第十三話 私の生まれ故郷だ。
今日は三回更新予定です。
あらすじ
初めてちゃんとした魔法をみたイツキ。
アーデントは馬鹿だった。
ベルきゅんと密室。何も起こらないはずはなく.........
結局、昨晩は同室の仲間の所為で一睡もできなかった。
「……シャロぉ…」
ベルきゅんが夢の中の婚約者と勘違いして俺に抱き着いた時は流石に焦った。彼氏を襲うという二重の意味での間違いを犯さなかった俺は褒めていい。
未だ寝息を立てている婚約者様を起こし(寝巻きが着崩れていたのは見ないフリした)ともに支度をしてから一階の食堂へ向かった。
「……はよ」
「なんだ?目の下にくまが出来ているぞ?」
食堂に着くと先に支度を終えていたフィジーとアーデントがいた。
「……色々考え事をしてたら朝になっていた。」
ベルきゅんを意識して寝られなかったとは口が裂けても言えない。
「ところでシャロはまだ来ていないみたいだけど」
ベルきゅんが心配そうにアーデント達に尋ねる。
「ベル、あまり無粋なことを言うな。シャロは乙女なんだぞ?男より支度が長いものなどだ」
アーデントがベルに苦言を呈す。
(その男より支度が早いお前らもたいがいだぞ)
俺はツッコミそうになったが寝不足気味なのでやめておいた。
「お待たせしました。」
遅れてやってきたシャロップシャーが駆け足でこちらへとやってくる。
相変わらずブルンと揺れる双丘は朝から目に毒だ。
童貞特有の顔よりまず胸を見る反射行動に俺は深く反省をする。隣に恋人がいるし変な誤解を生みたくない。
「いや、今来たところだ。慌てなくてもいい。」
ベルきゅんがシャロップシャーにそう言うと「さて、今後の旅について話をしながら朝食にしようか?」とみんなに促していく。
昨日は宿のおばさんの好意で貸切にしてもらったが、今朝は大勢の宿泊客と地元の人で賑わっていた。そういえば昨日から街には入っているのだが、獣人とかエルフとかそういう亜人の類いに出会していない。もしかしてこの世界はそういうファンタジーとは少し違う世界なのだろうか?
少しだけ残念に思う俺だが、とりあえず頭の隅に置いておく事にした。
「さて、イツキさん。これからの旅についてですが、イツキさんはどこまでお話を聞いていますか?」
みんなで空いている席に座るとベルきゅんが俺に尋ねる。
「確か…隣の大陸に魔王が復活して、俺が勇者で魔王をやっつける?」
あれ?魔王って具体的にどこにいるんだ?てかここは今どの辺だ?
「はあ……お父上は本当に何もイツキさんに教えてくださらなかったのですね…」
シャロップシャーがうんざりした顔で言う。
いま思えば、侍女を寄越したり、変な鑑定士に鑑定させたり確かにおかしい点が沢山ある。
「まず、我が国ミクラーシュ王国ですが現大陸の最東に位置しています。」
シャロップシャーが地図をテーブルに広げる(料理がアーデントの前に寄せられたのは少し不安だが)とこの世界の地理について説明してくれた。
「この大陸は我が国を含めて七つの国がそれぞれ治めています。」
遥か昔、魔王を退けた七英雄がそれぞれ国を起こしたのだそうだ。その名残か七つの大国は永久和睦を結んでおり五百年の間、戦争は起こっていないらしい。――元の世界も見習って欲しいものだ。
「今回の旅は三つの国を通ることになっています。トルナヴィア法国、ポプラト共和国、ビストリツァ帝国の順番です。」
それぞれ七英雄の賢者、商人、剣士が起こした国らしい………商人ってト◯ネコかな?
「今回の旅は爺七と言う国の代表者会議で決定しました。おかげで今回はどの国も無条件で入出国出来ます。」
全ての国が勇者に対し援助をしてくれると言う。それにしても爺七とは安直なネーミングセンスだな。
「まずはミクラーシュ王国とトルナヴィア法国の国境にあたるバルデヨフ辺境伯領に向かいます。」
ん?バルデヨフ?
「私の生まれ故郷だ。」
口をもぐもぐさせているアーデントが喋る。つか汚ねぇな!
「彼女は辺境伯の令嬢です。」
シャロップシャーは「見えないでしょ?」と悪戯に笑うと話を続けた。
「本来、バルデヨフ領に向かうには馬車で一ヶ月掛かるところなんですが、急ぎの旅でもありますので今回は【赤羽鳥】で移動します。」
なんでも赤羽鳥は馬の三倍ほどの速さで移動することが出来、国同士の連絡手段として重宝されているらしい。
(う、馬の三倍………)
なんか嫌な予感しかしないが、あまり深く考えないようにしよう。
隣の大陸に向けてビストリツァ帝国に入国することが当面の目標になりそうだ。
シャロップシャーの講義が終わり、期待を胸に膨らむ。
―――さあ、これからが本当の冒険の始まりだ。
そう決意して朝食を済まそうとしたイツキ。
しかし、既に皿は空になっていた。
ようやく、本格的に旅が始まります。
次回、魔物との初戦闘です。
今日は不定期であと二回更新予定です。よろしくお願いします。
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