夢の終わり
シーザー編ようやく簡潔です。
これ、本当は簀巻きの下りから2話くらいでやる予定だったのにどうしてこうなったのか……。
いつも感想、励ましをくださる皆さんありがとうございます。
今話は諸事情により質問等の返信ができません。でも感想は確認するので良ければご感想お願いします!
文章がクドイとか読みにくい等ありましたら聞かせていただければ幸いです。未だに文章が安定していないので……。
それでは本編どうぞ
さてさて皆さまお立合い。幸せな夢を見ている少年に変わりまして不肖ながらも語り部を務めさて頂きたくそうろうでございます。
自分の夢を語らせるなんて無粋というもの。ならばこの私が見事に代打を務めてしんぜましょう!
え、それがしが誰かと問われるのですか? いやいや皆さま、語り部に名乗らせるとか、それこそ無粋が過ぎるではあーりませんかぁ? お気になさらず僕はただの語り部ですよ。
雑談はこれくらいで少年の幸せな夢を見てみましょう!
ルルルル~ララララ~♪
夢見るシーザーくん。夢の中は幸せがいっぱい。幸せな夢には笑顔がいっぱい。不安なんてありません。
「待ちなさいシーザー‼ どうしてしまったの!? 貴方の行いは――」
おやおや?
怖い女王様が怒っています。どうしたのでしょう? カルシウムが足りないのでしょうか?
でも大丈夫。何せこれは幸せな夢の中。怖い事なんてありません。
ほら見てください。少年もまったく気にしていません。
これまではビクビク震えていた女王様に怒られてもへっちゃらです。
信じる信仰ができたのでしょうか。誰に何を言われても彼の心は揺るぎません。
「シーザーは何も悪くないわ」
不思議の国のアリスちゃん。
頭をいい子いい子撫でています。幸せそうです。皆みんな笑顔です。
「ええそうです、アリスの言う通り私は何も悪くない」
夢見る少年はアリスちゃんが大好きです。人を愛する事は素晴らしい!
恋する男は盲目です。アリスちゃんの為なら例え火の中水の中あの子のスカートの中にでも喜んで飛び込みます!
守ってくれる。教えてくれる。導いてくれる。褒めてくれる。認めてくれる。何も考えず何も思わずただただアリスちゃんの言う通り動く姿はまるで糸で操られる人形の様です。
そうだ! 人形劇を始めましょう。
タノシイタノシイニンギョウゲキ。ミンナモイッショニオドリマショウ! イチニノサンハイ!
「いいこ、いいこ私のシーザー。私と踊りましょう、ずーとずっと一緒に踊りましょ?」
「はい、私はアリスと踊ります。貴方と共にずーとずっと」
幸せのワルツを踊りましょう。
クルクルクル。ララララ~ルルルル~♪
楽しい楽しい人形劇。
でも、人形が2つだけでは寂しいです。しょんぼりです。そうだ、もっとたくさんの人形で遊びましょう!
おやおや? 丁度いい所に王子様がやってきました! 人形劇には王子様が必須です。流石は幸せな夢の中。ご都合主義バンザイ!
「内密で相談があるんだ」
「どうかされたのですか殿下?」
「実は最近になって妙な噂が流れているようなんだ。イザベラがとある女生徒を虐めていると。真実がどうかはまだ分からないのだが……」
「もしその噂が真実なら殿下はどうされるのですか?」
「当然説得をするし改心をしてほしいと願っている。僕と彼女は婚約者でありこれから先も長い時を共に過ごすのだから」
「なるほど。わかりました、私にお任せください」
「ああ、ありがとう。頼りにしているよシーザー、くれぐれも内密に頼む。できれば最小限で食い止めたい」
王子様は笑顔で去っていきます。
友情とはいいものですね。
さぁ、王子様に相談されたシーザーくん。行動開始です。
まずは何を置いてもアリスちゃんに報告だ! ホウレンソウは大事なのです。鉄分が不足すると健康に悪いのです!
シーザーくんは上手に報告できるかな~?
「アハハハハハハハッ!」
話を聞いたアリスちゃん。ご機嫌に嗤っています。
良かった~どうやらシーザーくんはミッションをコンプリートしたようです。
笑顔のアリスちゃんを見ているシーザーくんも笑顔です。
幸せな夢には笑顔がいっぱい!
