挿話一 血の憎悪、その欠片
ゲーム世界と現実世界を混同する人はいて当然だし、混同したところでどちらの世界でも同じ倫理観を持つことが出来ればそれに大した問題はない。むしろ問題なのは二つの世界を完全に切り離して考えることができる人間の方にある。だって、そうじゃないか。ゲームだって現実の一部なんだから。魔法のように突然、降って沸いた神のシステムでもなしに、それらは人が生み落とした世界なのだから、それらを完全に切り離して考える方こそ異常。画面の向こうには生きている人がいて、秩序を維持するために人が運営をしている。マクロとミクロの違いはあれど、社会の仕組みにあまり相違はない。ゲームはオンラインであろうとオフラインであろうと現実世界に即している。そう、考えている。だからこそゲームはゲームと完全に割り切ることができる人間が怖い。ゲームなのだから法は犯しても構わない。ゲームなのだから人権を踏み躙っても構わない。そういうやつらがひどく怖い。だからそういうやつらを殺してもいいと思っているし、実際にそういうやつらをわたしは殺してきた。この手で幾度となく、如何程の慈悲もなく。その行為は法に触れるのか? しったことじゃない。わたしは、初志貫徹している。徹頭徹尾殺戮している。揺らぐことなく。歪むことなく。ゲーム世界であろうとも、現実世界であろうとも、そういった思想は常に抱いて、常にそういう行動をとってきた。現実で行ってきたことを、このフィールドに移しただけ。わたしは変わらない。絶対に変わらない。普遍的不変。ゲームと現実を同一し、共通の主義をもって行動している。だからこそ赦せない。単純に。善人ぶったやつらが。裏で雑魚を狩り続けるあいつらが。殺してやりたいくらいに。いや、殺してやると思うくらいに、憎かった。殺したあとでさえ、憎かった。




