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メロディアス・スカイ  作者: 玖里阿殻
chapter 02:yellow moon
54/82

第五〇話 澱

 敵が高防御型の支援モンスターであることはすぐにわかった。種々のゲームで亀型モンスターは防御系に特化されているし、キングタートルの下位互換であるクリスタルタートルが耐久系のモンスターであることを踏まえれば、このボスも恐らくは同系であると推察してもいいだろう。くわえて手にもっている武器が杖で、その杖がきんぴかであること――つまり王笏であることと、その王笏が<左手に握られている>ことを考えれば、十中八九攻撃型じゃありえない。基本、ゲームではモンスターのタイプが見た目の影響を多分に受けている嫌いがある。まあ、それはただたんに視覚情報から長所や弱点を推理するというゲーム性を持たせるためにわざと記号化されているらしいのだけど、ともかく魔法杖<ウィザードロッド>ではなく権威の象徴である王笏を左手に携え、右手で盾を構える姿から考え得るタイプはおそらく、二つ。

 完全自己支援型魔法使いか、

 ないしは、

「召喚術だ」

 と、ユーフがいった。

 キングタートルは王笏を掲げ、呪詛のような声をあげた。

 王笏の先端に嵌められた宝石がぎらりと光り、敵が五体召喚された。

 召喚されたのは総てクリスタルタートルだった。

 見た目には変わりないようだけど、ダンジョン産のとは能力やAIが違っているのだろうか?

 それは現状では判断できないけれど、ともかく、ボクの読みは当たっていた。

 恐らく、キングタートルの戦闘方法は雑魚を召喚し、そいつらを支援するというものだろう。その際、回復魔法でいちいち取り巻きのライフを回復されていたのでは倒すのも面倒だろうから、回復禁止を宣言したのはやはり良い判断だったんじゃないだろうか。

「わたし、もってる」

「え?」

「初級ヒールだけどわたし、スキルセットしてるよ」

「そうなんだ」

 ふうん……。

 そうなんだ……。

 撤回しよう。

 やっぱり、あまり良い判断じゃなかったみたいだった。

「ごめん……」

「やっぱりすこし、抜けてるんですね」

「まあね」

 抜けていること。

 欠けていること。

 捩れていること。

 歪んでいること。

「それに関しては、自負があるから」

「あはは。だけど、負けないから」

「なんの話?」

「ダメダメなこと。それは絶対に、負けない」

 はたしてそれは張り合ってもいいことなのだろうか。

 判然とはしないけれどしかし、そんなくだらないことで張り合うというのもそれはそれでボクたちらしいような気がして、すこし面白かった。

 ボクは云う。

「ボクも、負けない」

「じゃあ勝負だね」

「だけどこの場合、勝った方がダメダメになるの? それとも負けた方がやっぱりダメダメなわけ?」

「もちろん、負けたほう!」

「そう」

 そうなんだ。

 なんだろう、本当に。

 なにを争ってるんだか。

 わけがわからない。

 だけど、

 自然と笑みが零れた。

 急に、共闘という言葉が頭に浮かんでやる気がみなぎってくる。

 初めてのレイドボスに、初めてのパーティー戦。

 愉しい。

 ほんとうに、愉快な気分だった。

 こうして誰かといること。

 疎通すること。

 分かち合うこと。

 そういった些細なことが、本当に、いまはひどく嬉しい。

 もう否定はしない。

 ボクは、

 ユーフといることが、

 友達と、こうした日々を過ごせることが、

 本当に、

 本当に心の底から嬉しかった。

「いくね」

 彼女が云った。

 その声はどこか、明るい。

 スタッカートみたいに、弾んで聞こえた。

 ユーフも同じ気持ちなのだろうか。

 人の気持ちなんて決めつけたくないけれど、ボクと同じなんじゃないかって、そう思った。

 そう思いたくなった。

 横目でボクはユーフを見遣ると、彼女はくすくすと笑って、

 そして、

 唐突に、始動した。

 彼女の持つ大剣は攻撃後のディレイが長い。

 にも関わらず、彼女は流れるような動きで、それこそ、ほんとうに水のような動きでクリスタルタートルを次々と斬っていった。

「ボスの方はお願い!」

「わかった」

 ボクは返事をして、キングタートルへと突進する。

 さて。

 どう攻略しよう?

