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不死というものはかくあるべきでゆえに少女が生まれた ~つまりプロローグ~



 不死身の怪物というのは基本物語の中の存在である。それも英雄に倒される定めを背負った不完全な不死だ(見方を変えれば英雄でなければその不死性を打ち消せないとも言えるかもしれない)。


 勿論不死身なんてものは実在しない。幻想の存在だ。それに比類しうる生命力を持つ生物は数多くいるが、それでも首を刎ね飛ばして脳と身体の接続を遮断してまで生きていられるのはそもそも脳という生物的機能核を持たない吸血鬼か端から死んだようなゾンビ類くらいである。


 だがどっかの阿呆がこの碇石セオリーに疑問を持ちあまつさえ反逆しようとしたのだ。しかも神はどうやらこの阿呆をご寵愛なされていたらしく、時期はちょうど世紀の大戦争。国家ぐるみで気が違った研究者の不死の仮説を立証させるための研究費とその施設を投資した。


 そうして数々の犠牲を経て不死身の怪物は誕生した。施設での呼び名は60だの不死身ちゃんだのEだのと様々だったが、心底どうでも良い。


 研究所は祝福のムードで包まれた。だが問題はすぐに発生した。


 戦争が終わったのだ。どうやら神はマッドサイエンティストに愛想を尽かされたそうで、代わりに平和を愛するようになられたらしい。気まぐれとはいやはや、恐ろしいものだ。


 独裁者も真っ青な悪逆非道の限りを尽くして研究をしていた施設は当然の如く国ぐるみで放棄され、しかも特殊部隊を送り込まれて壊滅させられた。秘密厳守のためでもあるが、諸外国に対する『以前の組織がやったことで現在の我々には関係ない』というパフォーマンスでもある。当たり前だが研究資料は全て焼かれ、研究員も殺された。平和には犠牲が付き物なのだ。


 さて、考えるまでもないが不死身の怪物も処分の対象であった。

 とはいえ成功したと胸を張って言われた個体だ、何をもってしても殺すなんて叶うはずもなかった。

 

 実際に拷問のプロさえ青ざめる様々な殺し方を試されたが、何をしたって死ぬことはなかった。


 え、どうすんのこれとお国のお偉いさんたちは慌てた。

 ここまでやべー奴なんて聞いてないよ嘘でしょ――マッドサイエンティスト特有のやりすぎの結果に誰もが唖然し、苦悩した。


 このままでは怪物の存在が明らかになってしまうため、外国の情報機関に知られる前に何か殺害以外の対策を練らねばならなかった。

 コンクリートに埋める――しかし何かしらの方法できっと脱出される。

 無限に溶かし続ける液体の中に封じる――右に同じ。

 魔術的な手法で封印する――どこに隠せばいいのか。


 最早打つ手なしだと誰もがそう思った。






 そして何を思ったのか誰かがこう言ったのだ――彼女を一般の学生として学校に通わせるのはどうだろうか、と。




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