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自分はドブネズミ?

ラスト悪ガキの完結編です。

 ドブ鼠にゃドブ鼠なりの戦い方がある。


 悪ガキ時代から数年後、自分は高校生活を謳歌?していました。

 悪友仲間の高校進学率20%以下、そんな中底辺校とはいえ仲間内では奇跡の進学でした。

 もっとも最低ラインでの入学でしたので、成績も言わずともですが……。


 その当時、底辺校となると大学進学は希であり、大半が中退かあわよくば最後まで残れても就職です。

 進学するのは学年の中でも上層部のほんの一握りが推薦枠を校から貰い、推薦入試を受けてカツカツ進学する……。

 サボらず、先生には逆らわず絶対服従、役にも立たないテストの前には必死こいて復習し良い成績を修めたそんな犬のような生徒に与えられる特権、それが推薦枠なのです。

 それが出来なきゃ自己推薦に周り校外の多くのライバルたちと絶望的な勝負に回らなきゃなりません。


 ……底辺校だとそもそも授業の質そのものが違うので勝負になるわけがありませんが…。

 そんなわけで、先生に見放される=大学進学諦めなきゃならないと言う絶望的な状況になるわけです。

 

 ――かつかつで入学した自分は……。

 1年の1学期の中間テストで詰んだ~~~~(涙)となっわけです。

 そりゃそうです、だってマトモに勉強した事無いのだから…そもそも我が脳内に勉強と言う言葉すらありません。

 故に結果は言わずともです…。エライコッチャ(赤だらけ…)

 当然先生に媚びを売ることも出来ず、売るのはクラスの不良連中に自転車の万能鍵税込み300円也(鍵の一部を削りどの自転車のロックでも外せるようにした物)だったので当然の話ですが。


 夕方の駐輪場で材料仕入れ?が終わると、ほぼ徹夜でゲーム三昧、教室ではお昼寝タイムたまに内職タイムと言う優雅(怠惰?)な生活で赤点三昧の自分でも、出席日数足りていればところてん方式で2年に進級できるから不思議なものです。

 そんな生活が一年半高校2年の2学期になると進路の話が出るようになります。

そして、2者面談の日になり担任に呼ばれた自分は衝撃的な事を言われました。


 「お前の進路だけどな」


 とやっかい物を見るような担任は言葉を濁しながら口を開くと


 「自分は進学か、就職か、まだ考えて無いのですけど……」


 自分も同様に言葉を濁して返事を返すと担任は鼻で笑って返事を返しました。


 「クロネコ、お前の成績でドコに入るんだ?」

 「ぇ、今から頑張れば何とか…」


 能面のような無表情になる自分。

 そして担任は止めの一言を放ったのでした。


 「寝言は寝て言え。みんな必死で頑張ってるんだ、お前が進学できればみんな進学してるわ」

 「やってみなけば判らないじゃないですか?」

 「何人も見てきているから判る」


 担任の非情な一言に思わず閉口する自分。

 人さまの人生勝手に決めるなよな…。

 じゃあ、進学出来たらどうするのさ?


 「もし、自分が大学に受かれば…」

 「絶対に無い」


 きっぱり言い切る担任。


 「でも、確率は0じゃないです」


 あくまでも食い下がる自分に


「もしお前が進学出来きるならその前に大地震でも起きるわ。もう良いから次の奴呼んでこい」


 と担任は笑いながら返事を返すのでした。

 ……こっちは本気(多少)なのに……。


 この間わずか数分。


 次の人が入ると中からは明るい笑い声が聞こえてきます。

 話の内容から伺うと、どうやら進学希望でどうやらこのまま行けば進学は間違いなしのような感じです。

 耳を澄ませて聞いているとその子は自分とは違うVIP待遇で進学先の詳細なども見せている模様。

 クラス成績上位の生徒となると数分でゴミのように追い払われた自分とはえらい対応の違いです。


 しょんぼり肩を落とし教室へ向かう中、まるで不要なゴミ屑になったような気分。

 ただ惨めの一言です。


 「自分は下水をはい回るドブ鼠…?」


 思わず呟いていました。

 

 自分はドブ鼠で、相談室に居る成績の良い子だけは人間?

 

 ――否っ!

 どちらも人間也、成績なんて関係ない。 自分は人間だ!! ドブ鼠じゃない!!!



 ふつふつと沸き上がる怒りのボルテージ。

 昔の自分なら箒の柄を持って相談室へ乱入したでしょうが、数年の歳月は自分を変えていました。

 ここで乱入してもなにも変わらないと。


 教室に戻って良く話す就職組不良連中のクラスメイトに話題を振って見ると、予想通りの答えが戻ってきました。


 「進学? 俺らには就職しか無いだろ?」

 

