第十二話 てめえこのやろう。
今日はブラックフライデー。
ブラック(残業)なフライデー。
という事で今日は遅くなった挙句、この一話のみの投稿です。すみません。
あらすじ
ベルきゅんが歓迎会を開いてくれた。
イツキギャン泣き。
宿のおばちゃんの好意で食堂は貸切にしてもらっていた。
お城の豪華フルコース―――とまではいかないまでもでっかい肉の塊だったり、色とりどりの野菜を使ったサラダ、種類豊富な魚料理など実に食欲を誘う。
今まで自分の心の中にあったわだかまりも消えこの世界に来て初めて人と笑いあいながら食事をした。
フィジーは大の野菜嫌いでその中でも特に葉物野菜が駄目らしい。
「……葉っぱなんて人間の食べる物じゃない。」
この世界では苦味や独特のエグ味を嗜む文化があるらしく、今フィジーが格闘している【パセリン】という野菜はその代表格だ。こいつはそのまま食べると最初は爽やかな香りが鼻から通る…んで騙される。
「なんだいけるじゃん」と調子こいてパクパク食べると手痛いしっぺ返しに見舞われる。香りが鼻から抜け終わると突如、吐いた後のような強烈な苦味に襲われるのだ。
―――確かにこいつは人間が食うヤツじゃない。
「フィジーもイツキもそのまま食べるからいけないんだ。パセリンの本当の食べ方というのはだな……」
アーデントがパセリンの美味しい食べ方をレクチャーする。ハムの上にパセリンを乗っけてハムを上から被せ、くるりと巻いたら、ハムの上に乗っける。そしてハムを被せて両サイドをつまみ中央に織り込んだら、ハムの上に乗せ―――ハム大好きだなっ!
「……アーデやり過ぎ。」
どうやらフィジーはまともな思考を持ち合わせのようだ。おい、アーデント俺の皿に置くな。
シャロップシャーはこのやり取りをクスクスと笑う。「アーデ、嘘教えないの。それ、お肉の香りづけに添えてあるだけだから普通の人は食べないわよ」まじか?―――アーデこのやろう。
「苦味の原因はパセリンに含まれる毒素によるものなの。でも、パセリンの毒はごく微量だから、人が食べても影響はないわ」
シャロップシャーは俺の皿に無理やり置かれたパセリン入りのハムに手をかざし呪文を唱えた。
『解毒』
ハムが淡い光に包まれると紫色の蒸気が空気と溶け込む。今の蒸気が毒かよ!パセリンえげつねえな!
「はい!これで安心!イツキ様食べて見てください」
先ほどの味を覚えているため若干躊躇しつつも思い切って口に入れてみた。
「…………うまいっ!」
先ほどと同じく爽やかな香りが効いているからかハムの脂っこさがすっかり消えている。懸念していた苦味も全くなく、パセリンが本来持っている甘味が口の中に広がっていく。
「だから言っただろう?パセリンとハムはよく合うんだ。」
―――てめえこのやろう。
しかし、何気なくシャロップシャーは魔法を使ったが、間近で魔法を見るのは鑑定士以来だ―――あの鑑定士、途中変な声出てたし………
まともな魔法はこれが初めてだ。
「イツキ様もレベルが上がれば魔法を使えるようになりますわ。」
うお!マジか!それはそれは楽しみだ!
突然、隣に座っていたベルきゅんは俺の手を取ると「大丈夫です!一緒に覚えましょう!」と目をキラキラさせている。
「手……柔らかいな…」
何故か少しドキッとしてしまった。
そんなこんなで最初はテーブルに大量にあった料理もアーデントの爆食スキル(冗談かと思ったら本物の秘力だった)のおかげでほとんどが空になった。
「………お腹痛い」
フィジーは腹八分目を行き過ぎたようでお腹をさすっている。
「フィジーは相変わらず少食だな……だから育つものも育たないんだぞ!」「ぐぬぬ……」
フィジーに向かってこれ見よがしに胸を張るアーデント。………あれ?アーデントってこんなキャラなの?
アーデントの挑発に顔には出さないが不機嫌になるフィジー―――そしてそれを宥めるシャロップシャー。
食事が終わりしばらくみんなで談笑していたが、宿のおばちゃんが皿を下げてきたタイミングでみんな部屋に戻る事にした。
◇ ◇ ◇
(今日は楽しかったなあ………)
さっきまでの出来事を振り返る。
最初にお城で出会った時は一緒に旅をするのがプレッシャーになっていた。
身なりや所作が平凡な俺とは違い洗練されていたし、歳もひと回り違うし、そもそも元々は住む世界が違っていたのだ。
そんな中で距離を置こうと努めていた俺に四人は居場所を作ってくれた。
そして話しているうちに……四人それぞれの本来の姿を見るうちに、そんな違いなんて些細な事なんだと気づくようになった。
フィジーは以外と常識人で一見真面目そうなアーデントはバカ担当。
シャロップシャーは二人が喧嘩しそうになると間に入り、なだめつつもさりげなく二人をコントロールするバランス役。
ベルきゅんは顔に似合わず熱血キャラでさっきまで「これからは僕と一緒に魔法の練習をしていきましましょう!」と笑顔で話していたっけ…………
俺は今まで、年上だから異世界人だから悪役勇者だから自分が壁になって彼等を守ろうと思っていた。だけど今は仲間がくれたこの居場所を守るために仲間と一緒に戦っていこうと決意するようになった。
明日からいよいよ街を出て魔王が潜む西の大陸へと旅が始まる。
魔物との初戦闘、自分の望まない秘力と称号、元の世界の事―――
考えなきゃいけない問題は山ほどあるけど、魔王との決戦までの時間は十分にある。
まずはみんなからもらったこの居場所を全力で守ろう。
そう俺は心に誓い明日の旅立ちに向けて寝る事にした。
………
…………
ベルきゅんが隣で寝てて寝られないっ!
男同士、密室。何も起きないはずもなく........
明日は遅れた分3話連続投稿目指します。
毎日0:00と20:00に投稿予定です。
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