 走りながら、ボクは考える。

 普通に考えれば状態異常に耐性がありそうだけど、もしかすると有効なものがあるかもしれない。

「……よし」

 ひとまず、覚えている魔法をすべてぶつけてやろう。

 ボクは掌をキングタートルへと向けて、魔法を放つ。

 最初はブラックフォグ。

 設置ではなく、暗闇効果を狙う。

 結果はmiss。

 恐らく耐性持ちだろう。

 じゃあと、ボクは次にパラライズショックを放った。

 しかし雷球は甲羅型の盾によって防がれた。

「盾は魔法カットなのか」

 ……いや、ちがう。

 盾は全攻撃カットと考えたほうがいいだろう。

 ようは無敵ポイントだ。

 恐らく、亀のマストアイテムである甲羅に関係するすべてが、無敵。

 そうなるとなかなかに厄介だった。

 正面から攻撃するにはまずあの盾を掻い潜る必要があるし、後ろから攻めるにしても背負った甲羅に配慮しなければならない。

 そうなると躰の側面か、頭部。

 そこらが狙いどころだろう。

 あるいは盾からはみだしている足や、笏杖を握る手なんかも狙いどころとしてはよさそうかも。

 あれだけの巨体だと、盾で防御できる部分というも限られるだろうしね。

 なんだかよくよく観察してみると、付け入る隙は多そうだった。

 だけど頭。

 とりあえず頭を狙おう。

 ボクはもういちどキングタートルへと手を向ける。

 もくもく、とキングタートルの頭上に黒い雲が形成されて、

 ずかん!

 雷が落ちた。

 ダメージはきちんと通ったらしい。

 敵の動きが止まる。

 雷魔法の低確率麻痺が発動したみたいだった。

 好機だと思い、ボクは一気に敵との距離を詰める。

 巨体をよじ登り、頭部を斬りつけようと思った。

 しかし近づけば近づくほどに、それは無理だと思った。

 大きすぎる。

 崖と対峙するかのような、そんな違和感というか、威圧感がボクを襲った。

 しかたがないからと、ボクは無防備な脚部に剣で突きたてた。

 亀の皮膚はごつごつとしていて、とても刃が通りそうにはなかったけれど、難なくと攻撃が通る。

 剣を引き抜き、今度は剣を両手で握って、横に大きく払った。

 フィニィッシュアタックだ。

 本来ならばそこに後ディレイが発生するのだけれど、

 さらに、

 剣の柄を、

 強く、

 握りしめる。

 ――ボクは、

 剣撃スキルを発動させた。

 一回、

 二回、

 三回、

 四回、

 五回!

 素早い動きで、剣を払った。

 久しぶりに発動させたけど、これが本来、ボクが使用している狩り用物理スキル。

 連殺。

「はあああ!」

 と。

 後ろから声がした。

 ユーフだ。

 たぶん、ユーフも麻痺したのを確認して追撃するために一旦こっちにきたのだろう。キングタートルはそんな彼女の存在に気づき、王笏を高々と振り上げると彼女の頭上目がけて振り下ろした。

