作戦の決行
作戦当日。
辺りは暗闇に塗り固められ。月から降り注ぐ光ががうっすらと人影を映し出す。全身を黒い服で多い周りの黒へと溶け込む姿はおぼろげにしか映らない。内一人は強大な黒い剣を背負っている。艶も無く黒一色に塗装された剣が月の光を受け不気味に映し出されていた。
「グレイ、大丈夫?」
黒ずくめのローブの男――グレイに心配そうに声をかけるのはレティ。目前には3000人もの人が集まる砦がある。高い城壁に囲まれ中は3000人の兵士が詰める。堅牢な城壁が二人の死地そんな所へ一人の男を殺し、兵糧を奪う為に飛び込むのだ。正気の沙汰ではないだろう。
「いいかの、グレイ、アイシャ。攻撃するのはなるべく避けよ。戦えば戦う程見つかる可能性が高くなるのじゃからの それとアイシャとグレイにこれを渡しておく」
レイスは話しながらナイフを差し出す。
「灯火のナイフじゃ、二人とも火の魔法は使えんからの。兵糧を焼く場合に使うのじゃ、魔力を籠めれば自動で僅かだか火を放つ」
「分かった」
アイシャと共に受け取り魔力を通すと小さな火が灯が切っ先から生まれる。アイシャのナイフからも火が灯るのを確認して二人はナイフをしまう。
「作戦ではアイシャの影魔法で兵糧を飲み込み持ち去る、持ち帰った兵糧次第では里の者が別の地へ移動できるからの。それに兵糧に火を放てば目立つ。すぐに兵士が群がってくるじゃろう、危険が増すから火をつけるのは最後の手段じゃ」
「ああ、分かってる」
「大丈夫」
二人は頷き、応える。
「そうだ、アイシャ、これは俺からだ」
そう言ってグレイは小瓶をアイシャに渡す、中には赤く粘りのある液体が入っている。
「これは?」
「俺の血だ、いざと言う時の為に使え、逃げる為に使うんだぞ?」
「分かった」
「グレイ様……アイシャ様……ご健闘をお祈りします」
セレスの表情は冴えない。心配が晴れないのだろう。
「セレス……あぁ、大丈夫だ」
「私も平気」
グレイが砦へと歩き始めるとアイシャも後を着いてくる。
セレスは二人の背中を目で追いながらグレイの温もりを思い出していた。
「でかい……な」
「うん」
二人は城壁の前にいる。アイシャの影魔法で影を纏い、遠見から人影を消す事ができる。アイシャの魔法は色々と便利だな、と緊張感無くグレイは思う。
魔力探知の魔法で人の反応を探るが反応はない。時間が立てば回ってくるかもしれないが。
「この上部今人が居ないようだな。俺は重力の魔法で超えられる。アイシャは?」
「影の魔法で視界の範囲なら飛べる。お父様が使ってたやつ」
本当に便利な魔法だとグレイは改めて思う。アイシャもこの一年で成長したのだろう。当時はまだ難しくて使えない、と話していた。
「あ!」
「どうした?」
「魔力を温存したいからグレイ抱っこ」
「は?」
「抱っこ!」
二度言われた。
アイシャも緊張感のかけらもない。だがこれから先は別行動。失敗は死に直結する可能性が高い。少しの甘え位は良いだろうとアイシャを抱きかかえる。
重力操作重さが無くなるとグレイはゆっくりと地を蹴る。
蹴った力そのままに一定の速度を保ち城壁の上まで飛ぶ。
音も無く着地するとアイシャが驚いた顔をしている。
重力が無くなった状態を初めて体感したのだろう。
「世界はふわふわだった」
取り乱していた。
だがグレイが行くぞ。と低い声で告げるとアイシャの表情も引き締まる。二手に別れ、死地へと足を踏み入れる。




