第十話 でもそれは簡単な魔法で元通りに出来る。
感想本当に本当にありがとうございます。励みになります。生きてて楽しいです。
あらすじ
暴漢から女性を救い出すイツキ。
でもその先は未知の領域。
「………」
太陽が真上まで昇ってきたのだろう。
木々の間の木漏れ日があちこちに差してきてとても幻想的な風景になっている。
あれからどれくらい経っただろうか。
―――まあ、体感三十秒くらいだが
男女ふたりきり(男はそこら辺でのびている)で隣り合わせに座っているこの状況は凄く気まずい。
俺はふと女性を横目に見る。
大人の雰囲気が漂うが、よくよく見ると単に化粧をしていただけで、実際は王女様と同年代くらいの少女だった。
「………私ね、恋人がいるの」
彼女がポツリ
「凄く優しい人で、私を大切にしてくれてこの間も仕事で一人前になったら結婚しようって告白されたの」
なんだ彼氏持ちかよ……などと無粋な考えはしない。
「でもね、あまりに優しすぎてあまりに純粋すぎてね………ちょっと魔が刺しちゃったの」
あまりに奥手な彼氏に自分には魅力が無いんじゃないかと錯覚を起こしていたらしい。
街で偶然声をかけられた男に猛烈にアプローチされて女性として少し嬉しかったと懺悔するかの如く語った。
「………お嬢さん。それ……一番やっちゃいけないよ。」
俺が一番嫌いな寝取られの導入だ。
まだ、元の世界にいた時の頃。
大ファンだった同人作家さんがいた。
しかし、ある時を境に寝取られモノばかり書くようになってしまった。
内容はあまりに救いようがなくて
あまりにかわいそうで
どうしようもできない主人公に憤りを感じ
それがあまりにも悔しくて―――
気がついた時には果てていた。
最初はこのモヤモヤした気持ちはなんだと疑問に思った。
しかし、時間が経つにつれてモヤモヤが怒りに変わり
憎しに変わり
さらに時間が経って冷静になり
ふと考えて見ると結局の所、主人公もヒロインも回避できる手はいっぱいあるのに状況に流されてついには「あれ?こいつら馬鹿なんじゃないか?」とさえ思ってしまった………
結局その物語は彼女がセクシー女優になって主人公は泣きながらビデオ鑑賞をするのだが、そんな物語を側から見させられる俺としては随分と不気味で後味が悪くて………
気づいた時にはやっぱり果てていた―――
◇ ◇ ◇
「……お嬢さん。」
「はい。」
「俺はお嬢さんの気持ちもよく分かるし、彼氏さんの気持ちもよく分かる。」
「……はい。」
結局のところ、お互いの気持ちを包み隠さず言葉に出すという簡単なことが出来なかったんだ。
「………でもそれは実は些細な事なんだ。魅力が無いんじゃ無いかと思うのは結局は相手の好きという気持ちを信じきれなかっただけ。」
「………ぐ…そんな」
「でもそれは簡単な魔法で元通りに出来る」
「………!」
少女は救いを求めるかの如く俺を見つめてきた。
「既成事実。世界で唯一の魔法さ」
少女はハッとした。そして少し考えて決意したのか、大きく頷くと立ち上がって元気に街の方へ駆け出していった。
「ありがとう!おじさん!私頑張ってみるわ!」
そう言うと雑木林から少女の姿は消えていった。
「俺はまだ二十八歳だっ!」
この物語は一部ノンフィクションが含まれています。
毎日0:00と20:00に投稿予定です。
下のポイント評価ボタンをクリックして応援していただけると嬉しいです!