 なんてことのない、通常攻撃。

 しかし、その手に持った武器があまりにも大きいがために杖は風を切り裂き、大気の悲鳴を轟かせながらユーフへと襲いかかった。

 地面が大きく抉られる。

 けれどもそこに、ユーフの姿はない。

 ユーフは華麗な身のこなしで杖を躱し、トン、と杖の上を駆け上がっている。

 そしてそのままキングタートルの躰へと飛び移ると器用に足蹴跳躍をくり返し、正面。

 キングタートルの双眸、まさに目の前へと躍り出た。

 大剣が朱に輝く。

 煌々と、

 爛々と、

 刹那。

 剣先に光が集い、膨れて――

 赤い軌跡が、十字を結んだ。

 光が、破裂する。

「グオオオ!」

 火花が散り、光が四方に零れ、悲鳴にも似た叫びが洞内を振動させるなか、ユーフは中空でくるりと一回転し、落下途中でもう一度大剣をキングタートルの躰に突き刺した。

 恐らくは落下ダメージ防止だろう。

 その攻撃にはダメージを与えようという意思は感じられず、案の定ユーフはすぐに大剣を引き抜いて地面へと着地した。

 ユーフがこっちに駆けてくる。

 なんだかすごくかっこいい動きをしていたけれど、彼女は相も変わらない笑顔を浮かべ、ボクに話しかける。

「無理に物理で頭部は狙わなくていいからね」

「わかってる」というより、ボクにはとても真似できそうにない。「魔法主体で戦うよ」

「うん。それがよさそう」

「というより、取り巻きは?」

「倒したよ」

「全部?」

「はい」

 嘘だろう、とボクは辺りを見回した。

 ほんとだ。

 クリスタルタートルはもう、いなかった。

「早すぎない?」

「本気だしたから」

 と、彼女はおどける。

 ボクは、おどろくより他なかった。

「なんか、思ったよりも大丈夫そうだね」

「まだあっちの攻撃を受けてないから、被ダメージがどれくらいなのかはわからないけど……そうだね。大丈夫そうかな」

 まあ、このままいけばだけど。

 そうユーフは続けた。

「みて」

 ボクは彼女に促されるままに、彼女の指差した方向を眺める。

 低い呻り声。

 キングタートルは再び王笏を掲げて、取り巻きを召喚しようとしている。

 今度はべつの敵が召喚されるんだろうか。

 そう思っていると、眩い光のあとに再びクリスタルタートルが現れた。

 数もきっちり、また五体だ。

 もしかすると、この敵はクリスタルタートルしか召喚しないのだろうか?

 まあ、それなら楽でいいんだけれど、できればもっとべつの敵もみたいという欲求もあった。

 初めてのレイドボスだけど、これで意外と余裕があるのかもしれない。

 気が昂ぶっている所為で、危機意識がぶっとんでいるだけの可能性もあるけれど。

「敵、少し強くなってるね」

「え?」

 強く?

 それはいったいどういうことだろう、とボクは首を小さく傾げた。

 クリスタルタートルの姿かたちは変わってないようにみえるけど、ユーフはどこをみて強くなったと云っているんだろうか。

「名前をみてみて」

「べつに、一緒に見えるけど」

「ほら、すこし白みがかってる」

「白……?」

 一瞬、甲羅とか、装飾されたクリスタルが白みがかっているのかと思ったけれど、すぐにそれが勘違いであることがわかった。

 色だ。

 名前の色が、青から少し、水色へと変わっている。

 つまり。

 すこしだけ、敵のレベルがボクたちのレベルに近づいて来ている――。

「たぶんだけどこの取り巻き、すこしずつ強くなるタイプなのかも」

「そんなタイプがあるの?」

「レイドボスって基本的にライフ残量で行動が変わるものだからね、このキングタートルの場合はそれが取り巻きに影響するってことなんだと思う」

「なるほど。ボスにダメージを与えれば与えるほど召喚が強まるってわけだね?」

 それは……厄介なことなんだろうか?

