理由とは言えないが。


「フーヤ、せめて理由くらい教えて欲しいんだが」


「・・・辞めておいた方がいいと思う、たぶん」


「たぶんって、お前な・・・」


 そう言いつつも、本気で怒る様子がないレクスルはフーヤの隣の席に腰掛ける。


「ところで、その本に書かれてる文字。前々から気になってたけど見覚えの無い文字だよな。なんていう文字なんだ?」


「・・・教えない」


 レクスルは筆記試験は壊滅的であるが、頭の回転は早く、要領は良い。

 更に一応王家の英才教育を一通り受けているため普通の生徒よりも多くの知識があるはずであり、その片鱗は様々な言語を習得している事からも伺える。

 フーヤとしては、逆に何故筆記試験が出来ないのかと疑問が出るくらいの実力があるのだ。

 要するに、よっぽど少数民族が使う文字であるとか特殊な儀式の際にしか用いないとかでもない限り知らない文字はない。


「見覚えのない文字だが、フーヤは読めるのか?」


「・・・・・・あまり詮索しないでくれると助かる」


 本に浮かれてて迂闊だったなとフーヤは心の中で悪態をつく。

 迂闊なのはレクスルの前でおもいっきり日本語で書かれた本を読んでいたことだけではない。

『万能感知』が働く。


「レクスル」


 フーヤは本を閉じると立ち上がる。

 そして、窓の近くに居たレクスルを引き寄せた。

 次の瞬間。

 バリンと音を立てて窓が割れる。

 なお、この世界のガラスは魔法で精製された特別性なので単なる事故などで割れることはない。


「キャァーーーーーーーーーー!!!!!」


 女子のかん高い悲鳴が響き渡る。

 悲鳴を上げた女子は、黒のローブに不気味な白ののっぺりとした仮面をつけたいかにもな人物に捕まっていた。

 腕で首元をしっかりと拘束され、喉元に黒塗りの短剣を突き付けられている。

 フーヤの『万能感知』に引っ掛かっていたのはこいつらのようだ。


「動くなぁ!!!」


 野太い声に、混乱状態だった生徒が静まりかえる。

 そして、生徒たちの動きが止まる。

 正確には人質が居ると気付き、迂闊に動けなくなったといったところだ。

 間の悪いことに、職員会議ということでこの場に教師は居ない。

 いつの間にか、黒のローブに仮面の集団が人質を抱える人物の近くに居る。

 数は人質を抱えている人物を含めて八人。

 ちなみに『万能感知』によると、別に外にもお仲間と思われる人物が十人ほど。

 更に、他の教室でも似たような事が起こっているらしく、悲鳴が聞こえてくる。

『万能感知』も感じとれる範囲は決まっているので全員で何人いるのかは分からない。

 あの時咄嗟にレクスルを引き寄せたのは懸命な判断だったと言えるだろう。

 人質に選らばれてしまった女子はどうやら偶々窓の近くに居た程度の理由で選ばれただけのようだ。

 フーヤの脳裏にテロリストのようなものだよと言い放ったヲタ女神の顔がちらつく。

 ヲタ女神が言っていた『破壊の翼』は間違いなくこいつらだろう。

 ここまでいかにもな人物たちなのに違うなんて事は絶対無いはずである。


「・・・どうしようか」


 本がかかっている以上、人質を助けない選択肢は無い。

 しかし、フーヤにとっては目立たない事は最優先事項である。

 つまり、生徒が多く居る教室で目立たないように助け出す必要がある。


「・・・もしかして、助けるために動くつもりなのか?珍しく」


 レクスルがフーヤのつぶやきをしっかり拾ったらしく、小声でそう尋ねてくる。


「・・・目立たないようにすれば問題ないから」


 流石に本のためと告げるのは憚られたようで口ごもりつつ答えると、周りの様子をうかがう。

 混乱は残っているようだが、徐々に状況を理解した者が増えているようで動きを止めつつも仮面の奴らを睨みつけている。

 考えは各々違うだろうが、この状況を打破出来る実力の者はおそらく居ないであろう。

 フーヤとレクスル以外には。


「目立たないように、仮面の奴らをどうにかする方法があるのか?」


「・・・・・・方法はあるけど」


 殺すことになる。

 その言葉だけは、何故かフーヤの喉につっかえたように出てこなかった。

 ただ、言葉にしなくとも雰囲気で感じとったのかレクスルは硬い表情のまま人質と仮面の奴らを見据える。


「フーヤ、俺が奴らの注意を引く。だから、人質を助け出せないか?」


「駄目だ、絶対に」


 勇者云々を抜きにしても、レクスルを囮にするという危険な賭けに出るという考えは、フーヤには到底思いつかない行為である。

 しかし、自分を犠牲にしてでも誰かを助けたいと思う心意気は限りなくレクスルらしい。


「フーヤ、他に何か方法は無いのか?」


「・・・・・・全力で魔法を使えば人質だけなら助かる」


 他の方法は無いというその言葉を聞いてレクスルの瞳が揺れる。

 犯罪者だとしても、命は命。

 レクスルは命が喪われる事を悼む心を持っている。

 だが実は、それでいて悼みつつも必要であれば残酷なまでにあっさりと切り捨てる。

 とても優しく、優しいからこそ誰かを傷つけようとする者には容赦しない。

 そんなレクスルをフーヤは自分でも意外に思うくらい気に入っている。


「レクスル、人質だけ助けたら目立たないように廊下に出るからな」


 フーヤは深呼吸する。

 自分がこの魔法を使ったと悟られないように、かつ奴らの命を一瞬で刈り取れるように。


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