レイスの持ってきた依頼
家へと帰ってきたグレイ達はレイスに話しがあると呼び止められる。
仕事に関しての話しだった。
生きていくのにお金はいる。そこでレイスは昔のツテを使い仕事を請けてくるのだが危険なものが多い。
魔物の討伐や危険な場所への探索が主に請けてくる仕事だ。
人を殺すような仕事の依頼も中にはあったレイスはこれ以上グレイに人を殺めさせたくはないと請けては来ない。
グレイに長剣ではなく大剣を用意したのもこの辺りに原因がある。人相手なら大剣など過ぎた得物かもしれないが大型の魔物などには通常の剣ではいささか威力に不安がある。
魔物によってはただ通常の剣の攻撃なら針を刺す程度のものでしかないがあの大剣ならかなり大型の魔物相手でも十分な破壊力を生むだろう。
「内容は?」
「群れを作った魔物の討伐じゃがな、少々おかしな点がある、通常では群れを作らないような魔物が群れておる。しかも同種と言うわけでもなくバラバラなのにまとまって村を襲う。何度か討伐依頼を出したそうだが失敗したそうじゃ」
「知能のある魔物が他の魔物を束ねているか?又は魔法か何かで操られている?」
「妥当な線じゃの。情報は少ないが場合によっては魔物が連携を取ってくる事も考えねばなるまい」
グレイは首肯して聞く
「出発は今からか?」
「明日の朝じゃな、大丈夫じゃとは思うが夜の移動よりも明るい時が良いじゃろう」
「学園は良いのか?休む事になるが」
「問題ないの、依頼による休みをあの学園は認めておるからの、既に連絡はしておいた」
「私も行く!」
普段レティは留守番が多いが最近は魔法の扱いも覚えて後方支援ができるようになっている。
「はい、そう思いレティシア様もと言うことで話しておきましたからの。レティシア様も身を守る術を身につけておる。今後は依頼に一緒に行って貰うつもりです」
「なっ!」
渋るのはグレイだ。
奴隷島の頃からいつも自分に甘えて来るレティを危険な目には遭わせたくないといつも留守番をさせていた。
待っているのが嫌だったレティは一緒に行けるようになるためこの一年必死に魔法を覚えたのだがグレイとしては賛成できない。
自分に甘えて来る姿しか知らないのだから。
「グレイよ、レティシア様の身を案じるてくれるのは嬉しいがの、何も経験しないでこのまま大人になるより色々と経験する方が良い。心配であればわしやお主が盾になれば良いのじゃからの」
歳を取ったレイスならではだろう。レティを何もできない大人にはしたくないと言う想いが伝わってくる。
「分かった。レイスがそういうのならそうなんだろう」
グレイはレイスを全面的に信頼している。レイスが居なければ未だにグレイは奴隷島で奴隷をしていたであろうから今の自分があるのはレイスのおかげなのだから。
「うむ、それでは用意して来なさい、レティシア様にもこの日の為にも用意していた服がありますからの」
「やった! これでグレイについて行けるよ!」
レティははしゃぐ。魔物討伐は面白い物でもないのにとグレイは一人ため息をつく。
早朝、準備をして集まる。
グレイは斥候役を行う事もある為、黒尽くめの肩が出た戦闘服に軽量金属で覆ったブーツ、両手に薄手の手袋。左肩に黒塗りのショルダープレートとそこから厚手の魔力繊維編み込んだ袖が伸びている。金属の抵抗で動きを阻害されるのを嫌う為、剣を振る際全面に出やすい左半身をを補強するに止めている。背負った銀色輝くプロミネンスも目立たぬ用黒塗りが施されている。服自体も魔力で強度を上げられるものだ。
レイスは黒を基調とした執事服、戦闘用らしいが普段との違いが分からない。それに腰に細剣を帯剣している。歳おいて腕力の低下したレイスは軽めの細剣を好む。魔力を通す事で強度を上げる事ができる為、滅多な事では折れない。レイス曰く戦う執事と言うのがポイントらしい、何も戦闘服まで執事仕立てにしなくて良いと思うのだが強度があるなら特に言う必要はないだろう。
レティも黒を基調としたドレスに杖だ。フリフリで可愛らしいがこれはレイスの趣味だろうか。黒いドレスに色白の肌と銀髪がよく似合っている、戦闘服に何を求めている?と思うが魔力を通しやすくした素材のソックスがある為魔力次第では普通の防具よりも防御に優れているらしい。
「それでは行こうかの。魔物が群れて居る所はここから一日行ったノルン村がもっとも近い。ここから馬車で一日の距離じゃな。馬車は外に用意して当分の食料も積んである」
そうレイスが出発の先導を取り馬車へと乗り込み出発する。
「御者は俺がやる。じいさんは中でゆっくりしてろ」
「甘えさせて貰おうかの」
気遣いができるようになってきた事をレイスは喜ぶ。
「私はグレイの隣にいる!」
そうして馬車を走らせる。
移動の間は暇だ。レティと話す事にする。
「楽しそうだな」
「勿論! だってね! やっとグレイについて行けるんだよ!」
「そうか」
苦笑しつつもレティの純粋な好意はいつも嬉しい。日だまりのような笑顔が心を温かくしてくれる。この感情は嫌いではない。レティとレイスがいるからグレイは笑えるのだろう。
とりとめもなく会話しているとクレイの魔法による索敵に引っかかる反応が一つ、大きさから人だと分かる。男のようだ。
こちらへ気づいた男がこちらへ駆けてくる。馬車を止め。男が近づくのを待つ。
「じいさん、人だ」
何かの罠か?そう思った後グレイは頭を振って考えを消す。
グレイは人を信じない傾向が強い。
状況次第ではあるが仕事のような警戒する必要がある場合では疑いの目を捨てる事ができない。客観的な判断がしにくいと自分で分かっている為こういった場合レイスに頼む事にしている。
――いつかは乗り越えたいものだがな。
二人と一緒に居れば徐々にでも改善されていくだろう。昔と比べて変わっていっている自分を自覚している。
「うむ、ノルン村の者かもしれんな。話しを聞いてみよう」
レイスが馬車から降り、男と話す。
「わしらに何かようかの?」
「貴方達はノルン村へと向かうのですか?」
「そうじゃ、依頼を受け魔物の討伐へ行く途中じゃ」
「子供と老人で……でですか?私はノルン村の物ですが集まった魔物は凶悪な魔物もいます。言っては申し訳ないが……止めておいた方が……」
「心配は嬉しいがの、大丈夫じゃ、これでも腕に覚えはあるしの、無理そうじゃったら引くからお前さんは気にせずともええ」
「そうですか……あっ、いえ、レイグラントからですよね?」
「そうじゃ。それがどうかしたのかの?」
「レイグラントのギルドから依頼が出たと言うことでしょうか?」
「いや、わしらは別口から依頼を受けておる。そちらにはまだ依頼は無いと思うぞ」
「そうですか、私はレイグラントのギルドまで依頼を出しに行く所だったんです」
「なるほどのお。村では対処仕切れぬか」
「はい、案内できず済みませんが私はこれからレイグラントへ向かいます。それでは」
そう言って男はレイグラントへと歩いて行く。
「思ったよりも状況は良くないようじゃの」
「そうだな。なるべく急ごう」
「グレイがいるから大丈夫!」
レティの言に気恥ずかしさを覚えつつグレイは馬を走らせノルン村を目指す。




