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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 2 夜の女王  作者: 石渡正佳
ファイル2 夜の女王
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情婦

 車を飛ばして一時間で病院に着いた。事務長に面会し事情を話して病棟に案内してもらった。瑤子はMFICU(母体胎児集中治療室)に入っていた。大西を病室の外に待たせて伊刈は一人で瑤子に面会した。瑤子は流産の出血ショックから完全には立ち直っていない様子でぼんやりと天井を見つめていた。ベッドサイドに箭内の姿はなかった。

 「大丈夫か」伊刈は瑤子の手を握りしめた。

 「ああ伊刈さん、来てくれたんだ。箭内の家に戻って不法投棄やめさせようとしたんだけどダメだったの」

 「やっぱりなんだかんだ言っても女房なんだな」

 「あたしの言うことはもう聞かないわ」

 「箭内はなんだって?」

 「逮捕されるのは覚悟してるって。それまで稼げるだけ稼ぐんだって。罰金なんてたかが知れてる。それ以上稼げば借金を返せるんだって」

 「借金なんて返さない方法はいくらでもあるのに根はまじめなんだな」

 「そうよ。だって農家なんだもの、逃げること知らないのよ」

 「旦那の愛人はどうした?」

 「もう別れたみたいよ。お金がなければ愛想もつきるでしょう。箭内を守ってあげて。騙されただけなのよ」

 「それより自分のことが大事だろう。今度のことは事件にするのか」

 「そんなつもりないわ」

 「離婚はどうするんだ。もう時間がないぞ」

 「私は前科者の女房だってかまわないのよ。それより箭内を助けてあげて。悪い人じゃないんだから」

 「わかった」伊刈は瑤子の手をしっかりと握ると病床を離れた。病室の外で待っていた大西は何も聞かなかった。

 翌朝、伊刈は休暇を返上してホテルから箭内の自宅に直行した。先代社長が不動産で羽振りがよかったころに建てた化粧造りの豪邸はそのままだったが、芦中池のほとりのきれいに造園されていた庭は見るも無残に荒れていた。作業場だった中庭にはダンプから降ろされた産廃が散らかり、近所の苦情を受けて溜池から掘り返したどろどろの産廃が強烈なヘドロ臭を放っていた。箭内は小型のユンボで平ダンプに産廃を積みこみ、今しも不法投棄現場へ運び出すところだった。

 「おい箭内ちょっと降りろ」

 「なんすかあんた? 俺忙しいんだけどその車どかしてくんないすか」箭内はダンプの窓から首を出して私服の伊刈を見下ろした。

 「奥さんに会ってきたぞ」

 「へえそう。じゃあんたが県庁の伊刈さんなんだ」

 「知ってるのか」

 「まあね。前々から瑤子に聞かされてっから。あんたが望みなら瑤子は譲りますよ。年は少しとったけどまだまだいけてるでしょう。最近はあんまり使ってねえしな」

 「ばか言うんじゃないよ。子供が残念じゃないのか」

 「まあそおっすね。腹に子供がいるとは知らなかったから。可愛そうだけど俺みたいな親じゃ生まれてもしょうがないっすよ。いつ逮捕されるんすか。どうせならあと一か月待ってもらえないっすか。それでこの庭きれいにしますよ」

 「もう不法投棄はやめろ。自首したら少しは罪が軽くなる」

 「そんなまねしたら本所さんに殺されますよ」

 「もう殺されたも同じだろう」

 「行くとこまで行かないともう俺はダメなんすよ。どいてくんないとあんたの車ぶつけても出ますよ」

 「愛人のためか?」

 「あ? 瑤子がそう言ったんすか。それは違いますよ。俺ほんとは瑤子が一番なんすよ。だから一円でも借金返さないとだめなんすよ」箭内は虚勢を張ってエンジンを空ぶかしした。

 「おい箭内やめろ、今やめればまだ情状がつくから」

 「ほっといてくれよ。俺がパクられたらマジで瑤子を頼んますよ。あんないい女、ほんとマジでいねえでしょう」箭内は伊刈の車にダンプをぶつける勢いで飛び出していった。

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