第十一話 お帰りなさい。
あらすじ
少女に魔法を教えた。
林での一件を終えて俺は再び街へと戻り、あらかじめ約束していた宿へ向かった。
「イツキ ナバタメで予約しているものですが………」
受付のおばさんが「あらそう!」と満面の笑みで応えると何故か俺は部屋とは逆の方へ案内されてしまった。
「あれ?部屋に行くんじゃないんですか?」
「いいのいいの!今、あんたの連れはこの食堂の中にいるさね!」
………食堂?
夕飯にしては少しばかし早い気もしたが、俺が来るまでの間、皆が食事を待っているのだとしたらとても申し訳ない。
(今日は個人行動とったから尚更だしな……)
皆を待たせては悪いと思い俺は恐る恐る食堂の扉を開く――――
《パパンッ!パンッ!》
――――入った瞬間、突如鳴り響く破裂音に俺は腰を抜かした。
顔にカラフルな紙か紐みたいなものが絡みつき何がなんやらいまいち状況がつかめない。
「勇者様っ!」
「え?」
破裂音の元凶―――クラッカーを手に持つベルきゅん達四人がそこに立っていた。
「こ、これは?」
「僕たちで考えた歓迎会です!」
食堂をよく凝らしてみて見ると、数珠繋ぎになった紙のリングやら壁に貼られたお花やら、色とりどりの装飾が施されている。
「………作った。」
鼻をふんすと鳴らすフィジー。相変わらず無表情だが、どこか得意げだ。
「知らぬ土地、知らぬ人に囲まれ大層気疲れしていると思ってな……」
こっぱずかしそうに頬をかくアーデント。
「ベル様が言い出したんです。皆で歓迎会しようって」
ニコニコしながら答えるシャロップシャー王女。
「これからはお互い命を預ける仲間ですから!勇者……いや、イツキさんっ!ミクラーシュ王国へ――――――」
『ようこそー!』
―――
ああ……
俺は勘違いしてたんだな………
間に入らないよう、仲を崩さないよう。避けて避けて………それが皆のハッピーエンドに繋がると思っていた。
兄妹同士の絆とか幼馴染同士の縁とか恋人同士の愛とか………第三者が土足で入ってはいけない領域だとわきまえていた。
彼が―――彼女らが築き上げてきた思い出、信頼、愛情を知らないふりして掻き回す真似をしたくなかった。
なのになのに
そんな君たちにとって大切な場所をかけがえのないひと時を俺なんかに………俺なんかに………
「これからは一緒に良い旅にしていきましょうね!」
共有していいんだ………支え合ってもいいんだ………
こんな俺を………頼りない男を…………
――〝仲間〟として迎え入れてくれるんだ――
今まで肩に乗っかってた何かがふと落ちた。
今まで我慢していた感情が胸の奥底から込み上げて来る。
「あ" り" が ど う"」
顔がもうクチャクチャになり自分でもなに言ってるかわからないほど心の底から溢れ出した言葉。
「イツキ鼻水出てる。……汚い。」
「う"ん"っ!」
「こら!?勇者がギャン泣きするなっ!?」
「う"ん"っ!」
「なんだか私まで泣きたくなってきました。」
「う"ん"っ!」
暖かい言葉が、何気ない触れ合いがこんなにも胸に沁みるとは知らなかった。
素をさらけ出して、恥ずかしいところ見せて笑って受け止めてくれる人がいるなんて思ってもみなかった。
歳も性別も生まれも………あまつさえ時空をも越える―――
たしかな《絆》をもらった気がした。
泣きながら笑う俺は最後にベルきゅんと向かいあう。
「そういえばまだ言ってなかったですね―――」
ベルきゅんが両手を広げてとびきりの笑顔で俺に言う。
「お帰りなさい。」
「うん!ただいま!」
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