「ねぇシーザー? 一生懸命頑張っている貴方が認められないなんて理不尽だと思わない? だから、貴方の努力を認めない人たちに思い知らせてあげましょう」
笑い終えたアリスちゃん。とてもとても、いい笑顔です。笑ってる子供も泣き出しそうないい笑顔です! こういう笑い方をする子供は碌な大人になれないでしょう。
でも心配はいりません。何せここは幸せな夢の中。夢から覚めない限り大人になんてなりません。
御長寿アニメみたいに年なんて取らないのです。
「僕は何をすればいいですか?」
「噂を流してほしいの。とてもとても酷い噂よ? やってくれるシーザー?」
「わかりました。それが貴方の望みなら」
風に乗って口から口へ。噂はどんどん流れていきます。
女王様は今日も不機嫌です。手下の兵隊を使って噂の根本をひっこ抜こうとやっきになっています。
シーザーくんも兵隊さんに混じって頑張っています。頑張ってバレないように噂をばら撒いています。
人の口に戸は立てられないのです。
女の子のやっかみとイケメンはこういう時に便利です。
ルルルル~ララララ~♪
王子様は嘆いています。とても悲しそうです。これはいけませんね。幸せな夢の中にそんな顔は似合いません。
どうしましょう?
「まさか噂が本当だというのか? ……イザベラがそのような事をするとは今でも信じられない」
「私も残念です。弱者を虐げ残忍に嗤っている姿を目撃したという生徒もいるようです」
「なんという事だ……」
そうだ! いい事を思いつきました。辛気臭い王子様にも幸せな夢の中を見てもらいましょう!
「殿下、とにかくまずは被害者から直接話を聞くのはどうでしょうか?」
「被害者というと……」
「私の調査の結果では、以前殿下が馬車に同乗した男爵令嬢です。名はアリス・カータレット。言い難いのですが、どうやら義姉上がその情報を知り殿下と彼女の仲を勘ぐっているのではないかと」
「な!? 僕はその様な不誠実な事は……」
「わかっています。けれど、それはあくまで我々から見た話です。義姉上がどのように考えているのかは分かりません。それを踏まえて一度被害者と面談をいたしましょう。誰にも見つからないように場の手配はお任せください」
「……そうだな。もしそれが本当なら僕の軽はずみな行動でその女性を傷つけてしまったことになる」
王子様も幸せな夢の住人になりました。
アリスちゃんと王子様はとっても仲良しです。シーザーくんはそんなアリスちゃんを見て幸せです。
大好きな人の幸せを願えるなんてすばらしい事ですね!
人形は揃いました。舞台は整いました。演目を開始しましょう。
みんな緊張してるかな?
「イザベラ……君には失望したよ。まさか僕の婚約者ともあろう立場有る者が――」
無粋な大人が邪魔をしようとします。でも大丈夫。魔法をかけてあげましょう。誰にも邪魔をされないように。
みんなの為の楽しい人形劇はクライマックスです!
悪い女王様は王子様とアリスちゃんに負けました。赤いナイトさんが退場させました。
王子様とアリスちゃんは笑顔で踊っています。
「これで公爵も責任を取る事になるでしょう。後は私が新たな宰相となり王家とローズフィードを結びつける。これで皆を見返せる。全てはアリスの言った通りだ」
シーザーくんも笑顔です。良かったですね。
頑張った皆に拍手を送りましょう! パチパチパチパチ。
おや?
これはいけません。拍手をしていたらうっかり魔法が解けてしまいました。
「なんで私が取り押さえられなければならない!?」
おやおや?
「簀巻きにするなんてどういうつもりだ!? こんなことは許されるはず――ぶはッ!?」
おやおやおや?
「うー! うー! うーー!!」
おやおやおやおや?
