プロローグ
プロローグ
──親愛なるヘリオスへ
アルレット花咲く季節となりました。いかがお過ごしですか。
わたしとあなたがこうやって手紙を交わすようになって五年が経ちました。わたしが川に流した、誰宛でもない瓶に詰めた手紙をあなたが拾ってくれたことから始まったこと、もちろん覚えているわよね。それから、いろいろな話をして、時には夢も語り合ったりした。……もちろん手紙の中で、だけど。
今日はとびきりの知らせがあるの。ねえ、覚えてる? 将来の夢はプリマヴェーラになって、この国の人たちの役に立つことだって、未だに小さな子供みたいなことを言うわたしのことを、あなたは笑ったりしなかった。それどころか、あなたはそれなら自分はプリマヴェーラつきの騎士になるんだって、そう言ってわたしを驚かせた。でもあなたはわたしより先に、王様の騎士団に所属して、騎士になるという夢を叶えたのだから、本当にすごいわ。だからね、わたしも自分の夢を叶えるんだって、うんと勉強したし、神様にお祈りもしたのよ。だからかしら、昨日わたしが世話している花壇にプリマヴェーラの花が咲いたの! ねえ、これって奇跡だと思う? わたしが花に愛されし乙女──プリマヴェーラになれるだなんて!
王都にいるあなたと片田舎に住むわたしとじゃ、手紙を交わすことは出来ても一生会えないと思ってた。でも、これで胸を張ってあなたに会いに行けるのよ。
今、この手紙を書く手が震えています。あなたに会えるのが嬉しいけど、ちょっぴり不安です。だって、わたしは花が好きなだけのただの田舎娘ですもの。でも、あなたに会えたならどうしても伝えたいことがあるの。だからどうかその時は少しだけ時間をください。
冬が訪れる前にはアスタルテに向かえると思います。それまでお体を大切に。疲れにはレアルの葉がいいわ。
では、直接会えるのを楽しみにしています。
──あなたの親友リシュナより