青年は武器を得る
「これは?」
グレイは目の前に置かれた巨大な剣を見下ろしていた。
夕食を終えた三人が雑談しているとレイスが渡したい物があると部屋へと戻ってきた時やたら大きな包みを持って戻ってきたのだ。
渡された包み解いていくと中にあったのは一本の杖と巨大な剣だった。
「杖はレティシアお嬢様へ、大剣はグレイにじゃ」
レティとグレイは目を丸くしてそれぞれの獲物を見る。
どちらも既製品ではないのだろう。杖の先端には魔力を増幅させる大きな魔石が、大剣にはガード部分に魔力伝達をよくする為の魔石がいくつも取り付けられている。
大剣を手に取り剣を握る。
ここまで馴染む感触は初めてだろう、重さも丁度良い。
レティシアは初めて自分に専用の武器が与えられて喜んでいる。グレイが使っていた剣は奴隷島で監視員から奪った剣だけだったが、既にその剣も魔力の通し過ぎで溶けて失ってしまっていた。
「嬉しいが、しかし装飾過多じゃないか? 目立ち過ぎると思うんだけど……」
「お前さんの扱う魔力量を考えればそうなるんじゃよ。何どのみちお前さんの存在は目立つ、その剣なら身の丈に合うだろうの。剣の方をプロミネンス。杖の方はリュケイオンと言う。大事にしてくれると嬉しいの」
照れ隠しで不満を述べてしまったが素直に嬉しい。じいさんの笑顔を見てると使わざるは得まい。それはそうとレティの笑顔だけじゃなくてじいさんの笑顔にも勝てそうにないのは何でだ。一生この二人に勝てる気がしない……精神的に……
胸中に暖かいものを感じ照れ隠しか、顔を背けながらも言うべき言葉を告げた。
「分かった、ありがとうじいさん。大事に使うよ」
「うん! 大事にするねレイス!」
レティの顔にも満面の笑みが広がっている。
丁度通り魔の話しを聞いたことだ自衛の武器があるのは好ましいだろう。
魔法だけでもなんとかなる可能性もあるが魔法は魔力装填に時間がかかる。装填量によって扱える魔法の規模が変わるがとっさの装填でグレイが使えるのはライオットくらいであり、直接体に触れなければいけない。近接戦闘用の武器は必要だ。
レティは魔法は得意だが近接戦闘はからっきし。魔力を増幅する杖は合っているだろう。いざとなればグレイが体を張ればいいのだから。
「じいさん、それでバンパイアと言うのは知っているか?」
グレイは通り魔事件の事を話した。生活圏内での話しなのだから知っておいて損はない。
「そうじゃの、亜人の一種で人と見た目は変わらんが血を吸うことで精気を得て力を発揮する種族じゃ、血を吸ったバンパイアは目が赤色に変化し力と魔力が桁違いに強くなるの。影や幻覚を操る魔法が得意で力を発揮しやすい夜を好む者が多いの、強力な分個体数は少ないがの」
「もしその話しが本当なら気をつける必要がるの。バンパイアは強い。わしも血を吸われんようにしんとの」
「じいさんの血なんぞ吸いたいと思うかどうか怪しいがな」
そういってグレイは笑う。
こうして冗談も言えるようになったグレイにレイスは暖かいものを感じる。
「しらんのか? じじぃにはなったがまだまだ精気は衰えておらんぞ。近隣のマダムたちの黄色い声援をしらんみたいじゃの」
「レイスは変態」
レティは汚物を見るような目でレイスを見る。
「な……」
「間違いないな」
そうして三人は笑顔で夜を過ごす。




