第二十三話 「ありがと。お姉ちゃん。
あけましておめでとうございます。
更新遅いですが温泉回あげるんで許して下さい。
あらすじ
イツキは宇宙の真理を悟った。
アーデントの故郷でもあるここバルデヨフ領は古くから勇者が開拓した唯一の土地として大陸ではとても有名である。
元々この場所は木々はおろか草花も生えないばかりか絶えず毒の霧が蔓延していた。
周辺の人すらも【死の大地】とまで呼ばれていたこの場所がいかようにして王国随一の領都にまで発展を遂げたのか、七英雄時代まで遡る……
◇ ◇ ◇
「―――これ、硫黄じゃね?」
旅の途中でこの地に訪れていた古の勇者が放った一言である。
当時、腐った卵のような強烈な匂いは大地から溢れでる瘴気によるものだとされて来た。
しかし、古の勇者はこの匂いにどこか懐かしさを覚え、従者らと共にこの地の調査に乗り出したのだ。
赤い池、灼熱の水柱、岩肌剥き出しの風景……
「ヴェル、凄いぞ。これは温泉だ!」
勇者は興奮した様子で従者の一人である女性に話すと事もあろうか装備を脱ぎ捨てて赤い池へと飛び込んだ。
「ウホホッ!こりゃ、まさに血の池地獄じゃないか!……んぬっは―。極楽、極楽ゥー!」
勇者の不可解な行動に従者らは「前々から奇妙に思っていたがついに気が触れたか」と皆して思う。
しかし、余りにも気持ち良さそうにしている勇者に従者らはひとり、またひとりと恐る恐る赤い池へと飛び込んだ。
「ッ!熱いッ!……が…んぬっは!はぁ……染みるゥー」
身体の芯まで温まる感覚にいままで水浴びしかしてこなかった従者らは感嘆とし何とも云えぬ感覚に皆蕩けた顔になっていく。
この時を境に大陸中に【温泉】という概念が浸透していった。
◇ ◇ ◇
「……とまぁ、こんな感じで我が領地は大陸有数の温泉地として発展していった訳だ。」
カポーン
白い煙に包まれて三人の美少女が艶やかな肢体を晒して湯船に浸かっている。
「恥ずかしながらバルデヨフ領にそんな歴史があったとは存じてませんでした。」
シャロップシャーはアーデントの話を聞いて感心していた。
普段溢れんばかりに服にしまい込んでいた、たわわな双丘が今は水面にプカプカと浮かんでいる。
「……はふぅー。バルデヨフの温泉は国の宝。」
気持ち良さそうに目を細めるフィジーはプクプクと顔の半分まで湯に浸かる。
「こら、フィジー。あまり蕩けてるとそのまま溺れてしまうぞ。」
フィジーの両脇を手ですくい、甲斐甲斐しく介抱するアーデントの身体は普段鎧に身を包んでいてあまり目立たないが、その素肌は健康的で出るとこはしっかりと出ている。
「何だかイツキさん達には悪い気がしますね」
シャロップシャーが申し訳なさそうに言う。
「シャロ、あまり気にするな。元はと言えばあの二人が悪い」
ゴブリンの一件からベルとイツキはより一層慎重になった。おかげで野営する時間も増えうら若き乙女達の美容に危機をもたらしたのだ。
「しかし、大陸の一大事なのですから多少の犠牲は厭いませんし……『駄目です!』」
アーデントが言葉を遮る。
「王城では聖女だの何だの言われていますが、シャロは聖女以前にお姫様なんですよ!戦いの中でも常に美しさは保ってもらいたい!」
珍しくアーデントが説教をする。
「それにベルのお嫁さんになりたいなら尚更です。ああ見えてベルは貴族界隈でも人気なんですから」
それはそうとシャロップシャーも納得する。
透き通った銀髪に美少女とも美男子ともとれる中性的な顔立ち。
その魔性のルックスは貴族、民衆は勿論のことシャロップシャーをも虜にしてしまう程だ。
しかし、シャロップシャーは決してベルの外見だけで婚約を結んだ訳ではない。
『―――ずっと離さない』
夕暮れの中庭で誓ってくれた最愛の人の言葉が頭をよぎる。
(いつも側に寄り添ってくれて、いつも私の一番欲しい言葉を囁いてくれる。)
ベルの誠実で思いやりのある所、時として恥ずかしくなるほどに甘く情熱的な愛を囁いてしまう所、後で自身の言った言葉に顔が赤くなってそっぽ向いてしまう所。その一つひとつの思いが言葉が行動がとても愛おしく思うのだ。
そんな大好きな人だからこそ、幸せであると同時に果たして自分に釣り合うのかとふと不安になる事もあった。
ぺしっ
不意にシャロップシャーの額にチョップが入る。
「そんなに考え込まなくてよし。」
目の前の幼馴染がニシシと笑ってこちらを見ている。
「例え世界中の美男美女が彼にアプローチをかけたとしても彼のシャロに対する思いは違えることはないから安心しなさい。」
二つ年上の幼馴染はそう言うとすっかりのぼせてしまったフィジーを担ぎ浴場を後にした。
「ありがと。お姉ちゃん。」
シャロップシャーは外に聞こえないように感謝を言葉にした。
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