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歩みゆくは魔王か英雄か  作者: mebius
新たな生活
15/75

魔物討伐

 いびきが部屋の中でひびく中頭をもたげる。

 辺りには酒瓶が転がり静寂が支配している。


 いつの間にか壁を背に眠って居たらしい。

 膝にはレティの頭が乗っかっている。

 夢でも見ているのだろう、時折頬がだらしなく緩みむにゃむにゃと何かを呟いている。


 レティの頭を撫でる。


 「ふにゃ~」


 気持ち良さそうだ。


 起きるまではこのままだなとグレイは昨日の事を考える。


 乱痴気騒ぎと行ったところだったが初めて体験したグレイには好ましく映った。

 少々根暗に思われやすいがああいった騒ぎを眺めている分には好きらしい。


 またやりたいものだ。そう考えていると。レイスが歩いてくる。


 「おきたか、丁度良い。魔物が移動を開始したらしい」


 言葉を聞いて頭を切り換え気合いを入れる。


 「来たか。レティ起きろ」


 レティの頭を抱き起こして言うとレティが瞼を開く。


 「ふにゃ~?」


 「魔物がこっちに向かって来たらしい。顔を洗っておいで」


 「あい」


 レティはこくんと頷くと目を擦りながら水場まで歩いて行く。


 「どれ位かかるもの何だろうか?」


 「斥候が言うにはおよそ後三時間程か。村の外で編隊して迎え伐つそうじゃ」


 「出立は?」


 「集まり次第じゃの、一時間以内に集まれば良いがの」


 顔を洗ってしゃっきりした面持ちで戻ってきたレティを連れて三人で村の外まで歩いて行くと冒険者の集団が見えてきた。


 「よぅ!」


 と声を上げるのは昨日話した大柄の男――ドルジだ。何でも指揮者をこなすと聞いている。


 「じいさんと嬢ちゃんは最初前にでて。兄ちゃんの方はその後ろだ」


 「レティ達が前でいいのか?」


 グレイはレティの事を最優先で考える。危険が増すのなら賛成できない。


 「レティは魔法専門でじいさんはその護衛だろう、それなら敵が範囲に入った瞬間範囲魔法をぶっ放して貰う。魔法を放ち終わった後中と前を入れ替えて抗戦に入る」


 「兄ちゃんは大型が現れたらそっちに行ってくれ。昨日の動きに馬鹿でかい剣を軽く扱ってたんだ、問題ないだろう。大型を相手取れるメンツは少ないから貴重なんだ。兄ちゃんは前線で戦いつつ、大型が現れればそっちを優先してくれ。俺や他の大型を対応するものは現れ次第向かう」


 「分かった」


 「それじゃあ全員集まったからな。これから村を離れて魔物がいる方へ向かうぞ」


 「ここで迎撃じゃないのか。村へ被害が出るリスクを減らす為か?」


 「そうだ、魔物は俺達を餌だと向かって来るからな、村の近くなら村人を襲うかもしれない」


 「分かった」


 村を離れ集団で歩いて行く。これから魔物の討伐だというのに皆緊張した様子はない。冒険者とは剛毅な者達なのだなと考えながら辺りを見渡す。


 「そら、見えて来たぞ。 戦闘態勢用意!」


 広がった草原に魔物達の一団が遠くに見える。村の周りは何もないのだから仕方がないのだろうが横に広がれると言うのは嫌な物だ。


 先頭の魔法隊が杖へと魔力を装填している。雑魚は範囲魔法で一気に撲殺する気だろう。レティとレイスも真剣な顔で魔力を装填させて言っている。グレイもグラビトンハンマーを放つ為左手に魔力を装填させる。


 「放て!」


 ドルジが叫ぶと魔法が乱れ舞う。おおよそ干渉しない位置を取り決めていたのだろう。

 火の球が舞い風が切り裂き、氷の槍が飛び交い、土の針が飛び出す。


 魔物の集団の中で素早さに定評があるハウンドドッグ達が次々と打ち倒されていく、その後方から来るゴブリン達よりも素早さのあるハウンドドッグの方が厄介な為先に撲滅して起きたい所だ。


 その背後から上空へ飛び上がる影が三つ。

 

 グリフォン。

 鷲の上半身に獅子をしたその体軀から繰り出される空からの強襲は人間などものの数ではないだろう。


 だがそれは飛んでいれば、の話し。

 先頭へと飛び出たグレイが宙を飛ぶグリフォン達へと手を向け魔法を放つ。


 グラビトンハンマー


 幸い三匹が範囲内に収まっていた為三匹を対象にした。

 何かを押しつぶすような音が響き、重力から解放されていた筈のグリフォン達へ重くのし掛かるとグリフォン達は呻き声を上げながら地へと落とされる。


 また空を飛ばれれば厄介だ。魔法の効果が切れ飛び立たれる前に始末しようと一匹に狙いを定め。グレイは地を蹴る。大剣に雷を纏わせながら走り魔法の効果が消えるタイミングを狙ってグリフォン目がけ飛び上がる。


 魔法が切れ重みが消えたグリフォンは四肢を踏ん張り再び飛ぼうとするが既に遅い。背中に着地したグレイはそのまま左右へと大剣でもって切り払い翼を切り落とす。空中で巨体を支える為の大きな翼だが大剣であれば一息で済む話しだった。

 そのまま横薙ぎになぎ払いながら振り向く。大型の魔物であるグリフォンの首ではあるがプロミネンスの刃渡りがあれば十分一薙ぎできる。横薙ぎの一閃はグリフォンの首へと吸い込まれ…………その首を落とす。


 次だ。


 他のグリフォン達を見ると一匹はドルジが、一匹はレイスが背中に張り付いている。レイスは細剣に水を纏わせ極薄に回転させるようにして生み出した刃を剣に纏わせその伸ばした刃渡りで翼を切り取っている。


 レイスの強さはよく知っている。一人でもグリフォンを倒せるだろう。


 護衛のレイスが前に出ている。


 レティはどこだ?


 倒したグリフォンの上でぐるりと見渡すとレティは後方から単体魔法である風の刃をゴブリン達へ放っている。ゴブリン達を相手どる冒険者達も危なげがない。この大勢であればレティに護衛は必要ないだろう。



 グレイとレイスの戦い振りを見て取った大型討伐組はドルジへと加勢しだす。ドルジ達も羽を攻撃し、飛べないようにしつつ攻勢を加えている。



 大勢としては安心できる。そのまま未だ待機している。魔物を見る。キマイラが二匹。攻撃には加わらず守るようにして立ちふさがっている。残る大型、キマイラを護衛としているのだろう。間から見えるのは……フードを被った―――


 人?


 考えるのは後だとキマイラの方へと向かっていく。レイスもグリフォンを倒したようでキマイラの方へと走りだしている。


 レイスと二人キマイラの前に出る。瞬間悪寒がグレイを襲う。振り返るとグレイの影が蠢いている。咄嗟に左半身になり服に魔力を通し防御力を上げ大剣を前に突き刺すと影から黒い針のようなものが飛び出しグレイに襲いかかった。



 大剣から火花が飛び散る。

 なんとか事なきを得たが厄介だ。影から突き出ると言う事は回避は不可能。敵の魔法の発動の度に防御しなければならない。


 レイスには発動して居なかったようなので複数を対象にはできないのだろう。


 「ほう、防いだか?」


 男の声だ。


 「だがキマイラと同時では無理だろう」


 そういって男は手を上げる。




 キマイラが唸りを上げ…………。



 


 グレイへと襲いかかる。


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