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歩みゆくは魔王か英雄か  作者: mebius
リュートと言う男
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山賊

 「兄貴!」


 妹がそう言って慌てた様子で話し掛けてきた。


 「兄貴、まずい。軍がくる! ここを逃げないと!」


 ついに来たのか……そう思って妹へと俺は告げる。

 

 

「俺達は逃げん。ここには病気の子供達も沢山いるんだ、ここで逃げれば子供の命もない」


 「だけど勝てる訳が……」


 そう勝てる訳はない。ただの山賊で戦えるものすら少ない。そんな状況で勝つ事はできない。実の所兵士10人程が居てももう戦えないだろう。


 「やるしかないんだ」


 俺はこんな腐った世界で。追われるまま追われ。滅ぼされる。そんな事はごめんだ。


 「いいか、子供達を隠し、俺達が囮になって子供達を生かすんだ! いいな!」


 妹は考え込んだ後賛成とばかりに頷いてくれた。やってやる!この命が尽きるまで!


 さぁ、後は討ってでるだけだ。俺ららしく最後の華を咲かせようじゃないか!


 「行くぞ!」


 そうだ。後には引けない、命に代えても。











 リュートが今手に一枚の依頼書を持ち悩んでいる。


 「リュート殿! 受けましょう! 折角の指名による依頼ですよ! これで名誉が上がります!」


 

 名誉なのです!と言わんばかりにナターシャの目には火が灯っている。

 手を両手を胸に力強く拳を握り力説しつつ騎士になった後を想像しているのだろうにやけている。


 名を上げたいのはお前だろうが。そう思いながらリュートは話し続ける。この依頼を持ってきた斡旋所の長と国からの使者の二人へと。


 「どうして俺に指名を?」


 「何度か依頼を受けた者が返り討ちに遭いましてね。その中にはAランクの者もいました」


 「俺はBランクなんだが」


 そう、より低いランクの者にさせてどうしようと言うのか。


 「分かっていますよ。特例として処理させて頂きます。あなたの実力はAランク以上の者でしょう。報告書によるとたまたま遭遇した際にSランクの冒険者を助けるような働きもしています。実力はAランク以上との事、しかし向上心がない為昇級を受けていない。と書かれています。今この近隣にAランク以上は居ません、腕に覚えがあるものはみな弱小国へはあまり来ませんからね。だから貴方にお願いに来ました」


 「それは強制的か?」


 リュートは平坦な声をあげると目を細めて相手を見た。


 「申し訳ないのですが貴方がこれを受けて居なければ街が被害を受けるのです。貴方は権力を嫌うと聞きました。だからこれは純粋にお願いです。強制力はありません。どうか街を護って貰えないですか?お願いします」


 それならば……と考えるもリュートはあまり乗り気がしない。渋っているリュートへとリリスが声をかけて来た。


 「お兄ちゃん」


 「どうしたリリス?」


 「やってあげよう。かわいそうだよ」


 可哀想か。リリスのその純粋な想い、それが理由でいいか。そうリュートは思い承諾することにする。渋っていたのが妹の一言で変わる。相変わらず妹には恐ろしいまでに甘い男である。妹が世界が欲しい、等と言ったら笑顔で次の日には征服して戻ってくるのでは無いだろうか……


 「そうか、なら受けるか」


 それだけ渋ったのにそんな簡単に!!?ナターシャはリュートの顔を見て驚愕するがリュートは気づいていない。


 「それで山賊が国を襲ってると言うことだが」


 「はい、山賊はここナーガディアン国の西の方角に位置する領地ダイガルの街を襲っています、その襲撃を防ぎ山賊を打倒して欲しいのです」



 「Aクラスが失敗したってのは?」


 「二人ほど手練れが居るようです。恐らくその攻撃方法からして虎人かと思われます」

 虎人、ワータイガーとも言われ、圧倒的な近接戦闘で戦う者達、その身体能力は亜人の中でも相当なものだ。


 「なるほどね、とりあえず現地に行って情報を集めるよ」


 「ありがとうございます、どうかよろしくお願いします。」

 国からの使者と斡旋所の長はそう告げると頭を下げた。


 国からの使者が平民に頭を下げる。普通の国ではあり得ない。だがこのナーガディアンという国はそういう気質の国。地位や権力に拘らず下げるべき所では頭を下げ亜人への対応も良い。ミクトランテ教徒を邪教とし、国から追放しているのだ。そしてこの地では亜人は迫害されない。だからこそリュートはこの地へ定住しており、まただからこそこの国は小国のままなのだろう。

 そしてここは王都ナーガディアン、この地と僅か4つの領土を持つのみである。四方を囲む形で領土が位置しており、どれか一つの領土でも落ちよう者なら即座に王都での最終決戦が始まる。そんな危うさも持っている。


