ねえ、お月さま。わたしね、
おじいちゃんとおばあちゃんが大好きだった。おじいちゃんはいつも笑っていて、わたしのすることを何でも許してくれたの。昔にね、おじいちゃんが大事にしていたお茶碗を落として割ったことがあったんだけど、おじいちゃんは笑顔でわたしの頭を撫でてくれたんだ。わたしは悪いことをしたら、いつもお母さんとお父さんからきつく怒られていたから、どうして笑って人を許せるのか不思議だった。しわしわの手で頭を優しく撫でてくれたその温かさは、いまでもはっきりと思いだせる。おばあちゃんも、そう。おばあちゃんはおじいちゃんと比べればすこし怒りっぽくて怖かった部分もあったけど、いつもわたしに子守唄をきかせてくれたの。わたし、おばあちゃんの声が好きだった。あの声をきくととても心が穏やかになって、ぐっすり眠れたんだ。子守唄に合わせて、わたしのからだをゆっくり触れるように叩いて……それを、わたしが眠るまでずっと続けて、繰り返して……だからわたし、怖い夢をみても平気だった。おばあちゃんがいてくれたから。おじいちゃんが笑ってくれたから。二人が、いつまでもそばにいてくれたから。だからわたしは、こんなに元気になれた。立派に、ここまで歩いて来れた。
わたしね。
しあわせだった。
ほんとに、しあわせだったよ。
だから、ありがとう。
ありがとうね。
ばいばい。
またね。
またね……。




