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精霊奇譚  作者: のっこ
~ 1、桜流しの章 ~
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【08】-4


 どうしてと、問う心は声にならず。

 どうかと、乞う気力すら奪われて。


 『私』が、最後の最後に知ったのは。


 涙の向こう、広がる空が、眩しいほど輝いていたこと。

 浮かぶ雲が、見守るように、優しくそこにあったこと。

 飛ぶ鳥が、自由を、雄雄しく飛んでいたこと。

 咲く花が、儚さに、凛と咲き誇っていたこと。


 その輝きにも、優しさにも、雄雄しさにも、凛とした誇りにも、気づかずにいた『私』。

 それでも、変わることなく続いてきた世界。

 変わることなく続いていく世界。

 望まず、受け入れ、許すことだけを続けていく世界。

 その、すべてが。

 こんなにも美しく、愛情に満ちていたこと。


 この、去りがたいほど美しい世界で、『私』は、何をしただろう。

 この身に与えられていた愛情にも、気づきもせずに。

 世界は『私』を生かすことを許してくれていたのに、その愛に包まれるだけで、『私』は何も応えられなかった。

 何も、応えようと、しなかった。


 それでも世界は消えゆく『私』を、変わらずに美しく包んでくれていて。

 その思いに何も応えなかった『私』を、そのすべてで許してくれていて。

 弱虫で、怠惰で、ずるくて、世界に甘えるだけだった『私』が、歯痒いほど悔しくて。

 『私』を生かすことが出来なかった『私』が、このまま何もなかったように、すべて消して『 』に戻ることが、どうしても。

 どうしても。


 許せなかった。




 けれど今、澄んで、初めて分かった。


 その思いさえ、結局は世界への甘えだったこと。

 そんな『私』を世界は変わらず、許してくれていたこと。


 ごめんね。

 謝っても、謝りきれないけれど。


 ただ、応えたかっただけなの。愛してくれたすべてに。

 生きて、『私』を生かすことを、許してくれた世界のすべて、その思いに。

 少しでも、応えたかったの。


 それだけ、だったの。



 ごめんね。



 ごめんね。







 ありがとう。

 あなたのおかげで、少しだけ、『私』は『私』を生かすことが出来たから。

 少しだけでも、世界の思いに応えることが出来た。

 澄むことが、出来た。

 『私』は消えて、『 』に戻る。


 本当に、ありがとう。



 ひとつだけ、最後になる『私』から、あなたに。

 保証は、ないけれど。

 あなた達のおかげで、叶うかもしれないから。


 どうか、『 』を――――――。







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