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穴
夜開くもの、それは夢と不法投棄現場である。この当時の犬咬市の不法投棄とはダンプが宵闇紛れてこっそり山中に産廃を捨てることではなかった。不法投棄現場とはプロの穴屋の捨て場、つまり無許可の最終処分場だった。許可のある捨て場は日の出とともに開門し、日没とともに閉門される。それに対して無許可の捨て場は日没から日の出まで活動するのだ。
一九七一年に廃棄物処理法が施行されたとき、最終処分場の設置は許可制ではなく、埋立方法の基準もないので埋めても積んでもよかった。つまり最終処分場と不法投棄現場(無許可最終処分場)の区別はなかった。この当時の負の遺産の一つが京都の岡田山である。一九七七年に最終処分場の技術基準(安定型、管理型、遮断型の種別)が設けられると、ようやく許可(当初は届出)のある最終処分場と不法投棄現場の差別が生まれた。最終処分場も不法投棄現場もどちらも捨て場と呼び、あるいは穴と呼ぶのはもともと両者の区別がなかったからである。