大変ですシーザーくんが大ピンチです。
幸せな夢には不幸は似合いません。でも大丈夫。
ほら、時計を見てください。そろそろ夢から覚める時間です。幸せな夢は守られます。
「そこの不出来ものについて罪に問う事はしない。けれど、養子を輩出した家としてこれまで優遇してきた公共事業や減税の一切は撤退する。よいな男爵」
「お待ちください公爵様!? それでは我が領地が滅んでしまいます!」
現実の世界は大変ですね。
小太りの男が死神みたいな顔をした男と睨み合っています。まるで地獄絵図です。もう少し映えを意識した方がいいのです。
「これは領主としての決定事項だ」
「皆様からも公爵様にどうか口利きを! このままでは我が領は滅んでしまいます!」
「……」
小太りの男が助けを求めても誰も相手をしません。
相当嫌われているのでしょうか? 日ごろの行いが悪のでしょうか?
「ッ……お前の、お前のせいだー!」
「ぐぅッッ!?」
「お前のせいだお前のせいだお前のせいだ! この出来損ない! 役立たず!」
顔を真っ赤にさせた男は何かを凄い勢いで殴っています。蹴っています。乱暴です。よく見たら殴っているそれはぐるぐる巻きにされてるシーザーくんではありませんか。
そんな所で何をしているのでしょう。
新手のかくれんぼでしょうか?
夢から覚めているのにまだシーザーくんは寝ぼけているようです。
「お前なんて生まれ来なければよかったんだ! 死んでしまえ!!」
ララララ~ルルルル~♪
「ここが貴方に与えられた家です。我々は外で見張りをしています」
「……」
自然豊かなどこかの村にシーザーくんはお引越ししてきました。
汚いです。臭いです。
新しいお家はボロボロです。シーザーくんもボロボロです。
汚いです。臭いです。
「……」
お家の外は雑草だらけ。虫がブンブン飛んでいて邪魔そうです。
建付けも悪いみたい。
何もする事がなくてシーザーくんは1日中ボーとしています。
ぐぅぅぅ……
なんの音でしょう? 遠くでドラゴンがあくびをしているのかな?
「腹が……減った」
シーザーくんのお腹の音みたいです。
がさがさがさ、ごそごそごそ。
ボロボロのお部屋を探していると野菜と小麦粉が出てきました。
誰かが用意してくれたのでしょう。顔に似合わず優しい事です。
「……」
ぼりぼりぼり。
生野菜を齧るシーザーくん。歯が丈夫で良かったですね。
「……このままじゃいけない。どうにかしてアリスの元に帰らなくては」
シーザーくんは逃げ出しました。
暗くて狭い森の中を走っています。
「はぁはぁはぁ……」
でもでも体力がないからすぐにばててしまいます。
「ギャギャッ」
「な! 魔物!?」
高い木の上から猫のような動物が襲ってきました。
どうやらこの森の中には恐ろしい魔物がいるようです。
「くっ、僕は、僕はアリスの元に帰るんだ!!」
「ごぎゃ!?」
シーザーくんの掌から水が出てきて魔物を撃退しました。
でも、襲われたシーザーくんも怪我をしています。よろよろと歩いたと思ったら倒れてしまいました。
「……ここは」
目が覚めるとシーザーくんはお家に帰っていました。
臭くて汚いマイホームです。
「貴方は裏山で倒れていた所を保護されました。傷の手当は済ませてあります」
「……何のつもりだ?」
「……」
「どうして僕を助けた? お前たちは公爵がつけた見張りのはずだ、それがどうして」
「これも我らの忠誠を示す為です。我々は公爵様から貴方の監視を命じられました。脱走を防げなかった事はこちらの落度です、二度と同じ隙は与えません。もし、貴方を逃がしてしまえば……我々の一族は今度こそ滅んでしまいます」
残念です。シーザーくんは逃げられません。流刑地の監視が強化されてしまいました。
「どうして……」
シーザーくんは泣いています。
「どうして、こうなった……?」
わんわんと泣いています。誰も助けてくれません。寂しそうです。
でも仕方がないですね。
何せ幸せな夢を見る様な人間の現実ナンテタイテイガクソナノデスカラ。
アハ、アハハハハハハハアハハハハハハハハハギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアハハハハハハハハハハッハハハハハアハハハハハハッハギャアアアアアハハハハハハハハハアハハハハハハアアハハハハハハハハハハギャアアアアアアアアアアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハッハハハハハハハハッハッハハハッハハハッハッハア!