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NTR嫌いの異世界勇者〜ユニークスキルが魅了とかやめてください〜  作者: りくしろう
第一章 ミクラーシュ王国
8/24

第八話 涙。

11/25 エデンヘイトについての説明が抜けていました。大変に申し訳ありません。



あらすじ

ベルきゅんは男の娘。

繰り返すベルきゅんは男の娘。


城内は一時騒然となった。



次期国王であるベル公爵令息が勇者パーティに()()()で志願したこと。



勇者がその要望に()()()応えたこと。










ミクラーシュ王国には『奴隷が主人に対し自らの命を喜んで差し出す』という意味合いの挨拶がある。


日本では土下座と言われているもの―――



―――無条件平伏(エデンヘイト)





今はまだ一介の貴族ではあるが次期国王に内定しているノイトラ公爵令息がそう安安としていいものではない。がしかし、それ程の覚悟で今回の旅に同行したいという熱望は国王含めその場にいた全員が理解していた。


そして、更に驚いたことになんと勇者がノイトラ公爵令息に対しエデンヘイトを行なったのだ。


互いに命を委ねる関係。


次期国王と勇者、それぞれが示したエデンヘイトは周囲には神々しく輝いて見えていた。



ベルとイツキのエデンヘイトは国王含めその場にいた全員の心に響き、ベルの勇者パーティへの同行は許された。



「………お兄ちゃんは私が守る」


フィジーは実の兄が同行することになりかなりテンションが上がっていると思われる?


何故疑問形なのかと言うとこの子感情が表情に出ないのだ。


さっきからふんすふんすと鼻を鳴らしてはいるが無表情な為、ちょっと怖い。


「ベルなら大丈夫だろう。小さい頃から剣技で私は勝った試しがないからな。」


アーデントは冷静に分析する。


なんでもお互い幼少期の頃から騎士団の訓練に混じって剣術の稽古に励んでいたらしい。


現在ベルの剣の腕前はミクラーシュ王国騎士団の隊長レベルと同等だそうで貴族の間では珍しく護衛を付けずに街へ出掛けるほどだという。


「お父様も内心嬉しそうでした。」


シャロップシャー王女は和かに笑ってはいるがその目には涙を浮かべている。


離れ離れになると思っていたのにこうして今は共に歩んでいけるのが嬉しいのだろう。


「ベル様が将来、国をより良い方向へ導く為にも勇者様と私達も一緒に頑張っていきます。」


そう言うと「ね、勇者様?」と俺に向けて微笑みをかける。


やめろ、ベルきゅんが闇堕ちするだろが!


「ああ、本当に勇者様には感謝しきれません、僕は我儘を言ってここに居させて頂いています。どうかこの命存分にお使いください。」


………重い、重いよベルきゅん。








とまあ、こうして五人の旅が始まるわけなんだが………





◇  ◇  ◇




(アウェー感ぱない)




仲良くお喋りしている四人とは数歩下がって距離を置いて歩いていた俺はひとり考えに耽る。


(俺はこの子達を傷つけないように守りながらこの先旅を続けなければならない)


魔王の配下と言われている魔物達から身を守るのもそうだが、今目の前にある彼等の仲睦じい雰囲気を俺は決して壊さないようにそして奪わないようにそう何度も何度も自分に言い聞かせる。



(俺はこの間に入ってはいけない。彼等の関係を壊してはいけない。)




何度も何度も言い聞かせる。


自分は主人公ではないのだから。






◇  ◇  ◇


城の門をくぐり城下街へとやってきた。


まずはこれからの旅に必要な日用品や武器、食糧などを買う予定だ。


俺は気を利かせて、「四人で行ってきたらどうだ?」と言うと「これからは仲間として一緒に旅をしていくんだから勇者様も一緒に行きましょう!」と言われた。





「本当にごめん。ひとりでどうしても行かないといけない場所があるんだ。後で合流するから先に行っててくれないか?」


俺は両手を合わせ申し訳なさそうに言うと、「わかりました。用事が終わったら来てくださいね。旅の主役は勇者様なんですから!」と渋々ではあるが了承してくれた。




もちろん、行かなければいけない場所なんて無い。




ただ俺はひとりになりたかっただけだ。






―――賑やかな城下街をひとり歩を進め、出来るだけ人のいない所へと求めるように彷徨った。


やがて、人通りは少なくなりとうとう町外れの林に辿り着いた。


ここなら大丈夫だろう。少しは落ち着ける。


ベルきゅんは今頃、婚約者と妹、幼馴染に囲まれて幸せに笑い合っているに違いない。



(魅了は絶対に使わない。ベルきゅんや王女、フィジーにアーデント―――皆には笑顔でいて欲しい。)



悪役勇者なんて要らない。


胸糞悪い物語にはさせない。


彼等を守り、皆を守り、魔王を倒してハッピーエンドにするんだ。


俺は懐から《ガーの葉》と呼ばれるこの世界の嗜好品を取り出すとマッチ棒に火を点け一服する。


(流石に未成年の前で吸えないしな)


クククとひとり笑い俺は深く煙を肺に入れる。




称号にあった【当て馬】、【凶星の子】、【悪役勇者】



転移した時に獲得したのか、秘力(スキル)の所為なのか。


俺はこの世界にとって悪でなくてはいけないのだろうか?



ぐるぐるぐるぐる思考が渦を巻く。



「フゥー」




顔を上げて煙を吐く。



みんなに見つかったら怒られるだろうな。


勇者が喫煙者とか聞いた事ないもんな。


「………戻るのしんどいな」


向こうは貴族。煌びやかな世界で誇りを胸に必死で努力して、民の為に尽くそうと頑張って、若いながらも苦労し励んで―――でも隣に支えてくれる人がいて



「フゥー」




(俺はかっこ悪いなぁ………)





己の命可愛さに死なないように立ち回り、卑屈になり、今もこうして彼等を拒絶している。



煙が目にしみた。






目頭が熱くなる。









止まらない。




止まらない。










涙。



毎日0:00と20:00に投稿予定です。


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[一言] もう侍女さんメインヒロインでいいんじゃないかな?(便乗)
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