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成長


 エドは五歳になり健やかな子供へと成長していた。


 しかし、アドナとリュイの成長は遅く、まだまだ赤ん坊キメラのままだった。


 エドはキメラのレオンに育てられたが、前世の記憶があったため、人間としての最低限の暮らしをしていた。


 日本に暮らしていた時、狼に育てられた少女は狼の様に育ったと聞いたが、エドには人間としての記憶があったため、そうはなからなかった。


 朝起きたら顔を洗い、歯を原っぱに生えている硬い猫じゃらしの様な枝で磨く。

 服はレオンが時折森で他の獣に殺された人間の服をエドに与えた。

 少し大きい男性物が多かったが、そこは何とか紐で詰めて使った。



 このエド達が済んでいる森は、魔王の森と呼ばれていて人間が町を作り暮らす土地とはずいぶん離れた場所だと言う。


 以前はこの先十キロほど行った先にある古城には魔王が君臨していた。


 エドを異世界へ連れて来たリンカ=ヤンカの話通り、少し前に魔王は勇者によって倒されたらしい。


 今やあるじの居ない古城。


 だが、その中に魔王の莫大な遺産が眠っていると噂があり、それを見つけるために冒険者が後を絶たないとレオンは言っていた。


 ――実はレオンも前魔王に仕えていたキメラだと言う。


 しかし、ちょうどアデナとリュイの出産時期と重なり古城を抜けてこの洞窟で出産準備をしていたおかげで命拾いをしたと聞く。

 レオンの夫、アデナとリュイの父親キメラは古城で勇者に殺されたらしい。


「――じゃあ、レオンは人間の僕の事、嫌いじゃないの?」


 エドが尋ねると、レオンはきょとんとした。


 (なぜ貴方を嫌うの?)


「だって、僕は勇者と同じ人間だよ?」


 (……貴方は私の夫を殺したの?)


 エドは首を振った。


 (貴方は……魔王様を殺した?)


 エドはさらに強く首を振る。


 (そうでしょ? 貴方と勇者は違うでしょう?)


 エドはハッとする。


 確かに勇者と自分は同じ人間だけど、自分と勇者は違う生き物だ。


「でも、レオンが人間を食べないのは何故?」


 (夫が人の形をしていたからかしら。夫は頭は人で体が獣だったの。だから、夫と同じ形の生き物は食べられないわ。それに、エドは魔王様と同じ波打った黒髪を持っていた。私は貴方を見た時、魔王様の生まれ変わりだと思ったの)


 嬉しそうに微笑むレオンを見て、エドは苦笑いを浮かべる。


 転生の時に自分は魔王の生まれ変わりだと言われた。レオンにその真実を告げたら、驚かれるだろうか。



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