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メロディアス・スカイ  作者: 玖里阿殻
chapter 01:blue sky
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第三話 ログアウト

 町を離れて、フィールドマップ上でボクは後ろを振り返った。

 だれもいない。

 近くにいるのはスカイだけだった。

 ボクはスカイに身を寄せる。

「怖かったね」

 そういうとスカイは首を横にふって、それを否定した。

 じつに漢らしいやつだ、とボクは思った。

「甘かったなあ」

 この世界で死ねば実際に死ぬという噂が湧いてからは、ある程度の治安は見込めるものだとボクは考えていた。

 実際に、PK行為などは激減、というよりか絶無になっていた。

 当然の流れだと思う。

 殺人行為を認めるやつなんていない。

 町中でいくらPKできるからといって、実際にそれを行ってしまえば、他プレイヤーからどう見られてしまうのか。そんなの、考えるまでもない。

 秩序を維持するために、相互監視が働きだす。

 そんなことは、あたりまえだ。

 それじゃあ、町中で堂々とボクを殺そうとしたイグニスは、現実世界でいうところの異常犯罪者だった?

 世界は治安を保っているけど、ボクはたまたま、ごく少数の異常者と接触してしまったと、そう考えるのが正しい?

 きっと、違う。

 一度きりの命という言葉だけで、この世界が現実に即していると考えたことが、ボクの間違いだった。 

 この世界はゲームだ。

 魔法だって使えるし、架空上の生物がそこら中に跋扈している。

 そいつらを倒せばアイテムとお金が落ちるし、物理法則だってなんか無視している。

 第一に、ここには殺人行為を違法だと定める文書はない。

 あったとして、それを裁くための司法機関もないし、取り締まるための行政機関もない。

 それに、というかここが一番のポイントなのかもしれないけれど、この世界にいる人間はMMOプレイヤーだけだ。ネトゲプレイヤーの多くに、秩序だとか、平和だとか、そんな言葉が通用するとは思えない。暴論だった。ある程度のプレイヤーには受け入れられるとは思うけれど、現実世界ほどにその比率が偏るとは思えない。

 たぶん、遊びでプレイヤーを狩る人間は多く存在する……と思う。

 検証のために、危険なことを侵すやつらは現れると、思う。

 そもそもで、本当に死ぬかどうかもわからないのが現状なのだから。

 ともすれば今が一番危険な時期なのかもしれない。

 やらかす奴は、やらかさないと判らないから。

 きっと、近いうちに世界はやらかされる。

「……町を離れよう」

 正確には人から、だけど。

 面倒事は、嫌いだから。

 思えば、様子見が現状打てる手の中で一番の良さげだ。

 それじゃあ、とボクは踵を返した。

 あくまでもゆっくりと、目立たないように。

 この世界からログアウトするように、ボクは歩き出した。


挿絵(By みてみん)

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