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ミッション1・part2の①

おおぬきたつや・著。


        『キグルミ大作戦!!』


 〈キグルミ・ミッション・1〉


   Part2の①



 意識を喪失(そうしつ)したのは、ほんの数瞬のあいだ、だったのだろう。

 暗闇の中でしきりとかぶりを振る少年は、むうっとしかめた(つら)でパチパチとみずからの両目を(しばたた)かせる。


「……くっ、たく、ひどいなっ、ゴータ! こんなのもはやイジメに近いものがあるだろう、さ……?」


 この自身の身体(からだ)自体にはさしたる痛みはないことを確認しながら、妙な違和感も感じていた。


 おそらくはこのじぶんの首もとのあたりに、それはあるのだが……。


 すぐに理解した。

 どうやらそう、さっきの衝撃(シヨツク)で顔からまんまと外れた、眼鏡がかろうじてぶら下がっているのだ。それをただちにこの両耳にかけ直そうとして、ソウと呼ばれる少年はまたその顔つきをしかめる。


「あれ、れ? あっ、そうか……!」


 間違いもないはず(のど)もとの邪魔っけな異物感に、しかしながらこの指先がまったくに届かない。

 両手をごそごそ胸もとにやっている感覚はあったが、どこかぼやけて、不確かなものがあった。

 なにやらとてもはがゆい感じだ。


 この、生まれてはじめての、まっこと()(かい)なる感覚……!


 つまりは、そうである。

 じぶんがしっかりと着ぐるみを着込んでいることを肌身(はだみ)で実感していた。

 ならば眼鏡はこの中にはまっているのだから、外側からでは一向(いっこう)に届きようがない。

 内側から素手でどうにか出来ないかとも思ったが、両手両足ともすっぽりと着ぐるみの内部にはまりこんでいるようだ。

 まるで抜けない。


「ううっ、これっ、うそっ? ……はあっ、ダメだっ!」


 今やじぶんも正真正銘、着ぐるみ人間なのだと自覚する。

 だがとは言えども、ただ突き飛ばされただけでこれをこうも簡単に装着できてしまうものなのか……?

 などと不可解な疑念を抱きながら、首周(くびまわ)りのもやもやはすっぱりと(あきら)めることにした。

 本人として、それでなんら()(つか)えがなかったものだから――。


「ま、しょせんは伊達(だて)メガネだもんね! ……ん、でもやけに視界がいいような? これってやっぱり、大口(クチ)からのぞき込んでるんじゃないんだ、まさかモニターが仕込んであったりして……??」


 ふと視線を上げれば今までとそう大差ない、クリアな視界が(たも)たれていたことにもまた少なからぬ驚きを感じた。単純に狭い(のぞ)(あな)から外の様子を覗き見るのではなくて、目の前にあたかも高精細の映像画面(ディスプレイ)が据えられたかの状態だ。

 この明るく広い視野にまったく何らの違和感も感じない。

 だとしたら、きっとこの着ぐるみの両目がいわゆる小型カメラで、ひょっとしたら拡大望遠(ズーム)とか視界拡張(ワイド)とかできるんじゃないのか? とまで勘繰(かんぐ)ってしまう。


「こうゆうのって、〝ヘッド・アップ・システム〟だとか言うんだっけ? ……はあっ」


 自然と、ため息が出てきた。

 ともすれば何とも言いがたい感慨にまで(ふけ)ってしまう。

 するとそこに、やがてなんら屈託(くったく)もなくした親友の声が、すぐ間近からこの耳朶(じだ)を打ってくる。


「よっ、ちゃんと入れたか? おれから見ても背中、ぴったし閉じてるからへーきなんだろーけど、すごいよな?? ジッパーもなしにチャキチャキ自動で閉まったもんよ!!」


「えっ、そうなの? そもそも着込んだこと自体、まったく意識する()もなかったから、さっぱりわからないんだけど……ほんとに誰かさんのおかげでね! ああいや、それより、この耳元でやけにはっきりとゴータの声がするのは、ひょっとしてお互いに〝無線機〟か何かがついてるのかな? ……これ、ただの着ぐるみ、なんだよね??」  


〈i144921|14233〉

(※うわ…! なんか、ムダにコワイですかね? おまけにどっちもあたまでっかちになってしまいました♡)



 たかが商業施設付きのマスコットが、(いた)れり()くせりの常軌(じょうき)(いっ)した最上級仕様である。

 呆れにも似た驚きがあった。

 いっそ(おそ)れにすら近いかも知れない。

 正直、馬鹿げている。


 なぜ、こんなものに、ここまでのこだわりを……!?


 そんないい知れない戸惑いにすっかり思考が錯綜(さくそう)する真面目人間に、しかしながら真後ろのずぼらなマイペースくんが、再度の警告を発した。

 しかもこの彼にはめずらしく語気(ごき)が真剣なセリフだったりする。


「しっ! ソウ、もう来るぜっ! じゃ、ここはじっと知らん顔してたほうが、いいんだよな? このまま動かなきゃ、バレないってもんだろーしよ!」


「えっ、だれがっ? ほんとにっ……!!」


 ぴったりと寄り添うように固まった二匹の怪獣の中で、ふたりの同級生たちは互いに息を潜め合う……!

 目を凝らして目前の画面に注目していると、今しもじぶんたちが入って来たこのただの袋小路(ふくろこうじ)の物置場に、新たな人影が現れた。

 複数、それもかなりものものしげに慌てふためいた様子でだ。

 これをきょとんとした目つきで迎えることとなる優等生は、後ろの友達が言っていたとおりの人数と、まずそれぞれがなしたるそれは意外な出で立ちになおのこと目を白黒させてしまう。


「ああっ、ひとり、ふたり、三人? いやっ、よん、五人か! えっ、でも……あれっ??」


「ん、あんだよ? あっ、ソウっ、見ろよっ、あいつら!!」



            ※次回に続く…!


※おまけ※


〈i144922|14233〉

※過去の挿し絵です♡ コワイ♡♡

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