消えた村
私たちが住んでいる、宮川町のすぐ近く、林道を抜けた先にその村はあった。
その村は、代々語り継がれてきた土地神を深く信仰し、またよそ者を嫌った。
村のほとんどの人が、外交を断ち、村の中だけで生活していた。
不思議と、村の人には不満を持つ人や、異議を持つ人は現れなかった。
だが、村には絶対に守らなきゃいけない《掟》があった。
その掟を破ると、なんでも、その土地神様に怒られてしまうらしい。
そして、土地神様に怒られた人は《消える》そうだ。
事件が起きたのは今から15年くらい前になる。
その時の詳しいことは現在に残ってはいないが、村ではかなりの悲惨な出来事であったという。
村人のある一人以外は全員が死亡。
そのたった一人の生き残りは未だ行方不明らしい。
警察の見立てでは、今回のこの惨殺事件の犯人はその「生き残り」の人だそうだ。
だが、この事件には余りにも不可解な点が多すぎた。
まず、死体から推測される死亡時間は、事件が発覚した時間から約24時間前後であること。しかも、死体全てが、だ。
大体一夜にして、村人全員をたった一人が皆殺しにすることが果たして可能なのか?
もう一つ、不可解な点がある。
それは、犯人の足跡が全くないことである。
性別、年齢層、特徴がわからないならまだいい。
だが、逃げた痕跡、事件が起こったとされる時間帯で見かけた怪しい人影はおろか、村周囲で人影自体見かけなかったそうだ。
凶器は家庭用の包丁と推測されるが、遺体の傷口を見るには、もっと鋭利な物である可能性が高いとのこと。
また、遺体の様子からして抵抗した様子はなく、何かを恐れ崇めているようだったらしい。
そう、まるで村に語り継がれている「土地神様」の話しそのもののようだった…
「…」
言葉が、出なかった。
私は、リョウくんの手を握り少し、震えていた。
私たちの住む町の近くでこんなことが起こってたなんて…
驚きと恐怖が全身を巡る。
だが、それと同時に、その村に対する興味が膨れ上がってしまった。
「ナナちゃ…」
(キーンコーンカーンコーン…)
「もう、こんな時間ね。私はもう帰るわ。ユミとリョウくんはどうするの?」
もっと、ナナちゃんから話を聞きたい…
そう思ったが、時間も時間なので、今日はやめることにした。
「私たちも帰るよ。ねっ、リョウくん。」
「う、うん。」
リョウくんは完全に怯えてる様子だった。
ここは、リョウくんのことも考えて、すぐ帰ったほうがいいかもしれない。
「そう…じゃあ、二人とも、また明日ね」
そう言って、ナナちゃんは帰っていった。
「また、明日ね」
私たち二人も、足早と学校を後にした。