 宗像志功が「我はゴッホになる」と言ったような感じで、コイツ何をトチ狂ってるんだ

? と。


 改めて知る我が現実。

 ここまでヤバい状況だったのかい…。

 でも、このままじゃ担任の予想通りの結果になるのは目に見えている……――しかし良いアイデアが浮かぶ訳も無くその日は其のまま教室を後にしました。


 その帰り道偶然悪友と再会。

 たわいのない会話の中でふと先ほどの話を切りだしてみると


 「ネズミ上等。 俺たちはドブ鼠だろ?」


 と平然と言う友人に思わず


 「自分は人間……」


 と返すと、友人は呟きました。


「――プライドで欲しいもの手に入るのか?」


 悪友の一言に雷に打たれたような衝撃を受けました。

 自分たち悪ガキにはFCソフトが欲しい、ゲーセンで遊びたい、海で遊びたい……。

 などなどの欲しいものやりたいことが一杯ありました。

 子供だもの。


 でも、その殆どをかなえることが出来ません。

 経済的事情やら親の都合などで。


 そんなとき、普通の子供たちなら素直に諦めるのでしょうけど自分たちは違いました。


 

 ……ドブ鼠にはドブ鼠の意地がある。

 欲しい物はプライド捨ててでも自分たちで手に入れる。

 

 この信念を元に力が有る者は怪力を発揮して賽銭箱を壊し小銭を集め、腕が有る者は親の車を無免で乗り回してゲーセンの機体を盗んで持って逃げ、知恵のある者は自販機の下を棒で掻きだし小銭をさらう。

 船で遊びたいなら、隣に有る港町まで遠征し、はしけ(沖に繋いである船までの移動手段に使う小舟)のロープを切断し、櫓や櫂の変わりに竹竿を使い沖まで漕ぎだし遊ぶなどして、知恵と工夫の粋を凝らし自分たちは欲しい物を手に入れて来たのです。


 違法すれすれ、時には危ういラインを踏み越え周りからはドブ鼠のように思われ、後ろ指を指されようとも……。


 ――何をしても、欲しい物は手に入れる。

 これがドブネズミの意地。


 いつの間にか、そのがむしゃらな気持ちを自分は忘れていたようでした。

 そして家路を歩く二人に会話が途切れました。


 「自分らはたしかに薄汚いドブ鼠……、――だったよね」


 ぽつり呟く自分に悪友は


 「お前のようなこすい鼠にはそれなりの戦い方があるだろ?」


 とうすらわらいをあげていました。

 友人に目を細め口角をあげる自分。


 「んだねぇ、昔みたいになんか考えるよ」


 そう言うとその日は友人と別れ家路についたのでした。


 家に帰るとそこでも一波乱、進学の件を話すと親からも「寝言は寝て言え」

と言われたのでした。

 親も進学させずに就職される気満々です。


 「あの、もし進学出来たら…」


 と自分が食い下がると


「その時は、学費は出す」


 と出すことは絶対ないとタカをくくったように返事を返すのでした。

 ――成績を見ればゴモットモな話ですが……。


 そんな親に「くぅぅぅ~」と自分は言うしかないのでした。


 でもそう言われると俄然燃えるのがドブネズミ。

 地獄の釜の底をはい回わり生き延びてきた捨てる物のない人間の強さ思い知れ。

 そんなわけで次の日、相談室に向かう自分がいました。

 先生たちの冷たい視線を浴びつつ…。

 とりあえず敵を知らないと話しにならないので。


 部屋で狙う大学の資料ファイルを開き受験科目を調べてみると……。

 英語が必須……(これだけでも詰んでるなぁ)と思いつつ更に見ると、後は選択で一科目。 そして面接。


 そして合格レベルが毎年120点くらいと書いてありました、つまり平均60くらいで良いと言うことも。

 

 なんと2科目で決まるのかいな…。

 じゃあ、得意分野の理科を絡めてやればもしかしたらいけるかも……。

 

 自分はその当時理科の成績だけは何故か良かったのでした。

 悪ガキをやっていたので、野山を遊び場にして火薬や小動物をオモチャにするうちに、生物の知識や物理法則は体に染み着いていたのでしょう。

 何せ、カエンタケのような毒草やスズメバチのような危険な生物の対処法は知らなきゃ自分が痛い目に遭うだけですから……。

 そんなわけで、特に得意だったのが生物でした。


 ……生物絡めた2科目なら何とかなる。


 そう考えたその瞬間、思わず漆黒の闇に、天使とともにいちずの光が射し込んだ感じがしました。

 地獄を走るカンダタに蜘蛛の糸が垂れてきたようにか細くすぐに切れそうな糸ですが…。

 でも有るのと無いのでは大違いです。


 ――やれる…?

 否、こうなったらやるしかない。

 ここで諦めたら、担任たちの思うつぼ。

 ここが頑張りどころと猿知恵にも劣る猫知恵を絞りついに考えた作戦が


 「サーチアンドデストロイ」


 他の大学には目もくれず、ねらう大学の過去問だけ2科目のみを徹底的にやる。

 そして主力となる生物は原爆を絨毯爆撃するかのごとく火力をもって徹底滅殺。

 出来れば狙うはパーェクト。

 英語は残りの全力を傾け、選択問題に死力をつくす(と言っても人並みの半分出来れば御の字状態ですが)

 生物で100、英語で20を取る作戦。

 まさに2科目の包囲線滅作戦です。

 そして学校の他の科目は卒業も危ぶまれるレベルに手抜きをする。

 まさに奇策というしかない作戦でした。

 

 そして苦行が始まったのです。

近いうちに投稿予定。


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