ミッション1 part1の③
おおぬきたつや・著。
『キグルミ大作戦!!』
〈キグルミ・ミッション・1〉
Part1の③
「いやっ、だからまずいってば! ろくな断りもなしにこんな奥までズカズカと入り込んで、勝手に照明点けて、店の備品に手あかをつけて、おまけにその中身まで汚しちゃいましただなんて!? ここで捕まったら最悪、親か担任が呼び出し食らっちゃうよ!」
「かまわねーだろ? つーか、バレやしねーって、コイツをヘタにぶっこわしたりしなけりゃさっ、そよれか都合も良いいコトふたりぶんあるんだし、誰かにツバつけられちまう前に、ちゃんとじぶんのモノにしとかなくっちゃな! ああ、それにおれは、明かりだなんてつけちゃあいないぜ?」
「えっ? ……あ、だからそんな乱暴に! はあっ……もう、知らないからな? あと、背中のバッグは置いて、せめてその汚いスニーカーは脱いでからにしなよっ!」
入学からいまだ三ヶ月足らずで、さすがは学校でも名の知れたお騒がせの問題児童だ。
ほとほと好き勝手な言いようである。
親ならずとも他人が聞いたらなんと言うやら。
これに心のどこかでかすかな引っかかりを覚えながら、嘆かわしげなため息をついて、いやいやとちからなくみずからのかぶりを振るこちらは学内でも屈指の優等株だった。
もはや処置なし……!
それだからせめて、じぶんは当たらず障らずの静観を決め込んでやる。元より言っても聞かないし、この生まれつき人並み外れた体格と体力で、のほほんと傍若無人をやってのける天然の困ったちゃんをちからずくで止めるのも無理なのは知れていた。
よもやおかしな大事にだけはならないことを、ひたすら天に祈るばかりである。
そんな連れの苦悩もそっちのけで、野放図な男子高生はみずから組み付いた着ぐるみの背後へと回り込んでいた。
右肩に背負っていたナップザックをその場に放り出し、そそくさと両足の運動靴を脱ぎ捨てると、どれどれっ? と怪獣の内側をしげしげ覗き見たりする。
「んなの、わかってるよっ! ……おっ、背中、バッチシ開いてるぜ! ん、でもジッパーがねーんだな、こんなのどうやって閉めるんだ? 勝手に自動で閉じるか、さもなきゃ熱いから開けっぱなし? 背中が弱点になっちまうじゃん! まま、入っちまえばわかるかっ!」
「ううっ、ああもう、ほんとにだいじょうぶなのかね……?」
ガサッ、ゴソッ、ガッサ、ゴソソッ、ガッサササッ……!
心配げに見守る同級生の視界からは、その長身を今やすっぽりと着ぐるみの怪獣の影に潜り込ませる男子は、果たしてこれをちゃんとひとりで着こなせたものなのか?
おそらくは難儀しているに違いない
それはやたらにせせこましい感じの物音をしばらく立てたかと思えばだ。
その後、若干の沈黙を生じさせたりもする……。
そのさまをとかく怪しげ正面で見つめるばかりの級友は、ただ怪訝さにじっとふたつの眼を細めるが、その一瞬後には、ギョッと身体を大きく背後にのけ反らせてしまうのだった。
「わっ! ……なっ、なんだっ、ゴータっ? どど、ど、どうなってるのっ?」
驚きに目を見張る。
その場に身じろぎひとつすることなく固まっていたはず着ぐるみが、やや前屈みだったこの姿勢をその頭部ごと、ガバッ! と直立姿勢に立て直したものだから。
まるきり出し抜けのことである。
よってその驚きたるや半端なものじゃあない。
しかもこの時、見開いた瞳が、ビカッ! と強い光を宿したりもした。
それも両方、左右の眼ともにだ……!
ただの作り物とは思えない、それはそれは確かな生命力のごときものを見せつけるのだった。
それこそはただならぬ覇気か、オーラと言ってもいいだろう。
おまけ気のせいかも知れないが、その直前、一度、瞬き(!)をしたようにも見て取れた。
なにか、普通ではない。
そう、とにもかくにも尋常ならざる雰囲気なのである。
唖然となって立ち尽くす友達の前で、リアルなバケモノの着ぐるみの中身が、返事を返した。いつものおとぼけた調子なのが、その見た目とはもはやどえらいギャップを生じさせてた。
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「……ああっ、うん、なんかオッケーみたいだぜ! 背中ちゃんと閉じてるか、見てくれよ? あ、どうした、ソウ? おい、ソウってば! なにそんなキョトンとしてるんだよ?」
「えっ……ああ、いや! なんか、さっきよりかやけにリアルさが増したような気がして、内側からゴータが動かしてるんだよね? その、ドラゴン(?)の口から声がしてるみたいだし、でもほんとに、生きてるみたいだよ! ほんと、子供が泣いちゃうくらい……!」
「そーか? ははん、じゃあちゃんと、どこでもいつでもかんぺきコミカルに動き回れますっ! てくらいにマスターしなくちゃならねーな!! キグルミの真のリアクション道ってヤツをよっ、でもそんなに違和感ねーぜ、コレ? 快適快適! バッチグーだぜっ!!」
「リアクション道? でもそれで歌ったり踊ったりは、それこそ違和感が……ううっ」
上から下まで、ずんぐりむっくりと見るからに重そうな図体もなんのその!
その場で陽気にステップ踏んだり小躍りしたりするめっぽう強面の怪獣を前に、なおのこと場の空気から取り残される幼なじみは、しまいは顔つきがげんなりする始末だった。
※次回に続く…!
※追記※
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※キグルミのデザイン変更につき、今回の挿し絵もリテイクしたのですが、結果、あまり納得の行かないデキになってしまいました♡ ここらへんがプロとの差か、ま、しゃあないですよね♡♡
※以下は、主役キグルミ・デザインのこれまでの変遷です♡
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※いちばん初期のイメージです♡ デザインはシンプルなんですが、やっぱり挿し絵にするには描きづらいので、デザインを練り直すはめに…! あと、眉毛(?)もあるのもどんなもんでしょう?
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※一からやり直したのですが、やっぱり描きづらい…! とまた白紙にもどります♡
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※メインのキグルミ、この最新のデザインです♡ 結果、描きづらいのはどれも一緒だったのですが、とりあえずこの作者本人的には気に入ってます♡♡ こうなりゃもはや慣れるしかありませんよね♪
ちなみにこの全身のデザインも当然あるのですが、それはまた後ほど…!
つたないラクガキ、最後までご覧いただきありがとうございました♡
以上です♡♡