【2】綺麗なお姉さんとイケメン(死語)なお兄さん現る!?
「あ〜きつっ…」
俺はボソッと呟いて、学校を出た。
今日も途方もなく平凡な1日だった。
でも俺は平凡が嫌いじゃない。
しかし……。
ウザイな…。
「…寄ってくんな」
俺はそう言って、空を睨み付けた。
「君、幽霊視えるの?」
「は……?」
そんな声に振り返れば、そこには綺麗なお姉さんとイケメン(死語…)のお兄さんがいた。
「えと……今なんて?」
「だから、君、幽霊見えるのって?」
お姉さんは俺に顔を近づけて、ちょっとむっとしたような表情でそう言った。
幽霊…?
幽霊って言ったかこのお姉さん?
幽霊…?
「ハハハッ…幽霊なんているわけないじゃないですか」
俺は苦笑いしながらもそう答えた。
「ホント?」
お姉さんは更に顔を近づけてくる。
「ほっ…ほんとですって…!?」
あまりの顔の近さに、俺は少しドキドキしながらもそう答えた。
「ふ〜ん…じゃあ、そこにいる幽霊はどんな姿してる?」
「えと…中年サラリーマンですか………っ…!?っていやいや今のは激しく違いますよ!?」
何答えちゃってんだよ、俺〜!?
「やっぱり…視えてるんじゃない?嘘はいけないわよ?少年」
お姉さんはそう言って、怪しく笑うと俺から離れた。
「いや…あのですね……今のはきっと間違いで…」
俺はしどろもどろになんとか言い訳しようとした。
「間違いなんかじゃねぇぞ?お前が言ったことは当たってる。そこには間違い無く中年サラリーマンがいる」
お兄さんが初めて口を開き喋った。
お兄さんは空を見つめて、目を細める。
ハスキーな声だ。
この人モテるだろうななんて……考えてる暇ないだろ、俺!?
「いや……あ〜もう…何なんですか、あなた達!?」
俺は何故かキレてしまった。
幽霊なんかと…幽霊なんかと関わらないように生きていたかったのに……。
この人達の所為で台無しだ!
「…俺は幽霊なんかと関わらないようにしてきたのに!?」
「ふ〜ん、そうなの?」
お姉さんは興味なさそうに、長い黒髪をかきあげる。
「そっ…そうですよ!大体誰が幽霊なんて信じるんですか!?幽霊なんか視えるなんて言って誰が信じてくれるんすか?それこそ変人扱いっすよ!?」
俺がそう言うと…。
「いつから幽霊は視えてるの?」
完璧無視なお姉さん……。
「…って!人の話聞けよ!?」
「で、いつからなんだ?」
お兄さんはニヤニヤしながら聞いてくる。
あなたも無視しますか…。
たくっ……。
「小さい頃からですよ…。大体3歳ぐらいからかな?流石にそれが幽霊とまでは認識できませんでしたけど……たぶん幽霊が視えるのは両親の影響ですよ…」
俺は仕方なく答えた。
「へぇ、両親…。ご両親も幽霊が視えられていたの?」
お姉さんはどこか感心したように聞いてきた。
「みたいですね。今はもうあの世で仲良くやってると思いますよ」
俺はもう投げやりにそう言った。
「そう…。君、名前は?」
お姉さんはニッコリと微笑む。
「蒼太…蕪木蒼太です」
「蕪木…?ホントに?」
お姉さんが“蕪木”という名に、妙にくいついてきた。
「はっ…はい」
「そう…。蕪木…ね。靖史…これ、ビンゴなんじゃない?」
お姉さんは怪しく笑い、お兄さんを見た。
「かもなぁ。でもまだはっきりと決まったわけじゃないし……。とりあえずは事務所に連れていきますか?」
お兄さんはそう言って、俺の肩に手を置いた。
あぁ…母さん、父さん……俺は変なお姉さんとお兄さんに捕まってしまいました…。
「ではでは、ようこそ蒼太君。我が“GB”へ」
って…あれ!?
いつの間に学校からこんなとこに!?
狭い路地を抜け、たどり着いたのは…古ぼけた建物だった。
なんかだっさい…GB……?と書かれた看板をぶら下げて…。
何なんだよ…ここ?
「ほら、ほら、入って入って!」
階段を上り、なんか勝手に招き入れられている…。
「…って…勝手に連れてくんなよ!?」
俺は思わず叫んでしまい口を手で塞いだ。
ここが俺の今までの人生にピリウドを打ち、新たな人生のハジマリとなった場所。
つか……勝手に連れてくんなぁ〜〜〜!?