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犬の働き

作者: 雉白書屋

 朝、目を覚ました男は大きなあくびを一つ。

 そしてまた目を閉じた。

 二度寝。これが至福……とニヤついたところで


「ワン!」


 そばによってきた犬が腕をカプッ。散歩に連れて行けの合図だ。

 しぶしぶ男は起き上がり、早朝の散歩に出向く。

 帰ると朝ご飯を食べ、出社。これが犬を飼い始めてからの、いつもの流れだ。

 自分が望んだことだから仕方がない。


 そして、これもそう。

 仕事を終え、家に帰る頃にはもう、かなり夜が更けていた。今日は同僚とだいぶ飲んできたのだ。


「ただいま……」


 店を出て家に近づくにつれ、浮ついた気分は薄れ、ドアを開けた時には沈んだ顔。

 その理由。わかっていた。部屋は散らかり放題。決まった時間よりも遅くなるといつもこれなのだ。

 そして脛に犬の頭突きをくらう。これが罰と言うわけだ。今日は残業で……なんて酒臭い息で嘘を言おうものなら噛みつかれる。

 タバコを一服しようとすると親の敵のごとく箱を噛んでグシャグシャに。

 男はタバコの煙の代わりにため息を吐いて眠りにつく。


 と、そんな日が続く中の、いつもの早朝散歩。

 またあくび。やれやれ、こんなこともう……と、男が思っていると、目の前から同じように犬を散歩させている若い女性が。すると

 

「ワン!」

「ワン!」


 互いの犬同士が姿を確認するや否や駆け出し、二人はリードを引っ張られた。

 どうも、と挨拶する間もなく、二匹は二人の周りをグルグル回る。

 あっという間にリードが締め付けるように絡まりあい、二人は抱き合う形に。「す、すみませんっ」とお互い謝るも悪くない雰囲気。


 このように最新のロボット犬はただの遊び相手ではなく、主人の健康を気遣い、生活習慣を改善。さらにはロボット犬同士がデータ通信し、主人に最適の結婚相手を引き合わせるのだ。

 お互い、この犬の世話の苦労を知っている。いや、心の奥底で言わば、犬にしつけられていることがわかっているのだ。だから相手のことを信用。すぐに打ち解けることができる。

 販売台数はうなぎ上り。それに比例して、結婚率も上がっている。


 そして、結婚後は監視モードに移行し、夫の浮気を察知。未然に防ぐか妻に報告する。

 ロボット犬は実際の犬の多くがそうである様に、世話をする時間が長い者の味方なのである。

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― 新着の感想 ―
[一言]  なるほど!な相変わらず新鮮な視点ですね。最近増えたペットロボットの機能にホントにつきそうで、何か怖いっすね。面白かったです。ありがとうございました。
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