 いまいち、ぴんとこない。

 個人的には巨躯であるレイドボスの方が発狂してみせるほうが怖いのだけど、雑魚が強くなる必要性はあるのだろうか? そう考えて、思えばここが低レベル層のダンジョンであることを思いだした。そうなるとここはレイドボスとの戦い方を学ぶ、いわばチュートリアル的な場所なのかもしれないし、あまり、敵の行動に意味を見出さないほうがいいのかもしれない。

「とにかく、どんなに取り巻きが強くなったとしても、わたしたちを倒せるくらいまで強くなることはないと思うよ」

「まあね」

 それは当然だと、ボクは首肯する。

 だって、このダンジョン自体の推奨レベルが35なのに、レベル60を超えるボクたちがやられてしまう可能性があるとなればそれは、かなりゲームバランスが崩壊していると云わざるをえないだろう。だからこそ冷静で、正常な判断で、大丈夫だと思った。

 いくら見たことのないレイドボスだからといって、

 いくら雑魚のレベルが上がったからといって、

 取るに足らない。

 そういう状況にあると、ボクは考えていた。

 ユーフだってきっと、そう思っている。

 いや、だれだってそう思うはずだ。

 推奨レベルの詐称だなんてことが、ゲームの世界で許されるわけがないのだから。

 ボクたちは再度、取り巻きを全滅させてボスへと斬りかかる。

 キングタートルが杖を掲げ、再び取り巻きを召喚する。

 それを、また全滅させる。

 斬りかかる。

 召喚される。

 潰す。

 出す。

 潰す。

 出す。

 そういった繰り返しが何度か続き――








 白へと。








 クリスタートルと記された文字の色が、白へと変わった。






 レベルが対等であることを示す、白へと。

 ボクたちと同等である、白へと……。






 だけど。



 そんなことは些細で。



 あまり、関係ないことで。



 ボクとユーフは、純粋に楽しんでいた。

 敵が強くなればなるほどに、

 敵が、ボクとユーフに近付くほどに、

 戦闘が。

 ううん。

 協力できることが増えていって。

 自分の限界を超えるような感覚が、

 際限を、天井を突破するような感覚が芽生えてきて、

 それが本当に、楽しくて、

 たのしくて……

 



 ああ。




 ほんとうに、清々しい気分だった。

 ユーフといると、ほんとうに、嫌な現実世界のことを忘れることができる。

 君が時々、笑顔を見せてくれること。

 面白いことを云ってくれること。

 手を繋いでくれること。

 優しい声を、かけてくれること。

 そういったことが本当に青々としていて、

 清涼としていて……

 こんな時間が永遠に続いてほしいと、

 ボクは、

 願わずにはいられなかった。

 そのためなら、敵がいくら強くなっても構わない。

 ほんとうに、

 ずっと、

 ずっと、ずっと、

 へとへとになって、

 泥になるまで。

 果てるまで。

 こうしていたい。

 一緒に、戦い続けていたい。

 そう思った。

 君のその強さを。

 君のその姿を。

 眺めていたいと、

 心の底から思って、

 ボクは、思って……







 ギィン!








