青年の為に
グレイ達が学園へと行っている頃、レイスは鍛冶屋へと赴いていた。
鍛冶屋の扉を開け中に入ると店主が声をかけて来る。
「よぉレイス、頼んでた物ができてるぞ」
この鍛冶屋はアルトリーゼ国随一の鍛冶屋だ。偏屈なドワーフが主人と言うこともあり、知る人ぞ知るという形に収まっては居るが……。
「ありがたいのぉ、これで孫に入学祝いを渡せるわい」
弾んだ声で言うレイスは本当に嬉しそうだ。
「しかしこんな馬鹿でかい剣本当に使えるのか? こんなに重い剣は怪力自慢でも扱えないぞ、竜さえぶった切れそうだ。実在すればだがな」
「大丈夫じゃよ。あやつの腕力であれば問題は無いし、重さを操る魔法もあるでな」
レイスはでき上がった剣を見ながら応える。全長170cm程はあろうかと言う幅広で銀色の剣は試しに持ち上げて見るが40~50キロ程はあろうか。重厚な存在感が剣から放たれている。
グレイなら問題なさそうだと思える。グレイの身体能力は成長と共に人の範疇を超えている。今のグレイであれば片手で振るえるだろう。
試しに魔力を通してみたが魔力の通りもいい。水の魔力を受け大剣の刃渡りに青く力強い光が灯る。魔剣としては最高のものだろう。
「こんな大層な剣持たせて何をさせようってんだ? まぁ金さえ貰えれば文句はないがな」
「何かをさせるつもりはない、いざとなった時の為じゃ、何かあった時信頼できる武器が合った方がいいからの」
グレイの膂力では普通の武器ではついていけない。速度の乗った剣はなまくらでも十分な切れ味を生むが切る物の硬度が拮抗すれば一撃で折れてしまうだろう。
「それでこんな馬鹿みたいな武器をか、過保護なじいちゃんだな」
「そうじゃのよく分かっておるよ」
そう告げてレイスは笑う。
できるだけ平温な生活を送っては欲しいが身にかかる火の粉は振り払う必要がある。
その時に信頼できる武器があるかないかでは雲泥の差があるだろう。
三人での生活が彼の目を穏やかに変えていっているが幼い頃の経験はなかなか抜けないものだ。
武器が無いばかりに大事にしているものを守れず、となれば暗い感情が表にでるかもしれない。
身の内にくすぶる黒い感情を糧生きるような大人にはなって欲しくないのだ。
本当の孫のように思っているグレイには愛した妻を娶り、その力を危険視される事無く平穏に暮らしてほしい。それがレイスの想いだった。
「それでこの剣の名前はどうする?」
「……プロミネンスと言うのはどうじゃ?」
「紅炎か、破壊力がありそうだな」
怒りの体現とも取れるが怒りはすべてこの大剣が背負ってくれればいい。そう願ってレイスは剣に名を与え持ち帰るのだった。




