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NTR嫌いの異世界勇者〜ユニークスキルが魅了とかやめてください〜  作者: りくしろう
第一章 ミクラーシュ王国
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第十九話 …なるほどこれが世界の力か。

あらすじ

イツキは電流責めにあった。

アーデントは腹を抱えて笑った。


ベルきゅんはゴブリン戦で負傷していたが養生期間を終え、今は約束通り特訓に付き合ってもらっている。



「でぇえやああああ!」


俺は勢いよく飛び出すとベルきゅんの肩に向けて木刀を振るう。しかし半身で躱され後頭部に手痛い一撃を食らってしまった。


「踏み込みが甘いです!」


「うすっ!」


「おぅうやああああ!」


今度は言われた通り、踏み込みに緩急をつけフェイント交じりに左脇腹を狙う。――が 見透かされたように先にベルきゅんが俺の右脇へと一太刀入れた。


「右脇がガラ空きです!後大振り過ぎます!」


「うすっ!」


――――


あれから一週間俺たちは旅を一時中断してこうして戦いの訓練に励んでいる。アーデントからは剣の基本の型を、フィジーには魔法の基礎を教えてもらい、シャロップシャーには疲労した身体を治癒魔法で癒してもらったりしていた。

そして、特訓の最後にはベルきゅんにこうして模擬戦闘の相手をしてもらっている。


「ほんげぇええええ!」


「動きが単調過ぎます!」


ベルきゅんが姿勢を下げ俺の足を払う。俺はそのまま草原に熱い接吻を交わした。


「あと、さっきからしている変な掛け声は何ですかっ!?……僕まで恥ずかしいんですけど」


ベルきゅんが顔を真っ赤に染める。いや、気合いを入れようと思って………


「実際の戦闘ではやめてください!わざわざ敵にこれから攻撃しますよって伝える愚か者はいませんよっ!」


「……すみません。」


「い、いえ!?別に怒っている訳ではありませんよ?あくまでそうした方が敵に隙を作らせにくくなるんです。」


「……うす。」



◇  ◇  ◇



剣の稽古はあまり芳しくなかったが魔法の練習には変化があった。


―――――



「……周囲の魔素(マナ)を意識して」


「……?…こうか?」


「……違う。それは触覚。……第零感(ヌルセンス)を使うの」


「ヌルセンス?」


「……架空の手で空気を掴む感覚と言えば分かりやすい?」


……架空の手ね。


「……別に手じゃなくてもいい。足でも…頭でもいい……実際にはないけど実際に感じる…もう一つの自分の体をイメージするの」


要するに魔素を察知する感覚器官をイメージしろって事かな?


元の世界でいう『誰かに肩を叩かれた気がする』とか『寒くもないのに悪寒がする』といった霊感的なアレによく似ている。


俺は自分の体の周りにもう一つの肌がある感覚を強くイメージした。


「ぐぬぬぬぬ………」


考えるな!感じるんだ!


しばらくは何の音沙汰もなかったが、イメージをさらに強め自分自身に暗示をかけるような…一種の自己催眠に近い状態になった。


感覚を持つもう一つの感覚をイメージする。


鋭い感覚。


塵の微かな動きにも機敏に反応するそんな感覚を。









(……ボコッ)



するといきなり水の中に迷い込んだかのように身体中が圧迫される感覚を覚えた。


「うお!?何だこれ!?」


「……それが第零感(ヌルセンス)。魔法の基礎中の基礎にして原点。」


これが第零感。何だろう?凄く空気が濃くて息苦しい、。


風とはまた違う何かが彼方此方に伝わってくる。


あまりの感動に「…なるほどこれが世界の力か。」とカッコよくキメた俺を無視してフィジーは講義を進行した。


「……感じることができたら………次は…これ…」

彼女は全身で第零感を使うと周囲の魔素を纏わせる。


「第零感を使って周囲の魔素を……身体に集める。……身体と第零感の間に魔素を満たすイメージ。…そしてこれが出来たら……」

今度は全身に纏わせた魔素を掌に集中させる。


「…集めた魔素を第零感を通して一点に集めるイメージ。」

そして最後に彼女は掌を前に突き出すと集中させた魔素を放出させた。


空気中の本来あるべき流れが掌を通して歪められ、勢いよく魔素が放出される。それに引きずられて空気の流れも変わり強風となって解き放たれた。



「…掌に集中した魔素を第零感を使って放つ。……この一連の流れが魔法の発動の骨組みになる」


なるほど…思っていたよりめんどくせえ!


こう、呪文を唱えたらパパッと発動するものかと思っていたが、フィジー曰く、本来呪文は属性や指向性をイメージし易くする為の補助で魔法は第零感を使った魔素の操作で良し悪しが決まるとのこと。


シャロップシャーが『解毒(アンディナイ)』と呪文が一言だったのも解毒という言葉自体が既にイメージとして完成されていたからであって、解毒魔法の真髄は如何に魔素を対象に適切に送り込むか?どれほど解毒に対し理解を深めているか?だそうだ。


浮世離れしたイメージ力を持ち治癒という理解し辛い魔法をも軽々とやって退けるシャロップシャーは本当に凄いとフィジーは手放しで褒めていた。


こうして初歩である第零感を理解した俺はこの日から魔素の一連の流れを習得する為のイメージを強める訓練を始めた。


最初は第零感を自覚するのに手間取ってはいたが、その後は順調に上達していった。


――それにはちょっとした訳があった。


実は元の世界で俺は漫画の影響で子供の時からこの手の練習は何度もしていたのである。


その経験が活きたのか、ほんの数日で魔法の基礎を習得することが出来たのであった………


やっぱりハ◯ター◯ンターとドラ◯ンボ◯ルは偉大だね。



◇  ◇  ◇



「はいはい!皆さん今日の特訓はおしまいにしましょ!」


シャロップシャーは手を叩くと俺たちに料理を振舞ってくれた。


「今日も()()()()()は訓練を頑張っているので特別にシチューを作ってみました!」


イヤッフゥー!


以前、シャロップシャーに好きな食べ物を聞かれた時に俺はとっさに「ク◯アおばさんが作ったシチュー」と答えていた。まさか本当に出てくるとは思わなかった。めちゃくちゃ嬉しい!


「イツキさんのおばさんに敵うかはわかりませんが、味には自信があります!どうぞ召し上がってください!」


……ごめんよ。シャロップシャーさん。◯レアおばさんは実は俺のおばさんじゃないんだ。


本当はレトルトシチューのイメージキャラクターだと声を大にして言いたかったがシャロップシャーは「遠い異国にやってこられてさぞ苦しかったでしょう」と涙ちょちょぎらせてしまったので俺の親戚には白人のおばさんがいるという事にした。


―――まあ、俺の親戚みんな佐賀県民やけど。


皆で車座になって食べるシチューは格別に美味しかった。

途中、アーデントのおかわりに俺とフィジーが全力で抵抗したというアクシデントこそあったが和気藹々と皆で食事を楽しんだ。





この時間が永遠に続けば良いのに……と頭の中で一瞬過ったが、願っているばかりでは魔王という現実からは逃れられない。


早く、強くならなくちゃ。


俺はこの大事な時間を一秒でも長くする為に一秒を惜しんで訓練に励む。


毎日0:00と20:00に投稿予定です。


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