 鈍い音が鳴った。

 振動が手から脳天へと駆けぬけた。

 歯を食いしばり、ボクは連殺を繰りだす。

 鈍い音を立てながらも攻撃はクリスタルタートルの躰を削り、

 ようやく、

 ようやく一体を、片づけた。

 片づけることができた。

 しかし、

 あと、まだ三体。

 三体もいる。

 ボクは息を切らしながらも、立ち位置を調整。

 調整……。

 その途中、ボクの躰を覆う赤い輝きが失われた。

 舌打ち。

 ボクは叫ぶ。

「ユーフ! BT! あとこっちST切れ、ディレイ11!」

「うん、わかった! いまいく!」

 そうユーフは叫び、キングタートルの水槍魔法を躱しながら突進し、躰を駆けあがっていく。

 それからまた、頭部へと到着すると、今度はその両眼を狙って大剣で払った。

 一時的とはいえ、視界を奪われたキングタートルはよろけ、その躰を近くの岩壁へとぶつけた。

 ずん、という音が響いて、がらがらと壁が崩れて落ちた。

 ユーフは攻撃と同時に素早くキングタートルの躰から降りて、こっちに向かって走ってきている。

 それをみて、ボクもよたよたと歩きながら彼女の方へと向かった。

 彼女は走りながら呪文を呟き、自分の親指をがりと噛む。

 流れた血で自らの掌に紋章を描き、それからボクと交叉する刹那にその掌を優しくボクの躰に押しつけた。

 途端、ボクの躰は再びじわりと赤く輝いた。

 攻撃力上昇のまじない。

 自傷スキル。

「切れたらまた呼んでね」

 と、ユーフは休むことなく、足を止めることもなく、再びキングタートルへと向かっていった。

 それを、ボクは待ってと引きとめる。

「……大丈夫?」

「なにが?」

「ユーフ、無理してない?」

「してないよ。それにいま、わたしすごく楽しいの」

 そういって、

 彼女は笑う。

 変わらない表情で。

 変わらない態度で。

 ボクは心配になった。

 現状、彼女の役割はボスにダメージを与えることと、こうしてボクに定期的にバフをかけるにくること、その他にもPTアイテムとMP、STの管理。全体的な敵の位置取りから行動指示、作戦立案とをこなしている。

 どうしてそんなことになっているのか。

 どうしてこんなことになっているのか。

 問い詰めればもちろん、それは召喚される敵が強くなっていることに起因しているのだけれども、それと同時に、ボクが不慣れだから。

 レイド戦に不慣れだから、彼女の負担になっていることは避けようのない事実だった。

 ううん。

 問題なのは、経験不足だけじゃない。

 ボクのステ振り、スキル振りが著しく長期戦に向いていないこと。

 有り体にいえば、育成失敗していること。

 そういった面で、ボクはかなりの足を引っ張っていた。

 それなのにユーフは絶えずボクを気遣い、ボクに役目らしい役目を命じ、それでもある程度行動の自由が認められるような立ち周りを画策し、指示し、そして笑ってみせた。

 それが、本当にきつかった。

「ハイタッチ」

「え?」

「がんばるための、ハイタッチ」

「…………」

 パン、と。

 ボクとユーフはハイタッチを交わした。

「ぜったいにやっつけようね!」

 そういって、彼女はまた駆けていった。

 ボクは左手のクスリ指をツータップさせて、残りわずかとなったST薬を使用する。

 それからクリスタルタートルをユーフに近づけさせないように立ち回り、誘導して、位置を調整して……そして、一体ずつ戦闘をしていく。

 ボクの攻撃。

 クリスタートルは倒れない。

 ふたたび、ボクの攻撃。

 けれども倒れない。

 攻撃、攻撃、攻撃。

 ばきん。

 やっとで、倒れた。

 血の盟約が切れる。

 ボクはまた叫ぶ。

「ユーフ、BT!」

「…………」

「ユーフ?」

 だめだ。

 聴こえていない。

 しかたがないので、ボクは自力のみでクリスタルタートルへと切りかかる。

 鈍い音がした。

 また手がしびれた。

 硬すぎる。

 ボクの自力じゃ、物理でこいつらを倒せない。

 かといっていま、魔法を何度も繰りだせるほどMPに余裕はない。

 ボクにいまできること。

 レイドボスを倒すにあたって、いまできる最善。

 それは、叫ぶこと。

 支援を求めること。

 そんなことは、わかっている。

 ユーフからすぐに血の盟約を受け、取り巻きのヘイトをボクが管理する。

 それがボクの役割であり、仕事。

 それしかない。

 それしかないのに。

 声が、でない。

 ユーフにサポートを頼むことが合理的であること、

 そんなことは、理解しているのに。

 結果的に、それが彼女の負担を減らす最善策であるとはわかっているのに……!

「ユーフ! ごめん、BT! あとサイドワン、アップ! ディレイ32!」

「りょうかい!」

「…………」

 くそ。

 悔しい。

 悔しい、悔しい。

 本当に――

 ボクは、

 足手まといだ。

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