表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/17

第十一話 グレーモンの末路

「グラム」のオーナー、グレーモンが執務室で帳簿をつけていた。


「グラム」の規模は、ミリスを中心に周辺の十幾つの街にしか及んでいないが、その上役組織「金鳥商会」の影響力は絶大、それこそ、大国並の軍隊を持ち、何国かからは、特権として〝平民を奴隷にする権利〟まで与えられている。

無論、それほどの組織が扱う金額は相当、グレーモンの帳簿にも日に五桁(百万円以上)の利益が出ているところも目立った。


「グレーモン、入るぞ」

部屋の外から声がかかり、グレーモンは帳簿の上で羽ペンを走らせるのを止め立ち上がった。

「どうぞ、お入りください」


ドアが開き、金と赤の法被を羽織った東風の服を着た男が顔を表した。

全体的に太っていて、顔がむくんでいる。


金鶏のワルプス

「金鳥商会」の最高幹部、三鳥の一人だ。


だが、どこか様子がおかしく、普段は陽気なワルプスが何も言わず、グレーモンは不気味さに襲われた。


「これは、ワルプス様、何事で……」


カンッ。


ワルプスの投げた扇子がグレーモンの額に当たり、血が垂れる。

グレーモンは、とっさのことに、何が起きたのか理解できなかった。


ワルプスは、グレーモンを一瞥し、ため息をつく。

「察しの悪い男め。今日で、グラムを解体する」

「ハッ?」


ワルプスは、それだけ言うと、呆けるグレーモンに背を向け、部屋を後にした。


呆けていたグレーモンも、とっさに追いかけようとするが、入れ替わりに入ってきた魔導士に突き飛ばされ、尻もちをついた。

倒れた際に頭を机の角にぶつけ、激痛が走る。


それでも、ワルプスを追おうと立ち上がり――。


「貴様!っう……」

グレーモンは魔導士を怒鳴りつけ、その正体に気付き、再び尻もちをついた。

魔導士だと思ったそれは、白いローブをかぶった、通称――奴隷ノ番人どれいのばんにん

四人目の最高幹部とさえ言われ、国家から唯一、奴隷印を押すことを認められた男だ。


「奴隷ノ番人……」

グレーモンも、遠目に見たことはあったが、実際に面と向かったのは初めてだった。

金鳥商会の奴隷牢を訪れた際、嫌がる奴隷に無理やり奴隷印を押していた姿が思い出される。


杖が振り上げられ、奴隷ノ番人が詠唱を始める。

奴隷化の儀式、あれが終われば、生きることさえ苦痛に感じる底辺へと墜落させられる。

これまで、兄と十余年をかけ築いてきた地位も富も、人権も、失うことになる。


「これは、遊びじゃねぇんだ。冷酷になれ。奪われたくなければ、奪え。欲しいものはそうやって手に入れろ。何かを守りたければそうしろ」

三公の上に立つ者、奴隷商会、総帥。

幼いころ、親に売り払われ、ひょんなことから奴隷商会、総帥に呼び出され、兄と共に受けた罵声を思い出す。


彼は、それ以来、奪うことで大切なものを守ってきた。

ある日はギルドを破壊し、ある日は奴隷狩りをした。

また、ある日は……。


その末路が、これだ。

確かに、泥水を啜る日々を脱却し、領主を片手であしらえるまでになり、自分たちを売った親に復讐を果たした。


「あの魔導士だけは、助けてやってくれ」


何故、そんな言葉が出たのか、自分でもわからなかった。

だが――。


やり直そう。

奴隷から。

前とは違う方法で。

兄と共に――。


グレーモンが血を吐いた。

そして、グレーモンは初めて気づいた。


これは、奴隷印を押す魔法ではなかったのだと。

両腕に蛇の入れ墨が現れ、そこから徐々に体が解け始める。


「蛇毒」

詠唱が終わるやいなや、部屋にグレーモンの絶叫が響く。



◆◇◆◇◆◇◆



しばらくがたち、部屋から出てきた奴隷ノ番人へ、廊下で待っていたワルプスが問いかけた。

「殺したのか?」

それに、奴隷ノ番人は機械的な声で答える。

「やるなら徹底的にやる。奴は根が甘すぎた」

「まったくだな」


二人は、グレーモンの死体に背を向け、その場を去って行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