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ここに離婚することになった夫婦がいる。
話し合いの中で財産分与についてのことになった。
すると夫が貯蓄が少ないと言い、相談にしにきたのであった。
「少ない、ですか」
「そうです!二千万近くの退職金もあったはずなのに、共有財産が貯蓄含めて五百ないなんておかしい!」
そう、確かにおかしい。
この男性は会社員で堅実な働きで出世コースに乗っていたわけではないがそれなりの給与はもらっていた。子供も二人いたものの暮らしぶりは派手ではなく、きちんと貯金はできていたのではないかとも考えられた。退職金をもらい、給与が下がるものの会社に再雇用されている。そんな人物の貯金が五百万いかないというのは。
「妻がどこかに隠しているのでは?」
そんなことを考えてしまうのは至極当然のことのように思われた。