 「ナターシャ、旅の準備を、リリス、お着替えしておいで」


 「はい!」


 「は~い!」


 ぱたぱたと音を立ててリリスは部屋へと戻りナターシャが意気込んで旅の準備をしはじめる。それぞれ別の意味でこの旅が楽しみなようだ。ナターシャが名を上げられるかは知らないが。






 「それで何か分かったか?」


 リュートは今ダイガルの酒場でリリスとナターシャと話している。

 リュートはリリスを連れ、ナターシャは一人で調査を行っていたのだ。


 「はい! 山賊はここよりさらに西方に位置する山を拠点にしているようです。 一月に一二度の襲撃を行い食料を奪っていくという話しです」


 ナターシャはよどみ無く答える。以前のリュートによる恐怖の地獄巡り?のせいか意図せずリュートに従順になってしまっていた。


 「そうか、他には?」


 リュートはそう言って続きを促す。


 「はい、ですが住人に死者はいないそうです。食料を必要な食料を奪えばすぐに退却するようですね。それと――」


 「それと?」


 「はい。騎士を目指す私がこういうのも何ですがあまり領主の噂は良くないようです」

 「どんな噂だ?」


 「最近になって亜人に対して対応が酷くなったそうです。普通の人間に対しての対応はいいのですが……それでミクトランテ教の信者ではないか、そういう噂が立っています」


 場所が変われば見方も変わる。他国では主な宗教であるミクトランテ教だがこの地では邪教として扱われている。ミクトランテ教の者だと知られれば排斥の対象となる。



 「そうか。よく頑張ったな。ありがとうナターシャ」


 リュートに褒められて嬉しかったのはナターシャは「はい!」と元気よく応えている。


 「依頼になるほどだ、かなりの回数襲撃されているんだろうな、それでも死者が一人もいないのは気になるな」


 「殺さないようにしていると言うことですか?」


 「ああ、少なくとも戦闘をするんだ。一度も死者を出さない方が不自然じゃないか?」


 「そうかもしれません、ですが何の為に?」


 「さて、な色々推測はできるがそこからは絞れないな。一度襲撃の現場を見たいな」


 「分かりました。それでは襲撃があるまで待機と言うことですか?」


 「ああ、しかしやけに物わかりがいいなナターシャ襲撃をわざわざ見るなんて騎士を目指すお前は嫌がるだろう」


 「あまり良くはありませんがリュート殿も何か考えがある様子ですから。それに――」


 「それに?」


 ナターシャは姿勢を正すとリュートの目をみて真剣な表情をして告げた。


 「それに私はリュート殿を信じております。行く当てもない私を救ってくれました」


 だがリュートは考え込む。そして頭の中で言葉を探しているのか。ゆっくりと諭すように口を開いた。


 「ナターシャ、いいか? 俺を信じるのは構わない。だけど俺の言う言葉を鵜呑みにするな。 リリスもだよ?」


 「リリスも~?」


 「そうだ。尊敬する者や上の立場にいるもの。そういう者だって間違えるし失敗もする。だから考える事を止めては駄目だ。騎士の礼節にしてもそうだ。騎士とはこう考えるもの、ではなく。最後に信じるのは自分の中から出る言葉にしろ。いいな」


 ナターシャは何故リュートがそんな事を言うのか分からなかった。

 ただその言葉を告げるリュートは少し寂しげに笑った気がする。

 大事な事なのだろうか。告げるリュートの顔をみてナターシャは心に刻むのだった。


 「分かりました。心に留め置きます」









 そうしてここダイガルに宿泊し襲撃を待つ事となるのだが幸いさほどの時間を待つ必要はなかった。

 リュート達が街へ訪れた翌日山賊達は襲撃を仕掛けたからだ。


 「リュート殿! 街へと山賊が向かっているらしいです」


 「分かってる。ナターシャはここでリリスを見ていてくれ。俺はあいつらの動きを見てくる」


 「分かりました。ご武運を」


 「まぁ大丈夫だろう、ここで食事でもしながら待っていろ」


 そういいながらリュートは宿の部屋。二階の窓へと出るとそのまま屋根まで登っていく。




 (さて、リーダーはどこだろうか)


 指示を出している人間。それを突き止めるべくリュートは一望できる高い場所を選んだのだ。

 幸いまだ敵は固まっている。そこから見ていれば何か分かるかもしれない。


 そう判断したリュートはが遠目で山賊の群れを見ているとおぼろげにだが分かって来る事があった。

 指揮官。

 二人の男女が指示を出している事に気づいた。


 あれか。そうリュートは目星を見つけて観察している。



 指示を出す男はリュートと同じか少し上くらいか、金髪をツンツンと逆立て片目を眼帯で覆っている。ノースリーブにズボンと言った軽装で腰には二本のショートソード。概ね早さに特化した戦いを好むのだろう。

 それに付き従う女はナターシャと同じ歳の頃、女性にしては短めの同じく金髪。こちらも軽快さを好むだろう、ショートパンツにノースリーブと言った出で立ち。


 そしてその男女が二手に分かれ指示を出していると蹂躙が始まる筈……


 が。


 違和感がある。


 街の者が抵抗していないのだ。


 むしろ食料を持って差し出している上に頭を下げている山賊もいる。

 この状況はなんだ?


