01話:新学期
春休みが明けて新学期。
周りはやれクラス替えだ、新入生の後輩に可愛い子が来るらしいだの喧騒に包まれている。
俺、佐藤瑞樹は新しい机に突っ伏して微睡んでいた。
春休み最終日ということで昨日は盛大にゲームで夜更かししたからな、やっぱりファイナルファンタジアはやりこみ要素まで楽しんでこそだ、うん。
いきなりだが俺はゲームが大好きである。放課後は部活で忙しいんだが、その反動からか部活後は即刻愛しの我が家に帰って部屋に引き篭もり、ゲームしたりPCで動画を見る何不自由ない生活を謳歌している。
そんなこんなで新学期早々二度寝をかまし、このまま昼まで寝たいくらいだったが、5回目に姉ちゃんに起こされた時に目が笑ってなかったから起きざるを得なかったのだ。
「という訳で俺は寝る!」
「なーにクラス替え初日に朝っぱらから寝ようとしてんの」
ショートカットの女子がぼやけた視界にズームインしてくる。
「んあ?結衣か」
俺の睡眠は牧野結衣によって阻害された。
「んあ?じゃないわよ、なんかこう、新しいクラスに可愛い子いないかな?とかそういうドキドキはないわけ?・・・それにせっかく1年ぶりにあたしと・・・」
「んー?」
「なんでもない!」
「まぁクラスメイトは自己紹介の時に確認すればいいかな、夜更かしして眠いし」
「どーせ遅くまでゲームしてたんでしょ」
さすがは結衣、俺の生活はお見通しである。
というのも結衣はウチの家のお隣さん。当然のように腐れ縁で仲は良い。ベタすぎる関係だが、去年はクラスが違ったし、メチャクチャ人の多いマンモス高校でわざわざ離れたクラスまで話に来ることもなければ、顔を合わせる回数もめっきり減ってたな。
「よーう瑞樹!今年も同じクラスだな!」
また騒がしいのが増えた。
「おー、啓、おんなじクラスだったんか」
「把握してなかったの!?親友としてはちょっとヘコむよそれ!?俺なんて真っ先に瑞樹の名前探したのに」
親友よ、最初に野郎の名前探すのはそれはそれでどうなんだ。
「クラスだけ確認して真っ先に教室向かったからな」
とりあえず寝たかったし。
「瑞樹、お友達?紹介してよ」
結衣が会話に入ってくる。
「こいつは有原啓、去年同じクラスだったんだ。サッカー部でも一緒だし」
「有原くんか、よろしくね」
「よろしく、牧野さん」
「あれ、名前知ってたんだ」
結衣は少しだけ驚いていた。
「名前だけね」
結衣は男女訳隔てなくみんなと接するタイプだ。こうやって会話にナチュラルに入ってきて知り合いを増やすあたりさすがのコミュ力、俺には無理。そんで見てくれが可愛いから男子人気を集めている。有志による全校女子人気投票では当時1年生にして2位につけた。投票の主催者は啓。顔と名前は把握してて当然か。
そんなこんなで結衣を交えて3人でだべってたら、寝る間もなく新学期は始まりを告げた。
さてお待ちかねの自己紹介タイム。ウチの学校は1学年で10クラスもあるため、初めて見る顔も多い。それでもサッカー部の男子や去年のクラスメイトで仲良い奴、それに結衣もいるしうまくやっていけそうだな。
あとはー
「美波咲です。部活はサッカー部のマネージャーをやってます。よろしくお願いします」
美波だな。小柄で小さな顔、二重のぱっちりした目と可愛らしさを残しつつ、艶やかなセミロングの黒髪と穏やかな表情でどこか大人っぽい雰囲気を感じさせる美少女である。有志による例の投票は結衣と同票で2位、結衣が話しやすい女子としての人気を得たのとは対照的に高嶺の花として人気を集めた。
美波が体験入部でサッカー部に顔を出した時なんか、そりゃあすごい騒ぎだったもんだ。同級生はテンションがおかしくなり、先輩はこの後輩を他の部に渡すまいと必死だった。そんな男子部員の不安とは裏腹に美波は早々に入部宣言をし、今に至るまでサッカー部のマスコットとして君臨している。
美波が入部宣言してからサッカー部に体験入部する男子が増えたのは余談。
自己紹介が終わり、委員決めなどが行われる。クラスは新学期らしい賑やかさに包まれていた。
俺はというともう眠気が限界だ。別に波乱万丈な日々なんて要らない、刺激的な生活なんて求めてない。ただ部活やって家に帰って趣味に勤しむ、そんな変わらない幸せな日々が続くことを望んでるんだけどなあ・・・
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・・・zzz
あと一話プロローグ的な話が続きます。
力不足で説明描写が多く、展開が遅くて申し訳ないです。
プロローグ以降話をテンポよく描けるように全力を尽くしていく所存です。
よかったら見ていって下さい。