その頃のアイシャ
炎が燃え上がっている。
建物を燃やし激しく燃え上がる炎が辺りを照らし出す。
兵士達が集まり一人の少女を取り囲んでいた
少女は鎌を手に兵士を牽制しながら距離を取る。
その瞳は金色だった。
アイシャは影を纏う事で発見される事なく兵士の後をつけていた。
食事の話しをしていた兵士達が食堂へと向かうと耳に挟んだアイシャは貯蔵庫はその近くかもしれない、そう思い兵士の後をつけた。
敵陣にまっただ中、心細くもある。バクバクと音を立てる心臓の音必死に堪えながらアイシャは尾行する。
食堂へと無事入り込みそのまま兵士達が出て行くのを待っていると必然話し声も耳へと入って来る。無音で影に溶け込み、アイシャは注意深く耳を傾ける。
「そういえば貯蔵庫の備蓄状況はどうなってる?お前担当だったろ?」
「いけね、最近確認して無かったんだよな」
そういって担当であろう兵士は奥の部屋へと入っていく。その様子を見るアイシャは考える。
――あそこが貯蔵庫?
簡単に見つかってくれて嬉しいのだが腑に落ちない。
――簡単過ぎる。
そう思わずに入られない。
だが本当に貯蔵庫かもしれない、思い込みすぎかもしれない。だがどの道アイシャの目的は貯蔵庫にあるのだ。部屋へと入らない理由を思いつかないままアイシャは部屋へと向かう決心をする。
――行くしか無い。
アイシャは人気が無くなるのをただじっと堪えて待つ、部屋に入るとしても兵士達がこの場を離れてから、じっと堪えて待っているとようやく兵士達は外へと出て行く。
貯蔵庫と思われる部屋へと近づき。扉を開け、中の様子を探る。
確かに食料があった。だが3000人もの兵士を食べさせる為の備蓄がこんなものだろうか?そうアイシャが考えていた頃。
――やっぱり。
がちゃがちゃと金属ががこすれる音が背後からした。
罠。
振り返れば目の前には兵士が5人部屋の中へ入って来た。
「ずいぶんな美人が掛かったな」
「ああ、この後が楽しみだな」
全員が卑しい笑いを顔に貼付けながら。剣や槍を持っている。5人の兵士がアイシャを取り囲みその手に持つ武器をこちらへと向けている。
「こっちに配属されて正解だったな。あっちは男だろ?」
何故知っている。
「そうだな、こっちは楽しめそうだ、おや動揺してるぞ?」
「大方そいつががこの女の男じゃねぇの?」
うるさい。
「じゃあそいつの死体を前に犯してやろうぜ」
「いいなそれ」
グレイがお前達なんかに負けるか。
だけどグレイに危険が迫っている事には代わりない。
グレイの為に何ができる?そう考えたアイシャはアイシャはナイフを取り出し。
「おい、何をする気だ!」
貯蔵庫に火を放つのだった。
アイシャは慌てる兵士をに魔法を放つ。
シャドウスナイプ。
兵士の一人を炎に照らされて浮き出た影が針となり兵士を貫く。
驚いている今、この時がアイシャにとっての勝機となる。逃すわけにはいかないだろう。
絶好の機会とアイシャは兵士達の脇を抜け建物の外まで飛び出る。だが辺りには既に兵士が集まっていた。
四方八方から槍を突きつけた兵士が叫んでいる。
アイシャは鎌を手に辺りを牽制する。
やがて背後の食堂から火の手が上がり。それを見た兵士が警鐘を鳴らす。
アイシャへと兵士が集まってくる。
グレイの囮になれただろうか?
炎の放つ光が影を使った移動を許さない。
できる事は一つ。
懐から小瓶を取り出す。
死ぬつもりはない。
グレイの傍に居ると決めたのだから。
アイシャは小瓶を明け中の液体を飲み下す。
グレイの血が喉を通り胃へと流れ落ちる。
――何これ?
臓物が熱い。焼け付くような熱さがアイシャの身を焦がす。
体が熱い。体の中に炎が灯ったように。
「お前、なんだその目は?」
「き……金色?」
兵士達は驚いた顔でアイシャを見ている。
アイシャの瞳が赤では無く金となっていた。
バンパイアである筈の赤、それとは違う変化に兵士達は戸惑いを隠せない。
アイシャの身の内からは自身の物とは思えぬ魔力が荒れ狂う。
――これなら大丈夫。ここから逃げてグレイと合流する。
アイシャが鎌にその魔力を通し。地面を柄が叩いた。
シャドウスナイプ。
シャドウスナイプは対象一人に針を刺す。
だがその荒れ狂う魔力が穿つ先は。
刺し貫く音が響く、
何度も何度も。
何度も何度だ。
アイシャの金色に光る目に無数の巨大な針が映し出される。
聞こえてくるのは兵士達の絶叫。
さながら罪人に与える串刺しを受けているその光景が兵士達を恐れおののかす。
それが何人にもだ。20本の針が兵士達を一人ずつ貫いていく。
アイシャの目の前にいる20人の兵士達が倒れ、そこには活路が見えて来る。
――十分。
アイシャはその隙に駆ける。
兵士を振り切り門へと向かう。
グレイと合流すべく。