 そうしてる内に領主の館からは兵士が出てくる。

 それを見た山賊達が食料を持って逃げ帰っている。


 (少なくとも物取りのようには見えなかったが……)


 さて、とリュートは屋根から飛び降りると頭を下げられた街人の方の家へと歩いて行く。未だ家の中に入らず外に出たままの街人はこちらを見て慌てるように家の中に入っていった。


 何度かノックをするも街人が出てくる気配はない。

 

 仕方がない、一度戻るか。そうリュートは思い宿へと戻る。


 「リュート殿! どうでしたか?」


 そうナターシャに尋ねられこれまであったことを話した。


 「どういう事なんでしょうか?」

 話しを聞いたナターシャは分からないと言ったようにう~んとうなっている。それを見たリリスはナターシャの真似をしてう~んと可愛くうなっている。


 「そうだな。俺達は昨日の聞き込みで斡旋所からの山賊討伐依頼で来ていると言う事を知られている」


 「はい。それが?」


 「つまりは討伐に来たものは歓迎されていないと言うことだろう」


 「討伐して欲しくないと?」


 「そういう事になるんだろうな。話しを聞ければいいんだが俺達の立ち位置では無理がある」


 「ではどうしますか?」


 「そうだな、あまり行きたく無かったが領主と話しを危機に行ってみよう」


 「そうですか、分かりましたお供しますね」


 「リリスも~!」


 「あぁみんなで行こうな」


 そう言ってリュートはリリスの頭を撫で三人は領主の館へと向かのだった。




 「それで山賊達の事を聞きたい訳なんですが知っている事を教えて貰えますか?」


 リュートは今少女二人を連れ領主と対峙している。

 基本的にリュートは権力者へとあまり近寄りたくはないと思っている。利用し利用され、そういったものとはあまり関わりたくなかったのだ。


 勿論全ての権力者がそうではないだろうがリリスの面倒を見るのに何かに巻き込まれる、等と行った理由で煩わしさを感じるのが嫌だった。


 そして今目の前にいる領主はどちらかと言えばそういうあまり関わりたくない、にど真ん中をゆくような相手であろう。


 見るからに贅を尽くした服装、指には幾重もの宝石を身につけ傲慢さが顔に出ている、とでも言えるような面相をしている。


 「うむ、山賊討伐の為に来たと言うことだな、討伐の折には褒美を取らせようぞ」


 「褒美の話しは良いので情報を頂ければ幸いですね」


 「む! そうであったな」


 そういってリュートは話しを聞いていく。

 山賊は1月の二度半ばに一度、末に一度の二度襲う。

 山賊は全て虎人で構成されている。

 山賊の長は男、名はダガー。

 その山賊達は3月きほど前より街を襲うようになった。


 「これくらいだな。討伐の件よろしく頼むぞ」


 「その前に、虎人が交渉に来た、等はありませんでしたか?」


 リュートがそう告げると領主はぴくっと眉を寄せる。が、


 「無いな。奴らは突然襲って来たのだ」


 「そうですか、分かりました。では朗報をお待ちください」


 「おお待っているぞ」


 そう行ってリュート達は立ち去った。


 「あまり良い顔をされておりませんね」


 領館から出た後ナターシャはリュートへと心配そうに告げる。


 「そうだな、あまり良い印象じゃなかったからな、あの領主は」


 「そうでしたね。明らかに贅を凝らしていましたし、何よりリュート殿を蔑んでいたように思えます」


 心外です!と行った面持ちでナターシャは告げる。いつの間に彼女はここまでリュートに懐いたのだろうか。怖がらせてしかいないのに。そうリュートは全く関係ない事を考えていた。



 「それで、次はどうなさるのですか?」


 「そうだな、次は山賊の居る場所に行ってみようと思う、お前達は――」


 「ついて行きます」


 ナターシャは断られると思ったのかリュートが言い切る前に言葉を被せてきた。


 「リリスもいくよ~!」


 「だが危険もあるぞ、俺の想像と違えば一戦交えるかもしれん」


 「覚悟の上です!」


 ナターシャはきりっとしたすまし顔でリュートへと告げた。

 

 「リリスはお兄ちゃんといっしょ!」


 リリスはいつも通りだ。


 まぁ、何かあれば護ればいいし、二人ともそれなりに腕は立つ。そうリュートは思い。首を縦に振った。




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