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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 2 夜の女王  作者: 石渡正佳
ファイル2 夜の女王
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秘密兵器

 週末、秋葉原の電気街を歩き回って無線の専門店を物色している伊刈の姿があった。二、三坪の小さな専門店がずらりと並んだバラック街のような電気街は電子部品や特殊工具を探すマニアで雑踏していた。メイド喫茶がブームになり、中国からの爆買ツアー客が大挙して押しかけるようになる前から秋葉原はラジオ少年とおたくの聖地だった。

 「トラック無線を聞きたいんですが」アマチュア無線機、船舶用無線機、車載専用機、短波受信機、いろいろな機種の無線やラジオが狭苦しい店先いっぱいに並んだ適当な店を選んで、伊刈は店主に声をかけた。

 「車に積むのかい」

 「聞くだけだから目立たない方がいいです」

 「傍受ならハンディがいいかな。初心者ならまあこれだな。タクシー無線でも盗聴器でもなんでも聞けるぞ」店主は片手で操作できる広域ハンディレシーバを勧めた。

 「それでいいです」

 「アンテナはどうする? 高感度のがあるけど取り替えるか」

 「じゃそれも付けてください」

 「ロックの外し方は知ってるかい」店主は伊刈の顔色を伺った。

 「ロックってなんですか」

 「知らないと思ったよ。消防とか警察とか聞いてはいけない周波数はロックを外さないと聞けないよ」

 「聞くつもりはないですが外せるんなら外してください」

 「五百円でいいかな。雑誌なんかに外し方が載ってるんだが工具もないんだろう」

 「じゃお願いします」

 店主は無線機の裏蓋を開けると手馴れた仕草でコンデンサの配線を一か所ニッパで切り離した。それだけで五百円は高かった。

 「トラック無線の周波数はご存知ですか」

 「430メガだろうな。スキャンのやり方わかるか」

 「いいえ」

 「なんにも知らないんだな。説明読めばわかるけどセットしておいてやろうか」

 「お願いします」

 店主はトラック無線の周波数をメモリーしてボリュームを上げた。壊れたアナログテレビのようなひどいノイズの中にかすかな通話が聞こえた。サーチボタンを押すと電波のあるところだけ数秒ずつ通話を拾った。

 「アキバじゃこんなもんだな。田舎に行けばもっとよく拾えるよ」店主はレシーバを箱に詰め直して伊刈に渡した。持っていてあたりまえの無線機が伊刈にはとほうもない秘密兵器に感じられた。

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